香港
香港におけるオフショア受動的所得非課税制度(2023年12月更新版)
目次
- 特定の外国源泉(オフショア受動的)所得
- 対象となる収入
- 規制対象の金融事業体に関する除外事項
- トレーダーに関する除外事項
- 対象納税者
- 特定の国外源泉(オフショア受動的)所得の取扱い
- 香港で受け取った収入
- みなし規定の例外
- 例外1: 経済的実体要件
- 例外2: ネクサス要件
- 例外3: 資本参加免税要件
- 例外4: 処分益に対するグループ内譲渡益課税繰延軽減措置
- 持分売却による損失
- 特定の外国源泉(オフショア受動的)所得に係る課税所得の計算
- 二重課税の軽減措置
- 納税者の義務
- 経済的実体要件の遵守に関する税務局局長の事前裁定
- 適用資産範囲拡大の対象となる処分益への経済的実質要件の遵守に関する税務局局長の意見[申請締切は2023年12月31日]
- 特定のオフショア受動的所得に関する詳細情報
- 問い合わせ等
特定の外国源泉(オフショア受動的)所得
最新の国際税務基準においては、ある税管轄区域で優遇税制を享受する納税者は、その税管轄区域内で実質的な経済的実体を持ち、関連する所得及びその税管轄区域での実質的な経済活動との連動性を明確に確立する必要がある。クロスボーダー取引における租税回避と闘い、二重非課税を防止するための国際的な取組みを支援する目的で、香港は、欧州連合(European Union、以下「EU」)が公布したオフショア受動的所得非課税制度に関するガイダンスに従い、オフショア受動的所得非課税(Foreign-sourced Income Exemption、以下「FSIE」)制度を修正することを約束した。
2022年税務(改正)(特定の外国源泉所得に対する課税措置)条例(以下「2022年修正条例」)は、多国籍企業(Multinational Enterprise、以下「MNE」)グループのメンバー(MNE事業体)が、香港において発生し受領する香港外源泉の配当、利子収入、知的財産権に派生する収入(Income derived from the use of Intellectual Properties、以下「IP収入」)並びに事業体の株式持分(パートナーシップ持分を除く)の売却から稼得される収益もしくは利益に対する新たなFSIE制度を導入するために、2022年12月23日に制定され、2023年1月1日から適用されている。
2022年12月にEUは、FSIE制度に関する最新のガイダンス(以下「更新版FSIE制度ガイダンス」)を公布し、FSIE制度の対象となる受動的所得のカテゴリーの1つとして、処分益を明示的に定めている。香港を含むFSIE制度改革が進行中の税管轄区域は、2024年1月からの施行に向けて、当該更新版FSIEガイダンスに従って、オフショアの処分益に対する税務上の取扱いを、2023年末までにさらに修正するようEUから要請されている。
当該FSIE制度を更新版FSIE制度ガイダンスと一致させるために、2023年税務(改正)(特定の外国源泉処分益に対する課税措置)条例(以下「2023年修正条例」)は、2023年12月8日に制定され、当該FSIE制度が改善された。2023年修正条例では、オフショアの処分益に関連する資産の範囲が、あらゆる種類の資産をカバーするよう拡大され、2022年修正条例に基づいて規定されている例外要件、すなわち経済的実体要件、資本参加免税要件並びにネクサス要件は変更されず、あらゆる種類の処分益に同様に適用される。特定の濫用防止規則を条件として、関連当事者間で資産が譲渡される場合に、課税を繰り延べることが可能となるグループ内譲渡益課税繰延軽減措置が新たに導入される。2023年修正条例は、2024年1月1日から施行される。
対象となる収入
特定のオフショア受動的所得とは、以下の日付以降に香港以外の区域で発生した、または香港以外の区域から派生した次の所得のいずれかを指す:
- 2023年1月1日 – 利子収入、配当、IP収入並びに株式持分の売却から生じる処分益
- 2024年1月1日 – 株式持分の売却から生じる処分益を除く処分益
処分益とは以下を指す:
- IP処分益: 知的財産権の売却から稼得される収益もしくは利益; または
- 非IP処分益: 資産の売却から稼得される収益もしくは利益だが、IP処分益は含まれない。すなわち、非IP処分益には、株式持分処分益も含まれる。
財産とは、動産もしくは不動産を指す。解釈及び通則条例(第1章)第3条では、「不動産」並びに「動産」を次のように定義している:
不動産とは、(a)水に覆われているかどうかに関係なく土地; (b)土地内もしくは土地上の建物、権利、権益または地役権; 並びに(c)土地に付随するもの、あるいは土地に付随するものに永久的に固定されているもの。
