
シンガポール
ビザ・就労関連
シンガポールの雇用制度改革と労働市場の最新動向
シンガポールでは、外国人雇用政策と労働市場に大きな変革が進んでいます。国際競争力の維持と地元雇用のバランスを図る政策改革が次々と実施され、2025年にはさらに重要な制度変更が予定されています。
目次
Compass導入による多様な労働力の実現
2023年9月に導入された「Complementarity Assessment Framework(Compass)」は、外国人雇用の選別を進め、労働市場の多様性向上に貢献しています。
Compass導入後の主な成果
- 単一国籍の外国人依存度が7%減少
- 外国人労働者全体への依存度が15%減少
- ローカル向けPMET(専門職・管理職)職が4,000件増加
- 現在のEP保持者の約30%がCompass基準で認定
Compassの評価基準
EP(エンプロイメント・パス)申請は以下の基準で評価されます:
- 給与・資格(申請者のスキルレベル)
- 企業の労働力の多様性
- ローカル雇用への貢献
- 特定スキルの需要(Shortage Occupation List)
企業は40ポイント以上を獲得する必要があり(各項目最大20点)、優秀な外国人材を選別しつつ、ローカル人材とのバランスを確保する仕組みとなっています。
2025年の就労許可制度改革
2025年1月からの変更点
- 最低給与基準の引き上げ – EP(エンプロイメント・パス)とSパスの給与要件が改訂され、高賃金労働者を確保しつつ、地元雇用を守る方針が強化
- 低技能労働者への規制強化 – 建設・製造・サービス業の雇用割当(クオータ)や課税(レヴィー)を見直し、外国人労働者の依存を抑制
- EP/Sパスの申請要件の厳格化 – 年齢や責任に応じた給与基準が追加され、学歴証明の審査も強化
- 公正採用フレームワーク(FCF)の強化 – 企業は、外国人雇用前にシンガポール人の採用を積極的に検討する必要があり、MyCareersFutureでの求人掲載期間が延長
- デジタル就労許可システムの導入 – 申請・更新のプロセスが簡素化され、リアルタイムでの許可状況の確認が可能に
2025年7月からのワークパーミット制度改革
- 就労期間上限の完全撤廃 – 現在14〜26年とされている期間制限が廃止
- 就労年齢の上限を60歳から63歳に引き上げ
- ワークパーミット新規申請の年齢制限を61歳に
- NTS(非伝統的供給国)職業リストの拡大(製造業オペレーター、重機オペレーター、一般料理人など)
- Sパスの最低給与引き上げ(一般産業$3,300、金融業$3,800)
- 経済成長を牽引する企業向けに外国人労働者枠を柔軟化
労働市場の現状と将来展望
労働市場のトレンド
- One Pass保持者(月収$30,000以上のトップ外国人プロフェッショナル)は、雇用創出だけでなく、メンタリング、ボランティア、ローカル企業との協業にも貢献
- 2024年のローカル労働者の「時間的下位雇用率」は2.3%と低水準(他の先進国より良好)
- 「就職を諦めた労働者」の割合が2023年の0.4%から2024年には0.3%に減少
- シニア労働者向けのスキルアップ支援を拡大し、再雇用を促進
バランスのとれた労働政策による経済成長
シンガポール経済はバランスの取れた労働政策で成長を続けています。過去10年間で、EP & Sパス保持者は38,000人増加しましたが、ローカルPMETは382,000人増加し、9倍以上の伸びを示しています。
2025年の給与見通し
シンガポールでは2025年、給与の平均引き上げ率は2%から5%と予測されています。
業界別給与動向
- 医療・技術分野: 需要増で平均以上の伸び
- 特別支援教育分野: 最大15%の給与引き上げ
- 物流・自動車分野: 3%以上の増加を91%の企業が予定
その他の給与トレンド
- 平均給与引き上げ率: 4.4%(他国より低水準)
- 転職者の給与引き上げ: 10%~15%
- ボーナス: 多くの企業が1か月以上を計画
企業は従業員の努力を評価し、インフレ対策と人材獲得競争への対応を強化しています。
まとめ
シンガポールの雇用環境は大きく変化しています。政府は「外国人労働者は経済成長に不可欠であり、シンガポール人の雇用を奪うものではない」と強調し、ローカル雇用の確保と経済競争力の向上を両立させるため、制度改革を継続しています。
シンガポールの未来は、ローカル雇用の成長と戦略的な外国人労働力の統合のバランスにかかっています。この改革は、企業、労働者、経済全体にとって大きな転換点となるでしょう。
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