中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 固定資産損失 – 資産損失の申告(3)

『企業資産損失所得税税前控除管理弁法』(国家税務公告2011年第25号 以下、「管理弁法」といいます。)に規定される損失のうち、今回は固定資産損失について紹介します。

1. 固定資産の企業所得税法上の取扱い

固定資産とは、企業が製品の生産、労務の提供、リース或いは経営管理のために保有し、使用期間が12 ヵ月を超える非貨幣性資産を指し、建物、構築物、機器、機械、運輸工具およびその他の生産経営活動に関連する設備、器具、工具等を含むと定義され、固定資産の原価(注1)は減価償却を通じ、費用として税前控除(注2)することができます。

(注1) 税額計算上の基礎となる原価を指し、固定資産については原則として取得原価です。なお、企業の資産保有期間中に資産価値の増減が生じて資産の帳簿価格が変更されたとしても、税法上その増減が認められなかった場合には、その帳簿価格と課税基礎となる原価は一致しないものとなります。
(注2) 「税前控除」とは企業所得税の課税所得計算において費用・損失として控除することをいい、日本の法人税法における「損金算入」に相当します。

2. 固定資産損失の税前控除

資産損失管理弁法に規定される企業の固定資産に生じた損失についても税前控除が可能です。固定資産損失については、以下の区分に従いそれぞれ証拠資料に基づき損失を認識し、その金額を確定します。固定資産の減価償却終了後に行う正常な廃棄処分により発生した損失については簡易な「リスト申告」(注3)、これ以外は個別に関連資料を添付して行う「専項申告」が必要です。

  1. 実地棚卸による棚卸差損または紛失損失
    損失額=固定資産の帳簿価額(注4)-責任者の賠償額
    証拠資料: 企業内部の責任認定および責任者の賠償状況説明と内部決裁書類、実地棚卸表、固定資産の課税基礎の確定根拠、差損・紛失の状況説明、損失金額が大きい(注5)場合には、専門技術鑑定報告または法定資格を有する仲介機構が発行する専項報告など。
  2. 廃棄・毀損または変質による損失
    損失額=固定資産の帳簿価額-残存価額-責任者の賠償額
    証拠資料: 固定資産の課税基礎原価の確定根拠、企業内部の関連責任者の認定および照合資料、企業内部の関連部門が発行する鑑定資料、責任者の賠償に関わる場合は賠償すべき状況説明、損失金額が比較的大きいまたは自然災害等の不可抗力による場合は専門技術鑑定意見または法定資格を有する仲介機構が発行する専項報告。
  3. 盗難損失
    損失額=固定資産の帳簿価額-(保険賠償額+責任者の賠償額)
    証拠資料: 固定資産の課税基礎原価の確定根拠、公安機関への通報記録、責任者および保険会社の賠償に関わる場合は賠償すべき状況説明など。

(注3) 企業所得税の確定申告時に会計科目ごとに分類して一括記載した統括リストを提出する方法。
(注4) 原価から減価償却累計額を控除した純額(中国語では「チョウ面浄値」:チョウは貝ヘンに長)。なお、固定資産の減価償却計算は、会計上は企業がその使用可能年数を見積り、償却方法を選択して計算するものとされていますが、企業所得税法上は固定資産の区分ごとに償却の最短年数が設定され、かつ償却方法は定額法に限定されているため、会計上の帳簿価額と課税基礎額となる金額に差額が生じる要因となります。
(注5) 企業の同類資産の原価の10%以上、またはその損失によって減少する当年度の課税所得額もしくは増加する欠損額が10%以上である場合に比較的大きいと判断します(以下本稿において同じ)。

3. 固定資産損失にかかる仕入増値税額の取扱い

固定資産に企業の管理の不備による非正常損失が発生した場合は、その固定資産の取得時に生じた仕入増値税を売上増値税から控除することができないとされています。よって、非正常損失を計上した場合には、その控除できない仕入増値税相当額を費用へ振替えなければなりません。

以上