動産とは、不動産を除くあらゆる種類の財産を指す。
ただし、以下は特定のオフショア受動的所得に含まれない:
(a) 規制対象の金融事業体に発生する利子収入、配当または非IP処分益;
(b) 第14A条(1)以外の優遇条項(税務条例(Inland Revenue Ordinance: IRO)の第19CA上で定義)で規定された税率で、課税所得に対し課税される事業体に発生する利子収入、配当または非IP処分益;
(c) IROの第20AC条、第20ACA条、第20AN条あるいは第20AO条に基づいて、課税所得に関し、課税が免除される事業体に発生する利子収入、配当または非IP処分益;
(d) 船舶所有者であり、IROの第23B上(4AA)の下、当該事業体が稼得した、もしくは当該事業体に発生した関連する所得金額から、除外された免除額を有する事業体に発生する利子収入、配当または非IP処分益; あるいは、
(e) トレーダーである事業体に生じる非IP処分益。
そして、以下に由来する、もしくは付随するものである:
(i) 上記(a)の事業体の場合 – 規制対象の金融事業体としての事業体の事業;
(ii) 上記(b)及び(c)の事業体の場合 – 税制優遇措置または減税措置が適用される課税所得を創出する活動;
(iii) 上記(d)の事業体の場合 – 免除額を創出する活動;
(iv) 上記(a)の事業体の場合 – トレーダーである事業体としての事業体の事業。
規制対象の金融事業体には以下が含まれる:
- 保険業条例(第41章)に準拠して認可された保険会社、ロイズまたは認定されたアンダーライター協会;
- 銀行業条例(第155章)の第2条(1)において定義されている認可された機関; 並びに
- 証券及び先物条例(第571章)の第V部に準拠して認可され、同条例の附表5第1部で定義されている規制対象活動を行う事業体。
規制対象の金融事業体に関する除外事項
特定のオフショア受動的所得には、規制対象の金融事業体に発生し、規制対象の金融事業体としての事業体の事業に起因する、あるいはそれに付随する利子収入、配当または非IP処分益は含まれない。この点に関し、事業体の事業に「付随する」オフショアの利子収入、配当及び譲渡益とは、関連する事業の結果または結果として発生する所得を指す。
例1
認可された証券会社が、外国企業が発行した株式及び社債のポートフォリオを商取引目的で取得した。当該証券会社は、当該ポートフォリオに係る配当及び利息を受け取った。これら配当金及び利息は、香港内で当該証券会社が行った証券取引業務の結果もしくは結果として受け取ったものである。この所得は、当該証券会社の規制対象事業に付随するものであるため、特定のオフショア受動的所得の範囲から除外される。
例2
認可された保険会社は、親会社から香港以外の関連会社にローンを提供するように指示され、このローンに関して利息を受け取った。当該保険会社が香港で行った保険事業の結果もしくはその結果として、当該ローン利息を受け取ったのではない。この所得は、当該保険者の規制対象事業に付随するものではなかったため、特定のオフショア受動的所得の範囲から除外されない。
当該除外措置は、香港で規制対象の金融事業体が実施する以下の活動に起因もしくは付随するオフショアの利子収入、配当または非IP処分益にのみ適用される:
規制対象の金融事業体 | 規制対象事業の活動 |
---|---|
保険会社、ロイズまたは認定されたアンダーライター協会 | 一般に以下を含む保険事業活動: (a) リスクの予測と計算 (b) リスクに対する保険もしくは再保険 (c) 保険に関する顧客サービスの提供 (d) ヘッジポジションの採用 (e) 規制資本の管理 (f) 監督当局への報告書及び申告書の作成 (g) 資産と負債を照合し、将来の保険金支払いに対応するため、上記(a)並びに(b)から発生する収益の投資 |
銀行業条例で定義されている認可された機関(すなわち、銀行、制限付きライセンス銀行または預金受入金融機関) | (a) 以下を含む銀行業務または預金受入業務: (i) オンディマンドもしくは銀行業条例の附表1第1項で指定された期間(すなわち3ヶ月間)以内、またはその期間未満の請求もしくは通知によって、当座預金、定期預金、普通預金あるいはその他の同様の返済可能な口座で、一般の公的資金から受け取ることで、このような金額には、決済システム及び価値貯蓄型電子マネー条例(第584章)の第2条で定義されている価値貯蓄型電子マネーもしくは発行保証金は含まれない (ii) 顧客が振り出したもしくは払い込んだ小切手の支払いまたは回収 (b) 資金調達、信用リスク、通貨リスク及び金利リスクを含むリスク管理 (c) ヘッジポジションの採用 (d) ローン、クレジットもしくはその他の金融サービスの顧客への提供; (e) 規制資本の管理 |
