香港 お金の管理

[お金の管理] (1)現金管理

総経理って日本で言えば社長ですよね。会社の長だから、社長。ちなみに日本では会長というのもよく社長の上にいたりしますけど、これもやっぱり 会社の長だから会長なんでしょうか。しかも「会」の字が「社」より上にあるから会長の方が社長より上ということにしますか、なんて理由で決まってたりし て。さすがにここまでくるとこじつけの世界ですが。でも、会社の長だから社長、と呼ぶのはとっても自然な気がします。

中国や香港では会社のことは「公司」と呼びますが、日本で言う社長や会長のことを、公司長や公長、司長なんて呼ばないですよね。社長が総経理 で、会長が董事長、といったところでしょうか。中国の会社の最高機関は董事会ですので董事長と呼ぶのは自然ですが、なんで社長は総経理と呼ぶんでしょう か?

社長は実質的な権利を持っている人です。つまり、中国では実質的な権利の代名詞が「経理」だと考えられてきた、というのが自然な解釈かと思います。「経理」を総て取り仕切っている人が会社の実権を持つ者、総経理なのです!

そこで、総経理のみなさんに質問です。「経理」について総て取り仕切っていますか?「経理」については明るいですか?せめて経理担当者がどんな ことをしているか分かってますか?まさか経理担当者に丸投げで上がってきた資料を本社にそのまま提出して自分は営業に注力!なんてことはないですよね?

内心ドキッとされた方も多いんではないでしょうか。それも無理のない話でしょう。香港や中国に駐在して総経理となられる方は、営業や技術の腕を見込まれて赴任された方が多く、「経理」とは縁遠い経歴の方がほとんどだからです。

な~んだ安心!という方、気が早いですよ。考えてみてください、日本で社長やってる方はすべて経理畑出身ですか?違いますよね。それでも「経理」は分からん!なんて言ってたら日本の会社はみんな潰れてしまいます。社長たるもの、その職責を果たすためにちゃんと「経理」も勉強しているのです。

分かった、それじゃ「経理」って何なんだよ!って方、お待たせしました。これから5回の予定で「経理」のポイントについてお話します。といっても「経理」という言葉は漠然としているのでイメージが湧きにくいと思います。「経理」を「お金の管理」と言い換えたらどうでしょう?総経理が「お金の管理」の責任者だとしたら、会社の実権を持つ者というイメージにピッタリじゃないですか?

前置きがかなり長くなりましたが、今回は現金管理についてお話します。「お金の管理」といってまず思いつくのは現金や預金などの管理ですから、経理経験なんかなくたって簡単です。程度の差こそあれ、誰だって自分のお金の管理はしているのですから。だから今回は当たり前の話ばかりに思われるでしょう。ただ、今回挙げたポイントをご自分の会社に置き換えてチェックしてみて下さい。どのくらい管理できているでしょうか?

さて、まず一般的に思いつくお金としては、大きく分けて(1)ゲンナマの現金と(2)預金の2種類あります。当然ながらどちらも管理しなければなりませんが、それぞれの性質により管理方法にも若干差がでてきます。

(1)現金の管理

預金は目の前に実際のお金があるわけではありませんが、現金は目の前に実際のお金があります。これは同じお金でも大きな違いです。現金には色がついているわけではないので、誰でも使うことができます。これではまずいですよね。ちゃんと財布にしまっておかなければ、泥棒が入って使ってしまいますよ!

そのため、まず①金庫にしまっておかなければなりません。また、金庫の鍵が誰にでも使われるようでは簡単に開けられてしまうので、しまったことにはなりません。鍵も厳重に保管しないと心配です!それでは、鍵を別の金庫に入れて鍵をかける?これではどこまで金庫を増やしても安心できませんよね。そこで②金庫の鍵は暗証番号式にして、暗証番号は限られた者だけにしか教えないことにします。本当ならば総経理以外のものには教えたくないのですが、総経理は忙しい身ですから信頼できる人間にのみ教えるのはやむを得ません。ただし、③暗証番号を知っている人間が会社を辞めたら必ず暗証番号を変更してください。辞めた人間は既に総経理の信頼できる人間ではなくなるからです。とりあえずこれで泥棒の心配はなくなりました。
泥棒の心配はなくなりましたが、お金の出し入れをしただけでは、何に使ったか分からなくなります。こんなどんぶり勘定ではお金はどんどん無くなってしまいます。そこで④現金出納帳をつけて、お金の出入りの内容を記録することにします。また、内容を記録するだけでは間違って書いても後で確かめようがないので、⑤その記録の裏付け資料を保管しておく、ことにします。この裏付け資料は、支払先から発行されたものならばよく分からない場合でも後々支払先に問い合わせることもできるので、⑥支払先から発行されたものを裏付け資料とすることにします。

これで支払内容の記録も残ってるので、安心です。さあ、たまには支払いのチェックでもしてみますか。⑦現金出納帳と裏付け資料の束を見比べてみましょう。ここで裏付け資料がばらばらになってるとチェックに時間がかかりますよね。そのため、⑧裏付け資料は日付順にファイリングしておきましょう。現金出納帳も現金の出入りの順番で記録されているので、裏付け資料も同じように日付順にファイリングしておくと後々のチェックが便利です。また、現金出納帳の残高は必ず実際のお金と一致しているはずですよね。ところが、合ってると思っていてもたまに数えてみると一致してなかったりします。なんでずれているか原因を突き止めたくてもいつずれたのかが分からなければ原因究明は困難です。そのため、定期的に⑨現金を数えて現金出納帳の残高と合っているか確かめましょう。毎日数えてられないという場合でも、最低でも週に1回は数えることにすれば原因究明の手間はかなり減ります。また、今回は総経理が自らチェックしましたが、そんな時間がない場合には、⑩現金出納帳の担当者とは別の人間にチェックしてもらいましょう。担当者本人がチェックしてもなかなか間違いは見つけられないものです。

(2)預金の管理

これで現金の管理は手の内に入れました。これで預金の管理も手の内に入れれば、お金の管理をガッチリと総経理の手に取り戻したことになります。
基本は現金と同じですが、その性質の違いにより異なるところもありますので、それぞれ現金と対比させながらお話していきます。

まず①~③は現金の場合と全く同じです。小切手帳も預金通帳もATMカードも現金と同じですので、同じように大切にしまってください。ただ、ゲンナマ自体は銀行が保管してくれているので、銀行に行って手続きしなければ手に入りません。それだけでも現金よりも安全です。

また、⑤~⑧、⑩については、現金の場合と全く同じです。

つまり、④、⑨が違いがあるところです。現金出納帳をつけなければならなかった現金に対して、預金は銀行が入出金記録をつけてくれることが決定的な現金と預金との差だからです。銀行はバンクステイトメントを毎月送ってくれますので、会社としては、④バンクステイトメントを保管しておけば十分です。そのため、預金の場合には⑨は不要になります。

こうしてみると、現金と預金の管理はほとんど同じですが、よく比べてみると預金の管理の方がより簡単で、より安全です。つまり、どっちで管理してもいいお金は、現金よりも預金で管理した方が管理上は有利だということになります。そうと分かれば、できるだけ現金を手許に持たなくても済むように知恵を絞りますよね!

今回はイメージの浮かびやすい目に見えるお金の管理から説明しました。それぞれの手続きの意味について理解が深まれば、より効率的に管理することができるようになります。必要最低限の労力で、目に見えるお金はガッチリ握りましょう!