中国 粤港澳大湾区
中国・大湾区自由貿易試験区各エリアの企業所得税優遇政策
中国の企業所得税の法定税率は25%です。現状ハイテク企業認定や、中小零細企業向けの税率優遇がありますが、大湾区の自由貿易試験区各エリアにおいては投資誘致を奨励する特定業種に対する税率優遇があります。2024年7月時点で有効な政策を紹介します。
目次
1. 広州南沙新区自由貿易試験区 南沙先行起動区
広東自由貿易試験区南沙新区エリア60平方キロメートル(7ブロック)のうち、南沙湾、慶盛ハブ,南沙ハブの3つのブロックを南沙先行起動区(合計23平方キロメートル)としている。
対象産業リスト
- ハイテク技術重点産業
(1) AIと集積回路(1~13)
(2) ハイエンド装備(14~23)
(3) 生命健康(24~30)
(4) 省エネ・環境保全(31~35) - 情報技術(36~50)
- 先進製造業(51~67)
- 生物医薬(68~80)
- 新エネルギーと新材料(81~92)
- 海運、物流(93~105)
- 現代サービス(106~134)
- 金融(135~140)
企業所得税の優遇
企業所得税の税率を15%とする。
優遇対象企業
南沙先行起動区(南沙湾、慶盛ハブ,南沙ハブ)において条件に符合する奨励産業の企業。
対象企業の条件
- 《広州南沙企業所得税優遇リスト》(2022版)(以下「リスト」と称する)に規定する産業を主要業務とし、その収入の収入総額に占める割合が60%以上である。
- 南沙先行起動区に実際の管理機構があり、生産経営、人員、帳簿、財産等を含む経営実態があること。
本社機構が南沙先行起動区に所在する場合
同区内の条件を満たす本社及び分公司に対し、企業所得税の税率を15%とする。本社機構が同区の外に所在する場合、条件を満たす同区内の分公司に対してのみ15%の税率を適用する。具体的な方法については税務総局の関連規定に基づいて執行する。
繰越欠損金
南沙区に設立されたハイテク技術重点業種企業に対し、2022年1月1日より、当年度のハイテク企業或いは科技型中小企業資格に基づいて、資格取得年度の8年前までに発生した欠損を以降の年度で繰り越すことを認め、最長繰越年度を13年まで認める。
ハイテク技術重点業種企業
「リスト」に規定するハイテク重点産業を主要業務とし、その収入比率が収入総額の60%以上である企業のこと。
ハイテク企業
国科発火[2016]32号、科技型中小企業:国科発政[2017]115号に依拠し認定登記された企業のこと。
施工期間
2022年1月1日から2026年12月31日まで。「リスト」に該当するか判断し難い場合、広東省政府行政部門或いはその授権する下級行政部門に意見発行を申請することができる。
その他
その他の政策の享受との関連性については、現行のハイテク企業及び科技型中小企業の企業所得税欠損繰越年数の優遇政策延長規定に準じるものとする。
関連規定
・財政部 税務総局 広州南沙企業所得税優遇政策の通知(財税[2022]40号)
2. 横琴粤澳深度合作区
対象産業リスト
- 科学技術研究開発及びハイエンド製造業(1~70)
- 中医薬等マカオブランド工業(71~94)
- 文化・観光・会議・展示会、商業貿易産業(95~153)
- 現代金融産業(154~169)
- その他(教育、医療等)(170~185)
企業所得税が優遇税率の15%になるケース
優遇対象企業
横琴粤澳深度合作区に所在する、条件を満たす業種の企業。
企業所得税の優遇
企業所得税の税率を15%とする。
対象企業の条件
- 横琴粤澳深度合作区企業所得税優遇リスト(2021版)に規定される産業を主要業務とし、その収入比率が収入総額の60%以上であること。
- 経営実態があること。横琴粤澳深度合作区に実際の管理機構があり、生産経営、人員、帳簿、財産等の実質的な管理と統制があること。
本社機構が横琴粤澳深度合作区に所在する場合
同合作区内で条件を満たす本社及び分公司に対し、企業所得税の税率を15%とする。本社機構が同合作区の外に所在する場合、同合作区内で条件を満たす分子機構に対してのみ15%の税率を適用する。具体的には税務総局の関連規定に基づき執行する。
企業所得税が優遇税率の15%になるケース
優遇対象企業及び対象の所得
横琴粤澳深度合作区に設立された(リスト中の各産業に該当する)観光業、現代サービス業、ハイテク産業企業が対外直接投資新規増加し取得した所得。
企業所得税の優遇
企業所得税は免除される。
対象企業の条件
