マレーシア
会計・監査

マレーシア
シンガポールとの相違点
シンガポールとマレーシアの税制度は、類似する部分もありますが、ビジネスを行ううえで大きな違いがあります。
目次
法人税の課税所得の範囲や所得の種類、居住/非居住法人の区別、日本のような申告納税制度ではなく当局による賦課決定方式をとる点、キャピタルゲインが原則非課税、ワンティア方式をとるため受取配当金が非課税である点などは同様です。
法人税率はマレーシアの方が高く、決算期開始前に見積税額を申告納付する必要があります(見積が確定額より少ないとペナルティあり)が、シンガポールでは、決算日後3か月以内の見込申告制度がありますが、基本的には確定申告のみです。また、繰越欠損金の繰越期限は、マレーシアでは期限があり(7年間)、シンガポールは無期限です。
さらに、個人所得税については、マレーシアでは日本と同様、給与の源泉徴収制度がありますが、シンガポールでは確定申告のみです(確定申告後に、分割払いも可能)。
付加価値税は、シンガポールは日本の消費税に似た仕組みをとりますが、マレーシアの場合は、売上に対して課税されます。
主なポイント、相違点を表にすると、以下のとおりです。
マレーシア | シンガポール |
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① マレーシアで発生した所得 ② マレーシアで稼得した所得 ③ マレーシア国外から受領した所得 (ただし、銀行、保険、船舶業、航空業を営む居住法人は、全世界所得。居住法人とは管理及び統制が実際にマレーシアで実施されているマレーシア法人) |
考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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・事業取得 ・利子・配当取得 ・資産取得 ・その他 |
考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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管理属地主義 (管理や統制が現地で行われている、マレーシアで設立された法人は、居住法人) |
考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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非居住法人は、課税上の恩典を受けられないため、 ・法人税の減免措置を受けられない ・マレーシアと各国の租税条約上の恩典を受けられない ・源泉税の適用を受ける などの違いがある。 |
考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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24% | 17% |
マレーシア | シンガポール |
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部分免税制度あり マレーシアで設立された居住者のうち、払込資本に応じて、課税所得のうち、最初の一定額まで一定の減免 |
同左 シンガポールの居住法人のうち、 課税所得の一部について法人税の免除 |
マレーシア | シンガポール |
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なし しかし、代替的な優遇制度あり。 ・中小企業向け優遇税制 課税所得600,000 RMまでは17%の税率(新設企業に限定されない一般的な制度) ・MSC Malaysia Status企業向け 最長10年間の「Pioneer Status」として法人税免除。ただし、デジタル技術関連企業に限定され、申請・承認プロセスが必要。 |
あり 新設のスタートアップ企業には、一定の条件を満たせば、設立から3年間、以下の免税を受けることができる。 課税所得のうち、最初の一定額は75% 次の一定額まで50%免税。 |
マレーシア | シンガポール |
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決算日後7か月以内に確定申告 | 決算日の翌年の11月末までに確定申告。 なお、決算日後3か月以内に見込申告納税制度あり。 |
マレーシア | シンガポール |
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見込申告(課税年度開始30日前まで) 期中で毎月分割納付(翌月15日まで) 見込が確定申告額より少なった場合、ペナルティあり。 |
ECI(決算日後3か月以内の1回) 申告納付 申告しない場合、IRASが自主的に計算し課税してくる可能性あり。 |
マレーシア | シンガポール |
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・一般法人:適用されない(外国源泉所得が課税対象外のため) ・ただし、銀行、保険、船舶、航空業は全世界所得が課税対象のため、外国税額控除が認められる場合がある。 |
制度あり ・租税条約に基づく外国税額控除 ・租税条約がない相手国から送金された国外源泉所得にかかる外国税額控除制度(国外でのプロフェッショナル、コンサルティングその他サービス所得、配当所得、シンガポール居住法人の海外支店の所得、特定の国外源泉ロイヤリティ) ・日本のような繰越制度はない。 |
マレーシア | シンガポール |
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発生年度後最大7年 ただし、期中に休眠会社の株式の50%超の変更があった場合、その休眠会社が有する税務上の繰越欠損金を繰り越すことはできない。 |
無期限 ただし、株主50%超の変更があった場合、従前の欠損金は使用不可。 |
マレーシア | シンガポール |
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制度はない。 | 制度はない。 |
マレーシア | シンガポール |
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通常は可能。 ただし、例外あり。 |
