シンガポール 会計

シンガポールの会計制度(4) XBRLによる決算書の登記

XBRL (eXtensible Business Reporting Language) は、財務情報等を効率的に作成、流通、利用可能とするコンピュータ言語です。財務情報等がXBRL形式で開示されることにより、投資家等の情報利用者はコンピュータで容易にその加工および分析をすることが可能となります。XBRLは米国、英国、日本、中国、インドなど世界各国で、企業情報の開示や規制当局へのレポーティング等において利用されています。XBRLによるACRAへの登録手続の概要は以下のとおりです。

1. 概要

基本的にシンガポールにおいて設立されたACRAに対して財務諸表の提出を義務付けられている会社は、2016年度版ACRAタクソノミ(ACRA Taxonomy 2016:一般的には、財務諸表等の様式に関する電子的なひな型、項目書き体系のこと)に従い、XBRL方式に沿った財務諸表を登録する必要があります。

2. 対象会社

  • 基本的にシンガポールで設立されACRAに財務諸表を登録する義務がある会社
  • 以下は例外として適用対象外:
    • FRS、小規模企業向けFRSおよびIFRS以外の財務報告基準を採用する会社
    • 保証有限責任会社
    • 外国会社およびその支店

3. 以下の4つのテンプレートがあります

  1. Full XBRLテンプレート
  2. Simplified XBRLテンプレート
  3. XBRL FSH (Banks)テンプレート
  4. XBRL FSH (Insurance)テンプレート

4. グループ別のXBRL要求事項の表

基本的にシンガポールにおいて設立されACRAに対して財務諸表の登録を義務付けられている会社はXBRLの要件に従う必要がありますが、次の会社は例外として適用対象となりません。そのため、これらの会社は、財務諸表をPDF方式で提出することができます。

  1. FRS、小規模企業向けFRS、および、IFRS以外の財務報告基準を採用することが法律によって許容されている会社
  2. 保証有限責任会社
  3. 外国会社およびその支店

以下の表は、その提出要件と改定の概要をまとめたものになります。

グループ 財務諸表(FS)が公表されている会社 XBRLの要求事項
1 シンガポールで設立されている会社で、以下のグループ2から5に含まれない会社 Full XBRLテンプレートで提出
2 シンガポールに設立されている破産状態の免除非公開会社(Exempt private companies “EPC”) 以下のいずれかの方法による。 ・取締役により承認されたFSのPDFとともに、XBRL FSH (General)テンプレートを用いて提出 ・Full XBRLテンプレートを用いて提出
3 シンガポールに設立されている免除非公開会社(“EPC”) FSの提出は要求されていない。 もし自主的にFSの提出をする場合は、以下のいずれかの方法による。 ・取締役により承認されたFSのPDFを用いて提出 ・XBRL FSH (General)テンプレートを用いて提出 ・Full XBRLテンプレートを用いて提出
4 シンガポールにて設立されている、シンガポール通貨金融庁(MAS)の管轄下にある銀行、金融、保険に関するビジネスをしている企業 以下のいずれかの方法による。 ・XBRL FSH (Banks)テンプレートでの提出 ・XBRL FSH(Insurance)テンプレートでの提出 いずれの方法による場合にも、取締役により承認されたFSのPDFとともに提出
5 シンガポールで規定されている会計基準、または、IFRS以外の会計基準でFSを作成している会社 取締役により承認されたFSのPDFとともに、XBRL FSH (General)テンプレートを用いて提出。
6 シンガポールで設立されている保証有限会社(非営利企業) 取締役により承認されたFSのPDFを用いた方法で提出することのみ認められる。
7 シンガポール支店をもつ外国企業 取締役により承認されたFSのPDFを用いた方法で提出することのみ認められる。

5. ACRAへの登録方法

  • BizFin Preparation Toolを使用して提出
  • 詳細はACRAウェブサイトおよび関連ガイダンスを参照

6. まとめ

概要をフローチャートでまとめると以下のとおりです。

フローチャート

(注)上記取扱いは、出稿当時のもので、最新実務と異なる場合がありますので、ご注意ください。

お問い合わせ、ご相談は、錦戸(fm@avicnac.com)まで、ご連絡ください。