ベトナム ベトナムビジネス・会計税務入門
[ベトナムBiz] ベトナム税制その3
ベトナムでは最近、個人所得税について税務局の目が厳しくなってきています。税務上居住者となる場合は、ベトナムでの所得だけではなく全世界所得申告が求められます。誤った申告をしている場合、後々やっかいな事になるケースもありますので申告納付方法を理解し、正しく手続することが必要です。
1. 納税義務者
税法上、ベトナムの居住者と非居住者とで個人所得税の課税対象、税率は異なります。まず、この居住者・非居住者の区別が重要となります。
以下の1つが該当した場合、居住者と定義づけられます。
- ベトナムにおける滞在期間が年間183日以上
- ベトナムで90日以上のアパートやホテル等の賃貸契約をする場合
- 非居住者は、ベトナム源泉所得に対し、一律20%の個人所得税が課税されます。
- 一方、居住者は、ベトナム国内及び国外で得た全ての所得である全世界所得が課税対象になります。
2. 課税対象所得
課税対象となる所得は、給与・賞与・非課税以外の手当等の給与所得、個人による製品や商品の販売・賃貸等から得る事業所得、有価証券の譲渡益、不動産譲渡益、宝くじ等の賞金、ロイヤリティ、相続、譲与などがあります。
また、会社からの住宅手当については、「住宅手当実額」と「住宅手当を除く課税所得額の15%」を比較し、その金額の低い方を住宅手当として課税所得に加えます。
例えば、住宅手当を除く課税所得額が100,000,000ドン、住宅手当が20,000,000ドンの場合、100,000,000ドン×15%=15,000,000ドン <20,000,000ドンなので、住宅手当を15,000,000ドンとして課税所得に加えます。
3. 非課税対象所得
非課税の対象となる所得は、年金、近親者間の不動産譲渡益、居住用不動産の譲渡益等があります。また、次の外国人駐在員に対する所得は、労働契約書に明記することで非課税対象所得になります。
- 一時帰国の往復航空券(年1回)
- 赴任のための引越し手当
- 子供の高校までの教育費
4. 税率
非居住者の給与所得の個人所得税の税率は、前述したとおり源泉所得に対し一律20%です。
居住者は、給与所得及び事業所得に対し、所得額に応じて5%から35%までの累進課税が適用されます。
それ以外の所得及び非居住者の事業所得については、所得の種類に応じた一律課税が適用されます。
5. 控除制度
基礎控除額は、納税者本人に対して月額400万ドン、扶養控除は、被扶養者一人当り月額160万ドンが認められます。扶養対象となるのは、18歳未満の子供、18歳以上であるが身体に障害を持つ子供、両親(男性60歳以上、女性55歳以上)等です。労働可能な配偶者に対しての控除は認められていません。扶養者はベトナム国内居住か否かを問いませんが、戸籍謄本による証明が必要であり、ベトナム語への翻訳及び公証手続きを要します。
また社会保険や健康保険等の強制保険、寄付も控除対象となります。
6. 申告納税
個人所得税は、月次申告と年次の確定申告が居住者に義務付けられています。
月次申告は、前月分を翌月20日までに申告及び納付手続を行います。年次の確定申告は、年間所得に対し翌年3月末日までに申告手続を行い、納付額に不足がある場合には同じく3月末日までに納付を行います。納付額が超過している場合には、翌月以降の申告及び納付手続きで控除します。
7. 罰則制度
個人所得税の申告、納付が遅延した場合、罰金が課されます。申告が遅れた場合の罰金は表2のとおりです。
また納付が遅れた場合、1日につき納付額の0.05%の罰金が課されます。
脱税の場合は違反の回数やその悪質性によって、税金の1倍から最大3倍の罰金が課されます。
通常は前述したとおり、毎年3月末までに確定申告を行いますが、駐在員が帰任する時、又は会社や駐在事務所を閉鎖する時は、年の途中であっても個人所得税の確定申告手続が必要となります。正しい申告を行っていない場合、確定申告の手続きが終えることができず、代表者の交代手続や会社や駐在員事務所の閉鎖手続が滞ってしまう例が最近見受けられます。税務上居住者となる場合は、ベトナム国内の所得だけでなく、海外での所得を含めた全世界所得の申告を行うようにしましょう。