香港 M&A
[M&A] 周大福が米ダイヤ企業買収、本土客頼みの金販売から脱却か
宝飾品販売大手の周大福珠宝集団は18日、米ダイヤモンドブランドのハーツ・オン・ファイアを買収すると発表した。買収額は1億5,000万米ドル(約153億円)。買収により、製品ラインアップの拡充を狙う。中国本土の倹約令による消費減退や香港を訪れる本土客の伸び鈍化などが小売業に影を落とす中、本土客頼みの金製品販売への過度な依存から脱却したい思惑もあるようだ。
ハーツ・オン・ファイアの複数の株主と株式取得で合意した。買収資金はすべて手元資金で賄う。
ハーツ・オン・ファイアは1996年設立の高級ダイヤモンドブランド。欧米の富裕層を中心に人気を集めており、現在、世界31カ国に計500カ所以上の販売店を持っている。ジュエリーの売上高のうち、1,000~1万米ドルの商品が全体の75%、残りを1万米ドル以上の商品が占める。2013年12月末時点での売上高は1億480万米ドルだった。
■ラインアップ拡充へ
周大福の鄭家純(ヘンリー・チェン)会長は今回の買収について、「戦略的決定の一つ。高級ダイヤモンドが加わることで、当社の製品ラインアップをさらに拡充できる」と期待感を示した。同社は買収後もこれまでと同様、中華圏市場に軸足を置く。同社広報担当者によると、ハーツ・オン・ファイアの店舗はすでに台湾にあり、今後は周大福のお膝元である香港、そして上海に出店する計画。また買収完了から半年以内には、中華圏にある周大福の店舗内で、店内に専門店が出店する「ショップ・イン・ショップ」や店内に専門のカウンターを設ける「カウンター・イン・ショップ」の形でもハーツ・オン・ファイアの商品を販売する。
官営放送のRTHKが17日伝えたところでは、鄭会長は前日の14年3月期決算発表会でも、小売業の市況見通しが不透明な中で、製品ラインアップの改善などにより、業績を伸ばしていく考えを示しており、今回の買収も同戦略の一環とみられる。同社は売上高に占める金関連商品の割合が65.2%(14年3月末時点)と圧倒的に高い一方、ジェムセットジュエリーは17.6%にとどまっている。
14年3月期決算は、売上高が前年比34.8%増の774億710万HKドル(約1兆円)、純利益が32.1%増の72億7,200万HKドルで大幅な増収増益となった。今年3月末時点の店舗数は2,077店。同社の18日株価は好決算が好材料となり、5.8%上昇して4月10日以来の高値で引けた。(NNA.ASIA)