シンガポール ビザ・就労関連

シンガポール雇用パス(EP)申請・管理ガイド

シンガポールに駐在される方、現地採用で雇用される日本人の方について、シンガポールで就労する前提条件として、シンガポール政府の人材開発省(The Ministry of Manpower)のEPの承認が必要です。

その流れについて解説をします。

1. 申請前の準備

1.1 公平な採用活動の実施

これは、シンガポール国民等の雇用を確保し、同等の人材が見つからない場合にのみ、外国人の雇用は、許容されるという政府のスタンスに基づいています。

  • Fair Consideration Framework (FCF)に基づく公平な採用の実施が必要
  • MyCareersFuture(以下、MCF)での求人広告掲載が必須
    求人広告を掲載して、応募の機会を与え、応募があれば、面接で確認をする必要があります。
  • 年齢、性別、国籍、人種などによる差別を禁止

1.2 求人広告の要件

  • 職務要件と給与を明確に記載
  • 差別的表現の禁止
  • 給与レンジは、最大額が最小額の2倍を超えない
  • MCFで最低14日間の連続掲載が必要
  • 3ヶ月以上経過した広告は使用不可

1.3 MCF広告免除条件

  • 従業員10人未満の企業
  • 月給22,500SGD以上の職位
  • 1か月以下の短期職位
  • シンガポー内の他グループ法人からの異動の場合

2. 雇用パス(EP)の要件

EPを申請する場合には、以下の要件を満たす必要があります。

2.1 給与要件(2024年時点)

  • 一般業種:最低月給5,000SGD
  • 金融業界:最低月給5,500SGD

45歳以上:

  • 一般業種:10,500SGD
  • 金融業界:11,500SGD

2025年1月以降、最低給与額が引き上げられる予定です:

  • 一般業種:5,600SGD
  • 金融業界:6,200SGD

2.2 COMPASS評価要件

2.1の給与要件を満たしたうえで、各申請者について、以下の要件を満たす必要があります。詳細は、別記事「シンガポール就労ビザ認定制度(COMPASS制度)について」をご参照ください。

  • 40ポイント以上が必要

免除対象:

  • 月給22,500SGD以上
  • 企業内転勤者
  • 1か月以下の短期就労

3. EPの申請プロセス

MCFでの掲載を終了したあとのEPの申請プロセスは以下の通りです。

3.1 必要書類

  • パスポート(氏名相違の場合は説明レター必要)
  • 企業(EP申請のスポンサー)のACRA登録情報
  • 資格証明の認証証明(該当する場合)
  • 英語以外の書類は英訳添付

3.2 申請手順

  1. 1. オンラインでの申請
  2. MOMの審査・承認(通常10営業日以内)
  3. MOMによるIPA(承認書)発行
  4. シンガポール入国準備
  5. EPカード発行手続き
  6. MOMでの指紋・写真登録
  7. カード受取り(5営業日以内)

4. 入国要件

EPの申請が承認され、IPAが発行されたあと、EPカードの発行を受けるために、シンガポールに入国します。その際の注意点は以下のとおりです。

4.1 基本要件

  • パスポート有効期限:最低6ヶ月

日本国のパスポートは、2025年3月24日以降は、パスポートの偽変造対策を強化するため、人定事項ページにプラスチック基材を用いた「2025年旅券」の発給が開始されます。このため、申請から交付まで1か月程度の日数を要することが見込まれますので、ご注意ください。

  • 必要な場合は、ビザ申請(日本国籍の場合)
  • SG Arrival Card(SGAC)の提出(オンラインにて、ICAの専用Webページ)
  • 公衆衛生要件の確認
  • 申告要件の確認

5. EP発行後のアップデート

EP発行の前提条件が変わった場合には、MOMへの変更申請が必要です。

5.1 変更届出事項

  • 給与・職種の変更
     給与の減額で、申請した給与額を下回る給与改定を行う場合、MOMでの事前の承認が必要。
  • 企業情報の変更
  • 個人情報の変更
  • EP保持者の行方不明

5.2 EPの更新

  • 有効期限6ヶ月前から申請可能
  • 最長3年間の更新
  • 費用:225 SGD(+複数回入国ビザ30 SGD)
  • COMPASS要件の確認

5.3 EPカードの再発行

  • 紛失・盗難の場合:100SGD(初回)、300SGD(2回目以降)
  • 破損の場合:60SGD
  • 1週間以内に申請必須

5.4 EPの取消し

  • 退職後1週間以内に手続き
  • 未払給与の清算
  • 個人所得税の清算(Form 21)
  • 家族用パスも同時に取消
  • 帰国の手配

6. 重要な注意事項

  • EPカードは半分に切って廃棄
  • オーバーステイは罰金の対象
  • STVP(短期滞在パス)申請で最大90日の滞在延長可能
  • シンガポール滞在中は有効な滞在資格の維持が必須

(注)上記取扱いは、出稿当時のもので、最新実務と異なる場合がありますので、ご注意ください。

お問い合わせ、ご相談は、錦戸(fm@avicnac.com)まで、ご連絡ください。

錦戸

錦戸 傑宜(Nishikido Takanobu) / AVIC NAC PTE LTD

シンガポールにて、シンガポールとマレーシアの日系企業のASEAN進出および事業展開支援に特化したサービスを提供しています。日本の公認会計士として、監査経験、12年以上のスタートアップのCFO経験を持ち、EC、Fintech、IoT/AI、エネルギー、創薬など、幅広い業界での実務経験を有しています。日本での実務経験とシンガポールでの実務知識を組み合わせ、現地法人設立から、会計・税務対応、内部統制構築、資金調達まで、包括的なビジネスサポートを行っています。特に、日本とシンガポールの商習慣や制度の違いを熟知し、両国の架け橋となることで、クライアントの円滑な海外展開を支援しています。