中国 関税

中国税関の輸出入貨物徴税管理弁法 ~特殊情況貨物輸出入通関時の税金~

中国の税関における貨物の輸出入通関時、《関税法》、《輸出入貨物徴税管理弁法》などの規定に基づいて輸入時の関税、増値税・消費税、輸出関税等を税関にて申告納付しますが、修理、代替品や臨時輸出入貨物など、特殊な目的での貨物輸出入通関時の減免を以下に紹介します。

1.輸出入通関の納税者、税率、為替レート

中国の税関における貨物の輸出通関時、税関は、輸出入関税及び、輸入段階の増値税及び消費税の代理徴収を行います。輸入時の荷受人或いは輸出時の荷送人が輸出入税金の納税者であり、物流・通関代理企業や、ECプラットフォーム企業等は代理徴収者とされます。

輸入関税の税率には、最恵国税率、協定税率、特恵税率、普通税率があり、日本を含むWTO加盟国原産地貨物、最恵国税率適用協定国貨物、及び中国原産貨物には最恵国税率が適用されます。協定税率、特恵税率はそれぞれ協定、特殊関税優遇取決めの税率、それ以外は普通税率となります。

外貨建ての通関申告に対し、毎月、税関は前月第三週の水曜(非営業日の場合は翌日)の公式為替レート中間値、或いは税関公布のレートで人民元に換算するとし、納税者は納税申告完了日時点の税率と為替レートで申告するとされています。

2.特殊情況貨物の輸出入税金徴収について

2.1 無償代替貨物

無償代替貨物とは、貨物の輸出入後に、毀損・欠品・品質不良・仕様不合格などの原因により、輸出入貨物の荷送り人、運送人或いは保険会社が無償で補償或いは元の貨物と相当或いは契約に符合する貨物に交換する貨物を指します。

無償代替貨物の輸入時、輸入関税と輸入段階の税関代理徴収税(増値税等)を徴収せず、輸出時、輸出関税を徴収しないとされています。前提条件として、元の輸出入契約に約定する賠償請求期限内で且つ、元の貨物輸出入通関手続きリリース後3年以内に無償代替貨物輸出入手続きができるものとされ、税関には売買当事者双方が締結した賠償協議のほか、毀損・欠品・品質不良・仕様不合格を証明する検査機構の検査証明の提出が求められる場合があります。

無償代替貨物が元の貨物と完全に同一ではないか或いは契約に完全に符合するものではない場合、税関にその原因を説明する必要があり、課税価格は以下のいずれかで確定されます。

無償代替貨物と、元の貨物のHSコードが同一の場合、輸出入貨物課税価格関連規定と、元の貨物の輸出入時に適用した税率、為替レートに基づき、課税価格を確定、計算・申告納付することとなり、

  1. 納税額が元の輸出入貨物の課税額より高くなる場合は差額を追納
  2. 納税額が元の輸出入貨物の課税額より低くなる場合には、差額が還付される。

なお無償代替貨物と、元の貨物のHSコードが異なる場合、無償代替貨物の関連規定を適用せず、一般輸出入貨物の徴税管理規定を適用して税金を徴収するとしています。

無償代替貨物申告を行い、元の輸入貨物は積戻し輸出申告せず且つ税関に処理を依頼するのでもなく、または、元の輸出貨物を再輸入しない場合、税関は無償代替貨物の輸出入申告実施完了の日の税率、為替レート及び関連規定に基づき、元の貨物に改めて価格審査を行い徴税するとしています。

元の輸入貨物を積戻し再輸出する場合、輸出関税を徴収せず、元の貨物を積戻し再輸入する場合、輸入関税及び輸入段階の税金(増値税等)の代理徴収を行わない、としています。

2.2 リース貨物

リース貨物の輸入に際し、規定に従い担保を税関に提供することとなっています。

リース貨物の輸入時の納税スケジュールは以下のいずれかとなります。

  1. リース代金を一括払いする場合:リース貨物輸入申告時に税金を納付する。
  2. 一定期間に分割してリース代金を支払う場合:リース貨物輸入申告時、初回の支払額に基づき納税し、その後の各期のリース代金支払い日から15日以内に、税関に納税申告を行う。所定の期間内に納税しなかった場合、15日目以降1日当たり0.05%の滞納金を課す。

リース期間満了に際して、満了日から30日以内に次の手続きを行うとされています。

  1. リース貨物を国外に返却:満了日から30日以内に税関にて監督手続きの完了を申請し、リース貨物を国外に積戻し輸出する。
  2. リース貨物を購入する場合:課税価格関連規定と、納税手続日に適用する税率、為替レートに基づき課税価格を決定し納税申告する。
  3. リース契約を更新する場合、税関に更新契約書を提出し、一括払い若しくは分割払いの納税申告に沿って申告納税する。

留保、更新いずれの場合も、規定する期限までに行わない場合、留保もしくは更新の納付税額徴収に加え、リース満了後30日以降申告日まで、納付税額の0.05%の滞納金を徴収する。

