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中国(広東)自由貿易試験区~『2022 広東省投資指南』の内容を解説
中国でGDPと輸出入実績トップの省の地位を30年超継続する広東省において、広東自由貿易試験区は先行して経済・投資制度を実施してきた地域であり、大湾区政策と並び広東省経済振興の重要な地域となっています。2022年6月20日に広東省商務庁より広東省の投資環境・実績・政策等をまとめた《2022広東省投資指南》が発布され、この中で自由貿易試験区についても紹介がありました。概要は以下の通りです。
広東省の投資環境と実績
広東省の土地総面積は17.97万km2、海岸線4114㎞。中国で最も人口の多い省とされ、2021年末の常住人口は1億2684万人。2021年の全省GDPは12兆元、輸出入総額8兆2700億元、実際利用外資1840億元(前年比13.6%)新規設立外商投資企業16155件(前年比25.6%)。
中国(広東)自由貿易試験区
中国(広東)自由貿易試験区は2014年12月31日に国務院認可により正式に発足しました。
2020年における実際利用外資79.36億米ドル(全省の1/3)、輸出入総額3412.8億米ドル(全省の4.8%)、税収1119.42億元、34社の世界500強プロジェクトを誘致。登録企業数35万社(中国(広東)自由貿易試験区十四五発展企画(2021年9月発布)より)
3つのエリアと2021年の主要データは以下の通りです。
エリア | 面積 (km2) | 輸出入総額 (億元) | 新設外商投資企業数 | 実際利用外資(億米ドル) |
南沙エリア | 60 | 2600 | 54 | 13.16 |
前海蛇口エリア | 28.2 | 1053.34 | 963 | 54.02 |
横琴エリア | 28 | 314.66 | 1908 | 15.23 |
2021年9月にはその5か年計画であらためて南沙エリア、前海蛇口エリア、横琴エリアの3つの地域範囲に対し各地の主要な発展方向を定めています。
各エリア概要
南沙エリア
特色:粤港澳大湾区の総合国家科学中心主要ホストエリア、国際人材特区、輸入貿易促進イノベーションモデル区、粤港澳全面合作モデル区。
現状:新駆動、先進製造業(自動車、半導体、先進装備)及び現代サービス業
新興戦略産業(情報技術、AI、バイオ、新エネルギー、新材料)
ハイテク企業475社、AI200社の集積。金融業種6587社。南沙港は114の国際航路を有し、取扱量1721.68TEU、商品車116万車両。
政策:大湾区のハブであり、国家新区+自由貿易試験区+粤港澳全面合作の3大戦略を担っている。
越境貿易の高水準発展モデル地区であることより、自由貿易口座(FT)業務を推進し、2021年取引額は7,528元に達した。越境ECにおける返品監督管理モデル推進により、越境ECの輸出額が前年比73%増の約360億元。大湾区及び一帯一路法律サービス集積地域を推進する。
前海蛇口エリア
特色:香港連携新型国際貿易センター建設、国際ハイエンド航運サービス、国際法律サービス・国際商事争議解決センター、国家金融対外開放試験モデル、クロスボーダー人民元業務イノベーション試験区等。
現状:金融を柱とした現代サービス産業集積地。2020年の累計登録金融企業は44060社でエリア内全企業数の29.14%を占め、金融業登録企業の増加比率は56.27%。国際航路・中継サプライチェーン地点。
科学技術型企業登録23644社(区内総企業数の15.63%)。金融、現代物流、情報サービス、科学技術サービスと専門サービス業のGDP成長率に占める割合は全体の85.6%である。
政策:前海エリアと蛇口エリアに分かれ、深圳・香港間の合作プロジェクトを集積し、合作区+自由貿易試験区+総合保税区 の3エリア政策を進める。
クロスボーダーEC全業態センターを建設中、2021年に全国で初めて「買いー展示―売りー返品」全フローを実現した。
また前海蛇口エリアでは粤港澳大湾区国際仲裁センターを設置、2021年には91案件を処理。
横琴エリア
特色:横琴粤澳深化合作区建設、粤澳両地域規則リンク、マカオ経済発展プラットフォーム、マカオ住民生活・就業環境整備等。
現状:六大集積(科学イノベーション、特色金融、医療健康、越境貿易、文化・観光、専門サービス)
広深港澳科技イノベーションルート建設、中国科学院共同建設のスマートプラットフォーム、ハイテク企業319社、省級イノベーションプラットフォーム22か所、189社医薬企業
マカオ金融機構20社、金融企業5620社。
《横琴国際リゾート島建設法案》が認可され、長隆国際海洋リゾートの累計集客数8000万人・回。
政策:マカオ経済との融合発展。
マカオ人起業家は横琴企業設立を完全オンラインで可能。2022年4月において、33社のマカオクロスボーダー金融合作33社。、科技型企業登録1万社(うちマカオ企業800社)、国家ハイテク企業326社。
珠澳クロスボーダー仲裁プラットフォームを構築、マカオ仲裁機構が横琴でマカオ法律を運用し仲裁案件を受理することができる。