シンガポール ビザ・就労関連

シンガポール・S PASS(就労ビザ)

シンガポールでの就労ビザには複数の種類がありますが、このうち、検討される代表的なものとして、EPとS Passがあります。

S Passは、中技能外国人向けの労働許可証ともいわれ、高度専門職やマネジメント向けの労働許可証であるEP(Employment Pass)の条件に満たない外国人、一般的には新卒社会人等、一定の学歴のある若い外国人むけの労働許可証といえます。

S Pass保持者を無制限に雇用できるわけではないため、雇用主は、その制限を考慮しながら、採用計画を立てる必要があります。

また、2025年9月からは新たな外国人雇用税率の改訂も予定されているため、注意が必要です。

1. 申請要件

(1) 下記の全てをみたす外国人

  • 一定レベルの学歴(専門学校や短大など)を保有していること
  • 月額基本給が一定額(※1)以上であること
  • 関連した職歴を備えていること

(2) 複数人のシンガポール人等の雇用実績

S PASSホルダーの人数は全従業員数(※2)の10%または15%まで(業種により異なります)(※3)。

(※1)最低給与額の要件があります(下記は、2025年9月以降)

  • 一般業種:
    • 基本月給SGD3,300以上(予定。確定待ち)
    • 45歳以上はSGD4,650以上
  • 金融サービス業:
    • 基本月給SGD3,800以上(予定。確定待ち)
    • 45歳以上はSGD5,650以上

(※2) シンガポール人、永住権保有外国人(PR)、S PASSホルダー、Work Permitホルダーの合計人数

(※3)業種別Quota(雇用枠)

(1) 業種別の外国人労働者総数の上限

  • 建設業:83.3%
  • 加工業:83.3%
  • 造船業:77.8%
  • 製造業:60.0%
  • サービス業:35.0%

(2) S PASSホルダーの雇用上限

  • サービス業:全従業員の10%まで
  • その他の業種(建設、製造、造船、加工):全従業員の15%まで

(3) Quota計算の重要ポイント

  • 現地従業員のカウント方法:
    • 月給SGD1,600以上:1.0人としてカウント
    • 月給SGD800~1,600未満:0.5人としてカウント
  • 直近3ヶ月間の現地従業員平均数を基に計算
  • 毎週土曜日に更新、翌営業日に確認可能

(4) 特記事項

  • 新規申請時は事業内容の申告が必要
  • CPF(中央積立基金)の納付遅延は、雇用枠に影響
  • 中国籍労働者には、別途サブQuota制限あり
    • サービス業:全従業員の8%まで
    • 製造業:全従業員の25%まで

2. 申請手続

MyCareersFuture(MCF)での求人広告掲載と公平な候補者選考(EPと同様)。

申請は、雇用主である会社等(スポンサー)、または、人材紹介業ライセンスを有する業者が行いますが、まずは、雇用主である会社等と合意してから申請することとなります。

申請時S$105、承認後のパス発行手続S$100、合計S$205 を、MOMに支払います。

3. 審査

10営業日程度を要するといわれていますが、長期化(2~3か月)する場合もありますので、ご注意ください。

4. 有効期間

審査を経て当局(MOM)が決定することになります。

  • 初回:最長2年間
  • 更新時:最長3年間

5. 扶養家族の滞在ビザ

月額給与がSGD6,000以上のS PASSホルダーは、以下の条件で、扶養家族の滞在許可(DPやLTVP)を申請することが可能です。

  • DP:21歳未満の未婚の子供、養子、配偶者
  • LTVP:事実婚の配偶者、ハンディキャップを持つ21歳未満の未婚の子供、21歳未満の未婚の継子

6. EPとの主な差異

  • EPホルダーの配偶者等のDPホルダーは、LOCの取得により就労が可能です。一方で、S PASSホルダーの配偶者等のDPホルダーには、就労は認められておりません。
  • 雇用主である会社等(スポンサー)は、外国人雇用税(Foreign Worker Levy(FWL))が課せられます。なお、SDL(技能開発税)は、EP、S Passホルダーのいずれにおいても納付が必要です。
  • S PASSホルダーの雇用にあたり、一定人数のシンガポール人等の雇用義務があります。EPについては、COMPASS制度下において、民族の多様性が得点事由となっています(※4)。
  • 月額給与SGD12,000以上のEPホルダーは、両親のLTVP申請が認められていますが、S PASSホルダーには認められていません。
  • 会社はS PASSホルダーに対し、保険金SGS60,000(年間)以上の医療保険に加入しなければなりません。
  • S PASSホルダーへの給与の支払いは、一定の例外を除いて銀行振込等、記録が残る電子送金によらなければなりません(現金の手渡しは、NGということです)。

(※4)多様性(Diversity): 企業内の従業員のPMETのうち、同国籍のPMETに占める割合に基づき評価されます。申請者の国籍が企業内で5%未満の場合は20ポイント、5%以上25%未満の場合は10ポイントが付与されます。ただし、企業全体のPMETが25名未満の場合、自動的に10ポイントが付与されます。