借入金の使途によって判断。 |
マレーシア | シンガポール |
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・対象者:マレーシアにて事業を行っている非居住者。 ・対象となる所得がマレーシアにて稼得されたとみなされること。 ・対象となる所得がマレーシア国内の非居住者によって遂行された事業に起因しないこと。 ・対象となる取得:利息、ロイヤリティ、請負契約及びプロフェッショナル・サービス等 ・利息、ロイヤリティは、非居住者が収受する場合、源泉税の対象。 ・租税条約: シンガポールと支払を受ける者の居住国との間に租税条約が結ばれている場合、その条約に基づいて源泉税が免除されるか、税率が軽減されることがある。 ・源泉税の納付:支払者が源泉徴収し、所定の期間内に税務当局に納付。 |
考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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– 2019年からアーニングス・ストリッピングルール導入 – 関連者間支払利息をEBIT/EBITDAの10-30%に制限 |
なし |
マレーシア | シンガポール |
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日馬租税条約 ・利子、配当、使用料に対する源泉税率の軽減 ・恒久的施設の定義 ・脱税防止条項 ・相互協議手続(両国の税務当局が協議し、解決策を見出すための手続) |
日星租税条約 ・考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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– 2003年にガイドライン導入、2012年に改定 – 独立企業間価格の算定方法を規定 – 文書化義務と調査制度を整備 |
考え方は、同じ。 ・OECDの移転価格ガイドラインを基に構築されており、国際的な基準に沿っている。独立企業間価格の算定方法、セーフハーバールール、文書化義務、事前確認制度など。 |
マレーシア | シンガポール |
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・OECDのMLI(多国間条約)へ加盟し、租税条約の規定をBEPSの基準に沿って改定。 ・セーフハーバールールの導入: ルーティンなサービスなど、一定の条件を満たす取引については、移転価格調整のリスクを軽減できる。 ・移転価格文書化の強化 ・デジタル経済への課税検討。 |
考え方は、同じ。 |
マレーシア | シンガポール |
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・SST(売上取引課税) 物品の販売やサービスの提供に対して課される。 ・税率:品目別に異なる。一般的には、6%または10%が適用。 政府が定める特定の物品やサービスは、免税対象、低率となる場合あり。 ・課税事業登録制(国内での課税対象となる物品の販売額またはサービスの提供額が、一定の売上高を超えること。) ・申告:原則として2ヶ月ごと。申告期間は、税務当局が定める期間に従う。申告と同時に、算出された税額を納付。 |
・GST(購入、販売取引課税) 国内における物品の販売、サービスの提供、物品の輸入に対して課される。 ・税率:9%、0%、非課税の3区分。 9%の課税がある取引について軽減税率の適用はなく、一律。 ・課税事業登録制(売上SGD1mil/4四半期超で登録必須。ただし、任意登録も可。 ・申告:自社の決算期に応じて3カ月単位で申告。 |
マレーシア | シンガポール |
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・居住者:全世界所得に課税。 ・非居住者:マレーシア国内源泉所得。 |
・居住者:シンガポール源泉所得のみが課税対象。なお、シンガポールに常勤している社員の給与の一部が日本で支給されていても、シンガポール源泉所得になる。 ・非居住者 シンガポール国内源泉所得のみが課税対象。ただし、滞在または就労日数60日以内の場合、免税(シンガポール法人の取締役は除く) |
マレーシア | シンガポール |
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・居住者:累進課税。 最高税率30%。 所得控除、税額控除あり。 ・非居住者:一律30%。 所得控除、税額控除なし。 |
・居住者:累進課税。 最高税率24%。 所得控除、税額控除あり。 ・非居住者:22%、または、居住者と同じ累進税率のうち高い方。 所得控除、税額控除なし。 |
マレーシア | シンガポール |
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・以下の場合にタックスクリアランスが必要: • マレーシアを3ヶ月以上離れる場合(例外として、同じ雇用主の下で短期間帰国する場合は不要)。 • 退職または任期満了後に帰国する場合。 • マレーシア国内で転職する場合。 • 不慮の死を迎えた場合(この場合、親族が30日以内に申請を行う必要があります)。 ・雇用主は、退職や契約終了、または出国予定日の少なくとも30日前に税務局(LHDN)へ通知 |
・外国人は、帰国時または退職時に、IR21を申告(帰国日または退職日の1カ月前まで)に提出。 ・やむを得ない場合には、1カ月前までに申告できない理由をIR21に記載(ペナルティなし)。 ・雇用主は、帰国等が確定した日以降の給与支給を留保して、所得税額を納付し、差額を本人に支給することになる。 ・退職が急に決まったなどの理由で給与支給が留保できなかった場合には、本人にNOAが届くことになる。 |
マレーシア | シンガポール |
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・課税対象 不動産売買契約、株式譲渡契約、融資契約等 ・納付期限:原則として文書の作成日から30日以内。 |
・課税対象 左記と同様。 ・外国人が居住用不動産を購入する際、追加で課税される(Additional Buyer’s Stamp Duty (ABSD))。 ・納付期限:契約締結から14日以内(国内)または30日以内(国外) |