中国 粤港澳大湾区

中国本土と香港の緊密な経済連携取り決め(CEPA) 2024年 サービス貿易協定

本土と香港の緊密な経済連携取決め(Mainland and Hong Kong Closer Economic Partnership Arrangement, CEPA)は、2003年に締結されて以来、貨物貿易、サービス貿易、投資、経済技術合作協議の4つの枠組みで、香港企業、香港住民に対する中国市場開放を年々進めてきましたが、今般2024年10月9日に締結され、2025年3月1日より新たに実施される内容について簡単に紹介します。

一、サービス貿易の概要

サービス貿易協議では、WTO区分による160領域の内、153領域において、ポジティブリストとネガティブリストの両形式により参入開放と制限が規定されています。CEPA以外で規定された開放措置は全て香港・マカオ企業に適用されることになっています。CEPA制度の下、実態を有する香港企業は香港工業貿易署にて登録後、香港サービス提供者の証明を取得するほか、香港の自然人(中国公民)が直接サービス提供する方式等の開放措置が採られています。

二、新たな市場開放措置

14の領域で新たな開放措置が発布されていますが、政府発表で主な措置が以下の通り紹介されています。

建築・エンジニアリングサービス

  • 香港産業測量企業が届出手続きを通じて広東省で開業しサービス提供が可能
  • 届出手続済の香港工程建設諮詢企業が、コンソーシアム形式で粤港澳大湾区の9市におけるプロジェクトコンサルティングサービスを提供できる。

映画

  • 香港サービス提供者に対する映画製作投資制限を撤廃し、両地の映画産業の共同発展を推進する。
  • 香港サービス提供者が内地主管部門の認可を経て映画配給会社を設立し、買取形式により誘致する香港映画の配給業務を認める。この措置は香港映画業界の内地での業務発展範囲拡大の一助となる。

テレビ

  • 香港の人員がネット配信のドラマの製作者となる人数制限を撤廃し、ドラマ製作参画を柔軟にし、両地のテレビ産業協力を促進する。
  • 香港製作ドラマがラジオテレビ総局の認可後内地にてラジオテレビ局のゴールデンタイムに放映することを認め、香港テレビドラマの内地市場への参入余地を更に拡大し文化の融合を推進する。

旅行

  • 香港から入境する外国ツアー客の広東省滞在144時間ビザフリー政策について、イミグレや滞在区域を広東省全域にするなどの実施を進める。
  • クルーズ船事業を行う企業に対し、内地クルーズ港に寄港する国際航路を法的に支援する。このようなクルーズ船に搭乗する内地顧客はトランジット方式で香港を訪れ、全航路乗船することができる。

金融

  • 香港金融機構による保険会社への出資時、直近年度末の総資産額20億米ドル以上の要求を撤廃し、参入のハードルを引き下げる。
  • 香港サービス提供者が設立する外国銀行支店のカード業務制限を撤廃する。
  • 相互投資範囲の拡大を検討する。REITs(不動産投資信託基金)のクロスボーダー業務試行を継続推進。内地と香港ETF推進、「南向通」「北向通」業務推進。更に両地の資本市場の共同発展を促進し、香港の国際金融センターとオフショア人民元業務センターの地位を強化する。

電信

  • 香港サービス提供者の内地で全世界使用可能なSIMカード販売事業の制限を撤廃する。

  

三、その他の措置

各業種領域の開放措置のほか、制度面で以下の強化措置が行われています。

  • 「港資港法」「港資港仲裁」を香港投資者への便利化措置とする:
    (1) 大湾区試行都市に登録する香港資本企業が、香港或いはマカオの法律を契約に適用することを支持
    (2) 大湾区9市に登録した香港資本企業が、香港或いはマカオを仲裁地として選択することを支持
  • サービス貿易関連の内地の規則の透明度、予測可能性と効率を向上し、国際ハイレベル基準と整合し、企業の市場活動において煩雑な規則を省略し事業コスト負担軽減を確保することが、「当地規則」の承諾として加えられています。
  • 大部分のサービス領域において、香港サービス提供者が香港に企業設立3年後に申請できるという制限を撤廃し、香港のスタートアップ企業がいち早くCEPAの優遇を享受でき、各国企業の優秀人材により香港を通じた内地への事業参入機会を提供できるとしています。