ベトナム ベトナムビジネス・会計税務入門
[ベトナムBiz] ベトナム税制その2
今回は、前回に引き続き税金の話であり、テーマは付加価値税です。ベトナムでは物品の販売やサービスの提供に対し付加価値税が課されます。日本、あるいは香港ではあまり馴染みのない税目ですので以下詳しく見ていきましょう。
1. 付加価値税とは
付加価値税は英語にするとValue Added Taxで、通常VAT(ブイエーティーあるいはバット)と呼ばれています。日本の消費税のような税金で、担税者は物品の販売やサービスの提供を受ける消費者、納税義務者は販売やサービス提供を行う組織及び個人です。物品の販売、サービスの提供また海外からの輸入に対して課税されます。
2. 税率
付加価値税の基本税率は10%です。しかし政策的な見地から水道、肥料、医療・教育関連設備などの必需品に対しては5%の優遇税率となっています。また、塩、教育・医療サービス、ソフトウェア、印刷出版などに関する業種には付加価値税が免除されています。
3. インボイス
①物品販売やサービスを提供するとき
事業者は、物やサービスの販売時にレッドインボイスを発行しなければなりません。通常、レッドインボイスは税務局から購入しますが、購入の前にまず税務局に対して申請を行います。申請後に税務局員が事業所を訪れ、ライセンスやタックスIDナンバー、顧客との契約関係などを示す書類の確認を求められます。税務局員の調査後、数週間にてレッドインボイスを購入することができます。
なお、2011年1月1日より、税務局から購入していたレッドインボイスを、企業が自社印刷をして使用することが認められます。
工業団地、輸出加工区またハイテクパークに進出している企業、または資本金50億ベトナムドン以上の企業等は自社印刷したレッドインボイスを使用することができます。それ以外の企業は印刷会社に印刷を依頼し、レッドインボイスを使用します。
いずれの場合も、レッドインボイス発行の5営業日前までに、税務局に発行に関する通知とレッドインボイスのサンプルを提出する必要があります。
一方、従業員10名未満の小規模企業などでは従来通り税務局からの購入が認められています。
②物品購入やサービスを受けるとき
事業者は物やサービスの購入時にレッドインボイスを受領する必要があります。このレッドインボイスがない場合、あるいはレッドインボイスの記載事項に不備があった場合、法人所得税の算定上、各費用が損金として認められず、同時に付加価値税納税額を算出する際に仮払いVATとして認められなくなります。レッドインボイスの必須記載事項は表のとおりです。前述したとおり、2011年1月よりレッドインボイスの自社印刷が可能になることから、様々な形式のレッドインボイスが増えることが予想されますので記載事項のチェックが重要になってきます。
原則として、従来は10万ドン以上の購入に際してはレッドインボイスの受領が必要でしたが、2011年1月より20万ドン以上の場合に必要となります。
4. 申告と納税
付加価値税の申告及び納税は翌月20日までに行います。納税義務者である事業者はビジネスライセンス取得後2週間ほどでタックスIDナンバー(税務上の法人番号)が取得できますので、その後、申告・納付手続きを行います。
毎月の仮払いVAT(購入時)と仮受けVAT(販売時)の合計を比較し、仮受けVATが大きい場合はその差額を申告・納税します。
つまり、(仮受けVAT)-(仮払いVAT)= VAT納税額となります。
仮払いVATが大きい場合は翌月の申告に繰り越されます。なお、以下の場合に還付申請が可能です。
- 仮払いVATが3ヶ月連続仮受けVATを越える場合
- 1ヶ月の繰越仮払いVATが2億ベトナムドンを越えた場合
- ライセンス申請をして企業登録が完了したの企業で、VAT登録も済ませているが、正式稼動前で仮受けVATが発生しておらず、かつ投資期間が1年以上の場合(この場合は年度末に還付を受けることができます。)
5. 課税点
付加価値税の納税義務が発生する時点を“課税点”あるいは“納税義務発生時期”といいます。ベトナムの付加価値税制度では、レッドインボイスという証拠書類によって課税関係を明らかにすることになっていますので、このレッドインボイスは、課税点で発行しなければなりません。また、毎月付加価値税を申告する義務がありますので、課税点がいつかということは、その取引の付加価値税をどの月に申告するかという問題につながる重要事項になってきます。
付加価値税の課税点は、次のように規定されています。
- 物品の販売に対する課税点:通常の物品売買の場合、所有権の移転時点
- サービス提供の課税点:一般のサービスの場合、サービスが終了した時点またはレッドインボイスを発行した時点
- 輸入の課税点:一般的な輸入の場合、輸入通関時点
- その他の物品販売・サービスの提供の課税点:
- 電気・水道料:使用量メータの計測が行われた時点
- 不動産取引、インフラ設備の建設、居住用住宅の販売・譲渡・リース取引:
契約書に記載された代金支払日 - 建設および据付工事:検収日