香港 個人所得税
香港・2024年税務(改正)(生殖補助医療への支出に係る所得控除)条例草案が官報に掲載
香港政府は本日(11月29日)、税務条例(第112章)を改正する2024年税務(改正)(生殖補助医療への支出に係る所得控除)条例草案(以下「法案」)を官報に掲載した。
同法案は、2024/25年の税査定年度から始まる、給与所得税及びパーソナルアセスメントにおける生殖補助医療(Assisted Reproductive、以下「AR」)への支出に係る税務上の所得控除の関連規定を定めるものである。当該所得控除は、香港の低出生率の現状に取組む目的で提示された、2023年の施政方針演説における措置の1つであり、ARサービスへの支出によって生じる経済的負担を軽減することで出産を促進し、妊娠に困難を抱える夫婦が必要とする医療支援を求めることを奨励するものである。
医学的な理由により、ARサービスを利用する必要がある納税者のみが、当該所得控除の恩恵を享受できる。これには、(i)不妊の夫婦もしくは特定の状況下にある人々、並びに(ii)化学療法、放射線療法、手術またはその他の医療処置の結果として、生殖能力の喪失につながり不妊となる可能性のあるがん患者、あるいはその他の患者が含まれる。家族計画として出産を遅らせる習慣の奨励を避けるため、その他の理由による配偶子の凍結保存サービスに係る費用については、当該所得控除の対象とはならない。
同法案は、当該所得控除の対象となるARサービスの範囲を定めており、具体的には、人類生殖科技管理局(Council on Human Reproductive Technology、以下「CHRT」)が発行する夫の人工授精ライセンス、治療ライセンスまたは保存ライセンスに基づいて実施される生殖技術(Reproductive Technology、以下「RT」)過程の提供サービス、並びにRT過程に関連して使用される、あるいは使用されることが予定されている配偶子もしくは胚の取扱い、保存または処分に関するサービスが対象となる。CHRTは、認可されている治療センターのリストをウェブサイト(www.chrt.org.hk)上で定期的に更新し、一般向けに公開している。
同法案はまた、納税者本人、納税者と同居している配偶者、またはその両者が適格なARサービスに対して支払った関連する費用について、当該所得控除を享受できることを規定している。各税査定年度において控除可能な支出額の上限は、10万ドルである。納税者が既婚者の場合は、その両者合算で認められる控除可能な支出額の上限は、10万ドルとなる。
同法案は、12月11日に審議のために立法会に提出される予定である。
同法案が立法会で可決されれば、香港政府は適格なARサービスに対する支出に係る証明書の標準フォーム(以下「証明書」)を発行する。当該証明書には、該当するRT過程の臨床診断及び治療を担当する登録医(認可されている専門医もしくは認可治療センターの責任者など)が署名し、適格なARサービスに対して支払った適格な費用の日付及び金額を証明する必要がある。その状況に応じて、香港税務局は納税者に対し、申告された所得控除額を裏付ける証憑の提出を要求する場合がある。一般市民が今年2024年4月1日以降にARサービスに係る費用を支払い、今回提案されている税務上の所得控除制度が実施された後、関連する費用の所得控除を申請したい場合は、関連サービスを提供した認可治療センターから証明書を遡及して取得できるように、領収書などの関連文書を証憑として保管する必要がある。
原文:Gazettal of Inland Revenue (Amendment) (Tax Deductions for Assisted Reproductive Service Expenses) Bill 2024(2024年11月29日更新)