中国 M&A

[M&Aは今] (17)M&Aによる対中投資-審査認可手続き

前回は中国のM&Aによる対中投資に関して、各M&Aの種類の定義について紹介しました。続いて、 それぞれの手続き手順を(1)外国企業(中国に設立された外資投資性企業を含む)が行うM&A  (2)中国に設立された外商投資企業が行う M&A に分けて紹介していきます。

(1) 外国企業が行うM&A

外国企業が行う、中国の国内に設立された各種の企業に対するM&Aについて以下順番に、①株式を取得する場合 ②新たに外商投資企業を設立し資産を合併買収する場合 ③対象企業が外商投資企業である場合 について説明します。また、2006年の関連規定で新たに導入された④外国投資者が株式権を以って国内企業の株式を買い取る場合についても説明します。

①外国企業が中国資本企業の株式権を合併買収

合併買収の同意

株式を取得する場合、合併買収後に成立した企業が、被合併買収中国企業の債権及び債務を継承するとされ、債権債務の処置に関しては審査認可機関へ報告しなければなりません。
譲渡価格については、被合併買収中国企業が国営企業でなければ、資産評価機関による資産評価は必ずしも必要ではありませんが、地域ごとに要求が異なるため確認が必要です。評価結果を明らかに下回る譲渡や、形を変えた国外への資本移転等は禁止されています。

合併買収当事者はお互いの関連関係について説明の義務があり、双方とも同一の実質支配者に属する場合はその実質支配者について審査認可機関へ公表し、譲渡価格の合理性を説明しなければなりません。

合併買収の合意文書には、次の内容を含めることとされています。

  • 合意各社の状況:名称(氏名)、住所、法定代表人氏名と職務・国籍
  • 買収する株式権或いは増資を引き受ける数量及び価額
  • 合意の履行期限と履行方式
  • 各社の権利と義務
  • 合意署名の日時・場所
認可申請

外国投資者が中国資本企業の株式の25%以上を取得することにより、中国資本企業は外商投資企業となる認可が必要で、その投資総額・企業の類型と業種に応じて市・省・国と異なるレベルの商務部門にて審査認可が行われます。申請手続き資料は以下の通りです。

  • 被合併買収企業の株主が外国投資者の株式合併買収に一致同意した決議(被合併買収企業が株式有限公司である場合、株主大会決議)
  • 被合併買収企業を外商投資企業に変更設立する申請書
  • 新定款、新合弁契約
  • 株式権買収或いは増資引き受けに関する協議書
  • 被合併買収国内企業の前年度の会計報告書
  • 投資者の身分証明書或いは登記証明及び資本信用証明文書(公証を要する)
  • 被合併買収企業が行っている投資の状況説明
  • 被合併買収企業及びその投資先企業の営業許可証
  • 被合併買収企業従業員の配置計画
  • 被合併買収企業の債権債務の処置、合併買収取引価額の根拠、合併買収の各社に関連関係が

存在するか否か について、審査認可機関が要求する資料

  • 合併買収後に成立する外商投資企業の経営範囲、規模、土地使用権の取得など他の政府機関の許認可が必要な場合はそれらの許認可文書を一括して送付すること。

譲渡対価の支払いについて、新たに設立された外商投資企業が国内企業を合併買収する場合には、新会社の設立3ヶ月以内に全額(延長申請により6ヶ月以内に60%以上、1年以内に全額)の払い込み、新会社の外資比率が25%以下となる場合には3ヶ月以内に全額の資本金、或いは6ヶ月以内に6ヶ月以内に全額の現物出資が必要です。増資引き受けの場合は認可後変更登記の際に20%の新登録資本の払い込みが義務づけられています。なお、人民元を支払う場合には、外貨管理局の認可が必要です。
(本文以上)