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シンガポール・暗号資産にかかる会計処理のガイダンス
シンガポールにおいては、IFRS上で暗号資産にかかる会計基準書がまだ上梓されていないことから、個別ケースの判断となっています。シンガポール勅許会計士協会(ISCA)から、以下のガイダンスが出ていますので、そのガイダンスを整理します。
ISCA Financial Reporting Guidance 2 (“FRG 2”)Accounting for Cryptoassets: From a Holder’s Perspective(March 2020)
目次
1. 暗号資産の定義と分類
- 暗号資産は、ブロックチェーン上に記録されたデジタル資産
- 大きく分けて、以下の4種類がある
- 暗号通貨(決済手段として使用)(ペイメントトークン)
- ユーティリティトークン(製品やサービスへのアクセス権)
- アセットトークン(実物資産の権利)
- セキュリティトークン(有価証券としての権利)
2. 会計処理の基本方針
- 暗号資産は、現行のIFRS基準では明示的に対象とされていません。
- 資産の性質に応じて、以下の会計基準を適用していくことになります。
- IAS 2(棚卸資産):販売目的で保有する場合
- IAS 38(無形資産):長期保有の場合(※1)
- IFRS 9(金融商品):金融資産の定義を満たす場合(※2)
(※1)無形資産として取り扱うべきケース。
(1) IAS 38の無形資産の要件
- 識別可能(分離可能または契約・法的権利から発生)
- 支配している
- 将来の経済的便益が期待できる
(2) 事業目的による分類判断
- トレーディング目的:金融商品
- 事業利用目的(例:プラットフォーム利用権):無形資産
トークンを事業に利用する明確な意図がある場合(例:ガバナンス参加、プラットフォーム利用)は、無形資産として処理する余地があり、投資利益獲得が主目的の場合は金融商品として処理。
(※2)金融商品(特に金融資産)の定義
IAS第32号「金融商品:表示」の第11項によると、金融資産は以下のいずれかに該当するものとされています。
- 現金(キャッシュ)
- 他の企業の持分金融商品
- 以下のいずれかを受け取る契約上の権利
- 現金または他の金融資産を受け取る権利
- 金融資産・負債を、潜在的に有利な条件で他の企業と交換する権利
- 企業自身の持分金融商品で決済される(または決済される可能性のある)特定の契約
セキュリティトークンが金融商品となる可能性があります。
1. 金融商品となる条件
- 保有者と発行者の間に契約関係が存在すること
- その契約が明確な経済的影響をもたらすこと
- 当事者がその影響を回避する裁量がほとんどないこと
2. セキュリティトークンの具体例
- 資産や事業体の将来の利益の一部を受け取る権利
- キャッシュフローを受け取る権利
- 配当や利息に類似した経済的便益を受け取る権利
3. 重要なポイント
- 法的な契約書の存在は必須ではない
- スマートコントラクトによる自動執行も契約関係として認められる可能性がある
- 経済的実質に基づいて判断する
4. 処理方法
- FRS32で金融資産の定義を満たすか判断
- 満たす場合はFRS109に基づいて認識・測定
一方、以下のトークンは通常、金融商品の定義を満たしません。
- ユーティリティトークン(サービス利用権)
- 単なる支払手段としての暗号通貨
- 実物資産への直接的な所有権を表すアセットトークン
3. 測定と評価
- 公正価値での測定が推奨される
- 活発な市場がある場合は、市場価格を参照する
- 活発な市場がない場合は、レベル2・3のインプットを使用する
4. 開示要件
- 保有目的や評価方法の開示
- 公正価値測定に使用した手法とインプットの開示
- 重要な判断や見積りの開示
5. シンガポールにおける規制
- MAS(シンガポール金融管理局)による規制
- 証券法の適用対象となる可能性
- マネーロンダリング防止の規制対象
6. 重要な注意点
- 個々の暗号資産の性質を慎重に評価する必要性があります。
- 適切な会計処理の選択には、専門家の助言が推奨されます。
- 継続的なモニタリングと評価の必要性があります。