証券及び先物条例の附表5第1部で定義されている規制対象活動行う、証券及び先物条例の第V部に準拠して認可された事業体 | 証券及び先物条例の附表5で指定されているあらゆる種類の規制活動で、現在以下が含まれる: タイプ1 – 証券取引 以下を目的として、他人との合意の締結もしくは締結の申し出、あるいは他人に合意の締結もしくは締結の申し出を誘導する、または誘導しようとすること: (a) 有価証券の取得、処分、申込あるいは引受のために、もしくはその目的を持ちながら; または、 (b) 有価証券の利回りから、もしくは有価証券の価値の変動を参照し、いずれかの当事者に利益を確保すること タイプ2 – 先物取引 タイプ3 – 外国為替証拠金取引 タイプ4 – 有価証券に関する助言 タイプ5 – 先物契約に関する助言 タイプ6 – コーポレートファイナンスに関する助言 タイプ7 – 自動取引サービスの提供 以下の項目に対し、認定された取引所やクリアリングハウスによって提供されるものではなく、電子設備を使用して自動取引サービスを提供すること: タイプ8 – 証券証保証金融資 以下を促進するための財務的配慮の提供: タイプ9 – 資産管理 タイプ10 – 信用格付けサービスの提供 主に以下の信用度に関し(香港もしくはその他の場所において)、公衆への流布または購読による配布のため、またはそれらがそのように流布もしくは配布されるという合理的な期待がある場合: タイプ11 – 店頭デリバティブ取引商品のおける取引またはそれに関する助言 タイプ12 – 店頭デリバティブ取引の顧客へのクリアリングサービスの提供 セントラルカウンターパーティーのメンバーであるかどうかに関わらず、セントラルカウンターパーティー(香港もしくはその他の場所に所在するかどうかに関わらず)を通じて、店頭デリバティブ取引の清算及び決済のために、他人にサービスを提供すること |
トレーダーに関する除外事項
特定のオフショア受動的所得には、トレーダーである事業体に発生し、トレーダーとしての事業に由来する、もしくは付随する非IP処分益は含まれない。トレーダーとは、通常の業務において財産を販売する、または販売を申し出るあらゆる事業体を指す。
源泉地主義課税の原則に基づき、香港で商取引または事業を営む者は、オフショア処分益を稼得する可能性がある。その処分益がオフショア所得であるかどうかは、現行のIRO及び当該利益の基となる取引に広範な解釈指針を適用することによって決定される。
例
香港で証券取引業を営むMNEは、香港に事務所を構え、証券投資ポートフォリオを管理するために特定の従業員を雇用している。当該事業体は、外国証券取引所を通じて株式を売買することにより利益を得た。当該オフショア処分益は当該事業体が運営する証券トレーダーとしての事業から稼得されたものであるため、特定のオフショア受動的所得の範囲から除外される。
対象納税者
多国籍企業(Multinational Enterprise、以下「MNE」)グループが、積極的なタックスプランニング戦略を採用するインセンティブが大きくなり、その結果、税源浸食及び利益移転のリスクが高まることより、当該FSIE制度は、MNEグループのメンバーのみを対象としている。IRO第15H条(1)は、次の通り定義解釈を列挙している:
単語 | 意味 |
---|---|
MNE事業体 | 多国籍企業グループもしくは多国籍企業グループに含まれる事業体である、またはその代理として活動する人格、並びにこれらに除外されない事業体 |
事業体 | 法人(自然人を除く)、またはパートナーシップや信託等の個別の財務元帳を作成し保有する取決め(組合) |
MNEグループ | グループの最終親会社の税管轄区域に所在もしくは設立されていない、少なくとも1つの事業体または恒久的施設を含むグループ |
グループ |
|
特定の国外源泉(オフショア受動的)所得の取扱い
みなし規定
当該FSIE制度の下では、以下に該当する場合、特定のオフショア受動的所得は香港に源泉があるものとみなされ、法人利得税の課税対象となる:
(a) 総収入や資産規模等に関係なく、香港で商取引、専門業の提供、もしくは事業を行っているMNE事業体が香港において所得を受け取っている場合; そして、
(b) 対象納税者がIROの第15K条、15L条、15M条並びに15OA条に規定されている例外要件、すなわち、経済的実体要件(Economic Substance Requirement、利子収入、配当または非IP処分益の場合)、ネクサス要件 (Nexus Requirement、適格IP収入及び適格IP処分益の場合)、資本参加免税要件(Participation Requirement、配当または株式持分処分益の場合)、並びにグループ内譲渡救済措置(処分益の場合)に該当しない場合。
