マレーシア

マレーシアにおける会計・監査制度のシンガポールとの比較

以下に、マレーシアとシンガポールの会計・監査制度の主な違いをまとめます:

会計基準

IFRSや中小企業向けIFRSに準拠している点は共通。ただし、非上場会社向けの基準が異なる。

マレーシア

  • 上場会社・銀行保険等向け MFRS (Malaysian Financial Reporting Standards) – IFRSとほぼ同等
  • 非上場会社向けMPERS (Malaysian Private Entity Reporting Standards) – 中小企業向けの簡素化された会計基準(IFRS for sME)に概ね準拠(注1)

(注1)研究開発費は費用計上(開発費の資産計上をしない)、のれんを償却する(10年以内)、借入費用の資産化はせず費用処理のみ認められる点が、MFRSと異なる。

シンガポール

  • 上場会社及び上場準備会社向け – SFRS(I) (Singapore Financial Reporting Standards International) – IFRSとほぼ同等
  • 非上場会社向けFRS –IFRSとほぼ同じ内容。非上場の日系企業は一般的にFRSを採用。
  • 非上場会社向けSFRS(SE)- 一定の要件を満たす中小企業向けの簡素化された会計基準(IFRS for sME)と同等の基準も採用。

監査要件

原則としてすべての現地法人及び支店で外部監査が必要である点は共通。マレーシアの方が、免除要件が厳しい点が異なる。

マレーシア

すべての現地法人および外国法人の支店について、原則として、公認会計士による外部監査が必要。

一定の小規模企業や休眠会社のみが監査免除の対象だった。しかし、監査人不足や中小企業のコスト負担軽減を背景に、監査免除基準が緩和された(2025年1月1日以降に開始する会計年度から適用)。

免除要件は、依然として、シンガポールより狭く、具体的には、一定の議決権を有する株主等の反対やCCMの反対がないことを前提に、以下の3項目のうち、いずれか2項目を満たせば、監査が免除される:

  1. 売上高が3会計年度連続で300万リンギ以下
  2. 総資産が3会計年度連続で300万リンギ以下
  3. 従業員数が3会計年度末時点で30人以下
年度 売上高 総資産 従業員数
2025 1m RM(約3,500万円) 同左 10名
2026 2m RM(約7,000万円) 同左 20名
2027 3m RM(約1億円) 同左 30名

※2025年1月1日以降開始事業年度から適用される、新しい免除基準により、全企業の約4割が監査免除の対象となるとも言われる。監査コスト削減が期待される一方で、財務情報の信頼性は低下する可能性があり、日本やシンガポールで連結する際、信用調査をする際には注意が必要。また、M&A時には、財務デューデリジェンスの重要性が増す可能性がある。

シンガポール

小規模企業は免除可能。連結ベースで判定。基準は以下。

  • 年間売上高S$10M以下
  • 総資産額S$10M以下
  • 従業員数50人以下
  • 上記の3条件のうち2つを満たす場合

    また、休眠状態になる会社も免除可能。この場合、休眠状態であることの申告が必要。

    会計記録保存期間

    • マレーシア: 取引完了から7年間
    • シンガポール: 取引完了後5年間

    決算書

    • マレーシア: B/S、P/L、S/S、C/F、注記
    • シンガポール: B/S、P/L、S/S、C/F、注記

    財務諸表提出

    マレーシア

    決算日から7ヶ月以内にCCMへ提出が必要。CCMに登記された(監査済み)決算書は、誰でも閲覧可能。

    なお、XBRLでの財務諸表の登記は不要(上場会社は、証券市場の要件に従う)。

    シンガポール

    決算日から7ヶ月以内にACRAへ提出が必要。ACRAに登記された(監査済み)決算書は、誰でも閲覧可能。

    一定の企業については、XBRLでの財務諸表の登記が必要(個人株主20名以内で、支払能力が証明できる場合には、不要)。


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