シンガポール 移住関連

東南アジア移住ガイド:日本出国時の税務と移住要件、その他注意点

日本居住者が東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ)に転出するとき、したあとの課税について解説致します。

1. 出国時の税務

国外転出時課税(出国税)

対象者

  • 1億円以上の対象資産保有者
  • 過去10年間で5年超の日本居住歴がある者

対象資産

  • 有価証券(株式・投資信託)
  • 匿名組合出資持分
  • 未決済デリバティブ取引

税率

約20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

納税選択肢

  1. 出国前申告・納税
  2. 納税管理人を通じた出国後申告
  3. 納税猶予制度の利用(最長10年)

2. 相続税の扱い

非居住者となった場合の課税。

  • 基本:日本国内の資産のみ課税対象
  • 例外:以下の場合、全世界の資産が課税対象
    1. 日本国籍を持つ被相続人が10年以内に日本居住
    2. 日本国籍を持つ相続人が対象条件に該当

3.所得税

日本からの出国後(非居住者)の所得課税についての要点。

外国源泉所得

  • 日本では課税されない
  • 居住地国(移住先)の税法で課税

日本国内源泉所得

1. 源泉分離課税(申告不要)

  • 利子・配当:15.315%
  • 給与:20.42%

2. 確定申告が必要

  • 不動産所得:20.42%
  • 事業所得:20.42%

注意点

  • 租税条約がある場合は税率が軽減される可能性
  • 二重課税は租税条約や外国税額控除で調整可能
  • 出国前の税務署への届出と納税管理人の選任検討が必要

実務上は、個別状況により取扱いが異なるため、専門家への相談が推奨されます。

4. 主要国の永住権・長期滞在要件

シンガポール

永住権(PR)

  • 月給8,000SGD以上
  • 2-6年の就労実績
  • 学歴・職歴等の総合評価

マレーシア(MM2H)

55歳以上

  • 定期預金100万MYR
  • 月収40,000MYR以上

55歳未満

  • 要件が1.5倍に増額

タイ

エリートビザ

  • 60万〜200万バーツ
  • 5〜20年滞在可能
  • 所得要件なし

5. その他注意点

年金に関する税務

  • 国民年金の脱退一時金:出国後2年以内に請求可能
  • 海外在住中の年金受給:日本の年金は国内源泉所得として課税
  • 現地年金制度への加入要否の確認

保険関連

  • 生命保険の解約返戻金:国内源泉所得として課税
  • 海外赴任特約の確認
  • 現地保険への加入検討

クレジットカードに海外旅行保険が付帯され、出国するときの航空券を決済すれば、一定期間、ケガによる通院費や損害保険でカバーしてくれる場合があります。

金融資産

  • 国内銀行口座の維持:非居住者口座への切り替え
  • 投資信託:非居住者としての取扱制限
  • クレジットカード:国内発行カードの継続利用の可否

確定申告関連

  • 出国年の準確定申告:出国時までの所得について申告(出国時に申告するか、納税管理人を任命し(諸葛税務署に申請)、出国の年度末を基準日として確定申告を実施(e-taxで申告することも可能)。
  • 納税管理人の選定:国内資産や所得がある場合は必要
  • 青色申告の継続:事業所得がある場合の手続き

その他の重要事項

1. 国外財産調書

  • 出国年の資産状況報告
  • 5,000万円超の資産保有者が対象

2. 不動産関連

  • 賃貸管理会社との契約見直し
  • 固定資産税の支払い方法確認
  • 将来の売却を考慮した税務計画

3. 事業関連

  • 個人事業の廃業手続き
  • 国内取引先との契約見直し
  • 現地での事業開始手続き

4. マイナンバー

  • 海外転出後の取扱い(転出時にカードは一時停止させます)
  • 帰国後の再取得手続

実務上の推奨事項

  • 出国前の税理士相談(必要に応じて)
  • 現地の税務アドバイザー確保
  • 日本と現地の税務書類の保管体制整備
  • 帰国時期の検討(税務上の影響)

(注)本ガイドは、出稿時の情報に基づき、一般的な情報提供を目的としています。具体的なケースについては、税務・法務の専門家にご相談ください。