- 国外に分子機構を設立して取得した営業利益、若しくは20%超の持分比率を有する子会社より受け取る、直接投資新規増加分に対応する配当所得。
- 投資先の国(地域)の企業所得税法定税率が5%を下回らない。
(3) 横琴粤澳深度合作区に設立した企業が、新規に固定資産を購入(自社にて建築或いは開発する場合を含む)した固定資産或いは無形資産で、単位価値が500万元を超えない場合、一括して当期の費用原価に計上し課税所得額から控除することを認め、その場合償却を計算しない。新規購入(自社建築、開発を含む)した固定資産或いは無形資産の単位価値が500万元を超える場合、償却期間を短縮する或いは加速償却する方法を採ることができる。固定資産には建物・建築物を含まない。
関連規定
・財政部 税務当局 横琴粤澳深度合作区企業書と甲税優遇政策の通知(財税[2022]19号)
3. 前海深港現代サービス業合作区
《財政部 税務総局 深セン前海深港現代サービス業務合作区企業所得税優遇政策継続の通知》(財税[2021]30号)に規定する税収政策は前海深港現代サービス業合作区全域※1に適用する。
企業所得税の優遇
前海深港現代サービス業合作区に所在する、条件を満たす企業は、15%の税率で企業所得税を徴収する。
優遇政策の施行期間
2023年1月1日から2025年12月31日。
・前海深港現代サービス業合作区企業所得税優遇リスト(2021版)に規定する産業を主要業務とし、その収入比率が収入総額の60%以上であること。
・本社機構が前海深港現代サービス業合作区に所在する場合、条件を満たす、同合作区の本社及び分子機構に15%の税率を適用する。本社機構が同合作区の外に所在する場合、条件を満たす同合作区所在の分子機構のみに15%の税率を適用する。
・リストに該当するか判断し難い場合、深セン市或いは下級の行政部門に意見発行を申請することができる。
※1: 前海深港現代サービス業合作区全域とは、国務院が2023年12月に認可した《前海深港現代サービス業合作区総体発展規画》に基づく120.56平方キロメートルの範囲を指す。
[関連規定]
・財政部 税務総局 前海深港現代サービス業合作区企業所得税優遇政策の通知(財税[2024]13号)
・財政部 税務総局 前海深港現代サービス業合作区企業所得税優遇政策の延長についての通知(財税[2021]30号)
・前海深港現代サービス業合作区企業所得税優遇リスト(2021版)
4. 河套深港科技創新合作区深セン園区
河套深港科技創新合作区深セン園区とは、国務院〈河套深港科技創新合作区深セン園区発展規画〉印刷発布の通知(国発[2023]12号)にて2017年1月に備忘録に署名された香港特別行政区政府と深セン市人民政府との合作開発計画区域である、香港北部地域と深港科技創新エリアを合わせた3.89平方キロメートル(深圳園区3.02平方キロメートル、香港園区0.87平方キロメートル)のうち、深セン園区は福田保税区1.35平方キロメートルと皇崗税関エリア1.67平方キロメートル(東は華強南路、南は深圳河、西は皇崗路、北は濱河大道)を含む。
企業所得税の優遇
15%の税率で企業所得税を徴収する。
優遇対象企業
河套深港科技創新合作区深セン園区特定封鎖地域(国発[2023]12号に規定される福田保税区範囲内を指し、東は皇崗税関、南は深セン河に沿って、西は新洲河、北は絨花路まで)に設立し、条件を満たす、奨励類業種の企業。
優遇政策の施行期間
2023年1月1日より2027年12月31日。
対象企業の条件
①河套深港科技創新合作区深セン園区企業所得税優遇リスト(以下「リスト」)に規定する産業を主要業務とし、その収入が収入総額の60%以上である。
②実際の管理機構が深セン園区特定封鎖地域内にあり、生産経営活動、人員、帳簿、財産等を含む経営実態があること。
深セン園区特定封鎖地域内に本社機構がある場合、当該封鎖地域内に所在する本社及び分子機構に対し15%税率を適用する。本社機構が当該封鎖地域の外にある場合、当該封鎖地域内に所在する分子機構のみ15%税率を適用する。具体的な課税計算方法は税務総局の規定に基づき行う。
税務機関より「リスト」に該当するか判断し難い場合、深圳市人民政府の関連行政部門或いはその授権する下級の行政部門の意見発行を申請することができる。
[関連規定]
・財政部 税務総局 河套深港科技創新合作区深セン園区企業所得税優遇政策の通知(財税[2024]2号)
・河套深港科技創新合作区深セン園区企業所得税優遇目録
・国務院〈河套深港科技創新合作区深セン園区発展規画〉印刷発布の通知(国発[2023]12号)