マレーシアでは、電子インボイス(e-Invoicing)が段階的に導入されており、2024年8月から特定の事業者に対して義務化が始まりました。この制度は、商取引のデジタル化を促進し、税務管理の効率化を図ることを目的としています。
目次
- ■導入スケジュール [1]
- ■e-Invoicingの仕組み [8]
- ■中小企業への影響 [9]
- ■マレーシアのe-Invoicing制度と他国の比較 [10]
- 1. 導入のタイムラインと段階的アプローチ [11]
- 2. 中央集権型の取引管理モデル [12]
- 3. 国際的なネットワークとの統合 [13]
- 4. デジタル署名と認証の必要性 [14]
- 5. 他国との比較 [15]
■導入スケジュール
既存法人(2024年以前に設立)
電子請求は、次のフェーズごとに実装されています。
フェーズ1(2024年8月1日~)
年間売上高RM1億超の企業。
フェーズ2(2025年1月1日~)
年間売上高RM2,500万超の企業。
MyInvois ポータルを通じて、または 、業務・会計システムとのAPIにより連携により、UBL 2.1 形式 (XML または JSON) を使用して、IRBM に電子請求書を提出 。
フェーズ3(2025年7月1日~)
年間売上高 RM500万~2,500万の企業。
フェーズ4(2026年1月1日~)
すべての企業に拡大(ただし、電子請求を免除された企業を除く)。
2024年に新規設立した会社
2024年に設立され、年間収益が以下の場合:
RM500万超、電子請求書の開始日は 2025年7月1日です。
RM500万以下、電子請求書の開始日は 2026年1月1日です。
■e-Invoicingの仕組み
電子インボイスは、売り手と買い手の間での取引をデジタルで記録するもので、政府のポータルを通じてリアルタイムで検証されます。これにより、請求書の発行、検証、保存が効率的に行われます。具体的には、以下のようなプロセスが含まれます:
発行: 売り手がMyInvoisポータルまたはAPIを通じてe-Invoiceを作成し、マレーシア内国歳入庁(IRBM)に送信します。
検証: IRBMがリアルタイムでe-Invoiceを検証し、ユニークな識別番号(UIN)を発行します。
通知: 検証が完了したe-Invoiceは、売り手と買い手の両方に通知されます。
■中小企業への影響
中小企業(SME)に対しては、2025年1月からの義務化に向けて、6ヶ月の猶予期間が設けられています。この期間中は、従来の請求書とe-Invoiceを併用することが可能です。中小企業は、e-Invoicingの導入に向けて、システムのアップグレードや従業員のトレーニングを行う必要があります。
■マレーシアのe-Invoicing制度と他国の比較
マレーシアのe-Invoicing制度は、他国の制度と比較していくつかの特徴があります。以下に、マレーシアの制度の概要と、他国との主な違いを示します。
1. 導入のタイムラインと段階的アプローチ
マレーシアでは、2024年8月からe-Invoicingが義務化され、最初は年間売上がRM100百万(約2.5億円)を超える企業が対象となります。2025年1月には年間売上RM25百万からRM100百万の企業、2025年7月にはすべての企業に拡大される予定です。これは、他の国々が採用している段階的な導入と類似していますが、特にマレーシアは、売上高に基づく明確な基準を設けている点が特徴です。
なお、シンガポールでは、GST登録業者のうち、任意登録の企業から順次導入されており、売上高により明確な基準は設けられておりませんが、任意登録の企業は、4つの四半期の売上高合計が100万SGD超ではなかった、または、ない見込であるにもかかわらず任意で登録する場合が先行導入が必要とされており、一応売上高等に基づく基準が設けられております。
2. 中央集権型の取引管理モデル
中央集権型の継続的取引管理(CTC)モデルは、企業が発行した請求書を税務当局にリアルタイムで送信し、検証を受ける必要があることを意味します。このモデルは、イタリアなどの他国でも採用されており、税務管理の透明性を高めることを目的としています。
3. 国際的なネットワークとの統合
マレーシアは、PEPPOL(Pan-European Public Procurement Online)という国際的なe-Invoicingネットワークに統合されています。これにより、マレーシアの企業は国際的な取引を行う際に、他国の企業とスムーズに取引できるようになります。PEPPOLは、ヨーロッパを中心に広がっており、国際的な標準化を促進しています。なお、シンガポールのInvoiceNOWでもPEPPOLを導入しています。
4. デジタル署名と認証の必要性
マレーシアのe-Invoicingでは、電子請求書を発行する際に、買い手の同意が必要です。また、請求書にはQRコードが添付され、検証が行われます。これは、他国の多くの制度でも見られる特徴ですが、マレーシアでは特にこのプロセスが強調されています。
5. 他国との比較
ヨーロッパ: 多くの国がe-Invoicingを義務化しており、特に公共部門での導入が進んでいます。例えば、EUではすべての公共機関が電子請求書を受け入れる必要があります。
アジア: インドや韓国などもe-Invoicingを導入していますが、各国の制度は異なります。韓国では2011年から義務化されており、すべての企業が対象です。
北米: アメリカでは、連邦政府が電子請求書の使用を推進していますが、州ごとに異なる規制が存在します。