中国 中国会計税務
[中国会計税務] 実務基礎知識1(発票の基礎知識2)
■ 発票の種類(続き)
前回の記事では、発票の種類は無数にあり記憶することは難しい旨を紹介しましたが、現地法人の管理においては、発票に二種類の分類があることは覚えて頂く必要があります。
(1)増値税専用発票
現地法人では、商品販売やサービス提供を行った際に、当該「増値税専用発票」を発行していることが一般的です。本発票は「商取引行為の実在証明書(詳細は前月号参照)」として請求書や領収書としての役目を果たすと共に、普通発票にはない機能を兼ね備えています。
商品購入やサービスを受けた際に受領する増値税専用発票は、自社売上増値税計算額との相殺、増値税輸出還付の申請を行うための証憑として利用します。なお、商品やサービス代金を支払った場合にも、自社宛の増値税専用発票が発行されない状況では、増値税の相殺や還付は認められないため、増値税専用発票を適宜に受領することは増値税負担の抑制や資金繰りに直結するため、現地法人管理における大変重要な証憑となります。
なお、増値税専用発票は、は全ての企業や商店が発行出来る訳ではなく、一定規模の売上に満たない事業者は、小規模納税人と判定され増値税専用発票を自社で発行することは認められません。また、“増値税”専用発票ですので、増値税の課税取引に当たらないホテルでの宿泊やレストランでの食事では、事業者の規模に関わらず増値税専用発票は発行されません。当社のような会計事務所やコンサルティング会社も、従来は営業税納付企業として増値税専用発票は認められていませんでしたが、目下のところ進められている営業税から増値税への改革に伴い、今では増値税専用発票を発行しています。本税制改革は現在も進行中ですので、今後も増値税専用発票の利用は増えることになります。
(2)普通発票
増値税専用発票以外の発票は、普通発票と考えて下さい。普通発票には旅客運輸専用発票や定額発票、通用発票等、発行事業者の業種や組織形態により多数の種類があります。普通発票も合法な発票であるため、原価費用の精算等に用いることが出来ますが、商品購入等の増値税取引において取得した発票であっても、売上増値税との相殺や輸出還付を行うことは認められません。
■ どの種類の発票を取得するか?
現地法人での物品購入やサービスを受ける場合には、増値税専用発票を受領するようにして下さい。そして、相手先が増値税専用発票の発行資格を有していない、或いは増値税課税取引でないといった場合には普通発票を要求します。また、普通発票もないので手書き領収書やレシートで良いかとなる場合には………、発票を発行するよう説得して下さい。なお、同一金額の物品を購入した場合に、受領する発票の種類によって、企業決算は以下のように異なります。
商品を50,000元で購入する:
① 増値税専用発票
50,000元÷(1+税率17%)=42,735元
→ 実質の商品代金は42,735元であり、代金42,735元に税率17%を乗じた7,265元部分は控除や還付を行うことが可能です
② 普通発票
支払代金50,000元が会社の原価費用となります。
同じ物品を購入する場合でも取得する発票によって事業者の負担には大きな違いがあるので、取引先より普通発票の発行が提示される場合には、増値税負担を考慮した仕入金額の決定を検討頂く必要があります。
なお、現地法人が増値税専用発票の発行事業者でない場合には、増値税の相殺や輸出還付が元来認められないため、どちらの発票を取得しても税負担額に変化はありません。また、以下の取引に対しては、資格の有無を問わず増値税専用発票の発行が禁止されているため、普通発票が利用されます。
① 個人消費者に対する貨物販売や課税役務提供
(皆様の個人的な買物で増値税専用発票を発行してもらうことは出来ません)
② 固定資産の売却で2%の税率を採用する場合
③ ファイナンス・リース取引にかかる一部決済
④ 増値税が免税とされる国際貨物運輸代理サービス