リース期間満了前にリース契約を終了する場合、リース期間満了日を終了日としています。

2.3 臨時輸出入貨物

《関税法》第37条第一項に列記される次の貨物は、臨時輸出入貨物として納税を免除し、但し、6か月以内に再輸出或いは再輸入しなければならないとされています。

  1. 展覧会、商談会、会議或いは類似の活動で展示或いは使用する貨物、物品
  2. 文化、体育交流活動で試用する公演・大会用品
  3. ニュース報道或いは映画・テレビ番組撮影に使用する機器・設備及び用品
  4. 科学研究、教科、医療衛生活動に使用する機器・設備及び用品
  5. 上記①~④の運搬手段及び特殊車両
  6. 商品サンプル
  7. 設備の取付、調整、検測に使用する器具・工具
  8. 商品の包装資材
  9. その他非商業目的の貨物・物品

《関税法》第37条記載以外の臨時輸出入貨物は、輸出入貨物課税価格の関連規定と、当該貨物の申告完了日の税率、為替レートに基づき課税価格を確定し、月毎に或いは規定期限内に貨物を再輸出或いは再輸入した際に納税するとされています。

この課税計算の期限は貨物の通関手続リリース日から60カ月とされ、1ヶ月未満15日超の場合は1ヶ月、15日未満は課税免除とされます。

計算公式は次の通りです。

計算式

毎月の関税税額 = 関税総額 ×(1 / 60)

毎月の輸入段階税関代理徴税税額 = 輸入段階税関代理徴税総額 × (1 / 60)

臨時輸出入の所定期間後再輸出或いは再輸入しない場合、所定期間満了前に税関にて手続きを行い、残りの課税期限の税金を納付しなければならない。所定期間後手続きしていない場合、1日当たり0.05%の滞納金を課す。

2.4 輸出入修理と出国加工貨物

輸入修理

輸入修理の通関申告時、修理契約または保証条項を含む元の輸出契約を税関に提出します。輸入修理及び輸入修理品のための原材料・部品輸入時、担保提出或いは保税貨物に応じた管理下となり、修理後の残りの原材料・部品と共に、税関規定期間内に再輸出する必要があります。所定期間を超える場合は延期申請が必要となります。

輸入時の担保或いは保税貨物管理は再輸出時に還付手続き或いは関連の手続きを行います。

最終的に国外に再輸出されない場合には、一般貿易課税に従って管理、元の輸入時に提供された担保は税金に転換されます。

輸出修理品

輸出修理品の通関申告時、修理契約または保証条項を含む元の輸入契約書を税関に提出することとされ、税関規定期間内に再輸入する必要があります。

輸出修理品の再輸入時、修理請求書及びその他の根拠資料を税関に提出する。輸入貨物の課税価格の決定に関する関連規定と、当該貨物の再輸入申告日の税率、為替レートに基づきその課税価格を確定計算します。

正当な理由なく税関の規定期間内に輸出修理貨物を再輸入することができない場合、納税者は、税関規定期間満了前に税関に情況を説明し再輸入の延期を申請しなければならず、再輸入期限を超過後の輸入時、一般貿易として課税されます。

出国加工貨物

出国加工貨物の輸出申告時、輸出加工契約とその他の根拠資料を税関に提出し、輸出加工貨物は、税関の規定期間内に国内に再輸入する必要があります。

出国加工貨物の再輸入申告時、加工費発票、材料費の発票等その他関連資料を提出し、輸入貨物の課税価格関連規定・再輸入日の税率・為替レートに基づきその課税価格を計算し申告納税します。

正当な理由により税関の指定期間内に出国加工貨物を再輸入することができない場合、納税者は、指定期間満了前に税関に情況を説明し、再輸入の延長を申請しなければならず、規定期間内に再輸入されない場合には、一般貿易の管理規定に基づいて課税されることとなります。

 

2.5 返品および破損品

品質、仕様または不可抗力の原因により、貨物輸出から1年以内に原状のまま再輸入または、元の輸入から1年以内に原状のまま再輸出される場合、関連証票及び根拠資料を提出し税関の確認後、再輸入される元の輸出商品には輸入関税及び輸入段階の税関代理徴収税が発生せず、再輸出される元の輸入貨物には輸出関税が発生しないとされています。

特別な事情がある場合、税関直轄の承認を得て、再輸出入まで1年の期限について 3 年を超えない範囲で適切に延長することができるとされています。規定期間を超えて再輸出入する場合は、一般貿易貨物の徴税管理規定に基づき徴税されます。

《関税法》第32条第4号及び第33条第1号に掲げる貨物(※税関のリリース前に破損或いは紛失した貨物)については、申告時又は税関の貨物リリースから15日以内に、税関に事情を説明し、関係資料を提出後、税関が必要と判断した場合、納税者に対し、商品検査機関が発行した商品の損傷度合いの検査証明書の提出を求めるとされ、税関は、実際の損害の程度に応じて、税金を減免するとしています。

関連規定

  • 《中華人民共和国関税法》(2024年12月1日施行と同時に《中華人民共和国輸出入関税条例》は廃止。)
  • 《中華人民共和国税関輸出入貨物徴税管理弁法》(税関総署令第272号公布、2024年12月1日実施。
  • 元の税関総署令2018年第240号修正の同弁法及び、2009年8月19日税関総署令第184号《中華人民共和国税関税収保全と強制措置暫定弁法》は同時に廃止。)