発生年度及び受領年度
特定のオフショア受動的所得がMNE事業体に対して発生しており、その査定年度(すなわち発生年度)において、経済的実体要件、資本参加免税要件もしくはネクサス要件(ケースバイケースで)が満たされている場合、当該所得に対する法人利得税が免除される。MNE事業体がこれら全ての適用除外規定に対し税制適格とならない場合、特定のオフショア受動的所得は、香港のMNE事業体が実際に対象となる所得を香港にて受領する査定年度(すなわち受領年度)において、法人利得税の課税対象となる。ただし、特定のオフショア受動的所得が、グループ内譲渡益課税繰延軽減措置が適用されるグループ内移転から発生する処分益である場合を除く。
源泉地主義課税との相互作用
利益の源泉地の決定は、経済的実体要件の導入によって影響を受けることはない。利益の源泉と経済的実体要件は別々に検討されるものであり、前者は引続き、IROの既存の規定及び判例に基づく広範な指針と原則に基づき、決定される。
IROの他のみなし条項との相互作用
特定のオフショア受動的所得が、IRO第15条もしくは第15F条に基づき課税対象となる場合、その所得は当該FSIE制度の対象外となる。
香港で受け取った収入
特定のオフショア受動的所得は、以下の場合に香港で受領したものとみなされる:
- 収益が香港に送金された、移転されたもしくは持ち込まれた場合;
- 収益が香港で行われる商取引、専門業または事業に関連し発生した負債を返済するために使用される場合; あるいは
- 収益が動産の購入に使用され、その動産が香港に持ち込まれた場合。当該収益は、当該動産が香港に持ち込まれた時点で受け取ったものと見なされる。
みなし規定の例外
MNE事業体が、特定の種類の所得に関し例外要件を満たしている場合、香港で受け取った特定のオフショア受動的所得は課税されない。関連する例外要件は次の通りである:
例外要件 | 特定のオフショア受動的所得 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
利子収入 | 配当 | 処分益 | 一般IP収入(ロイヤリティ) | |||
非IP資産 | IP資産 | |||||
株式持分 | その他 | |||||
経済的実体要件 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||
ネクサス要件 | ✓ | ✓ | ||||
資本参加免税要件 | ✓ | ✓ |
2023年修正条例により、特定の濫用防止規則を条件として、関連当事者間の資産譲渡に関連するオフショア処分益に対する課税の繰延に係るグループ内譲渡益課税繰延軽減措置が導入されている。
例外1: 経済的実体要件
MNE事業体が香港内で受領するオフショア利子収入、配当もしくは非IP処分益は、その所得が発生する査定年度の経済的実体要件が満たされている場合、引続き法人利得税が免除される。
(A) 純粋持ち株会社
意味 | 以下の事項のみを行うMNE事業体:
|
---|---|
経済的実体要件 | MNE事業体は以下の事項を行う必要がある:
|
特定の経済活動 | 他の事業体への出資の保有(資本参加)及び管理 |
(B) 非純粋持ち株会社
意味 | 純粋持ち株会社ではないMNE事業体 |
---|---|
経済的実体要件 | MNE事業体は以下の事項を行う必要がある:
|
特定の経済活動 | 事業体が取得、保有または処分する資産に関して必要な戦略的決定を行い; その資産に関する主なリスクを管理し引き受ける。 |
特定の経済活動のアウトソーシング
経済的実体要件により、MNE事業体は特定の経済活動の一部もしくはすべてを外部委託することが可能である。本文中におけるアウトソーシングには、第三者もしくはグループ事業体へのアウトソーシング、サービス契約の締結、または業務委託が含まれる。なお、特定の経済活動のアウトソーシングは、経済的実体要件を回避するために使用されるべきではない。
アウトソーシング要件
経済的実体要件を満たす目的で、MNE事業体は、次の要件を満たす場合、特定の経済活動を外部委託先の事業体にアウトソーシングすることが可能である:
- 特定の経済活動が外部委託された事業体によって香港で実施されている;
- MNE事業体は、アウトソーシングされた特定の経済活動が、香港の外部委託された事業体によって実行されることを確保するために適切かつ十分な監督を行っている;
- 外部委託された事業体は通常、移転価格規則の適用を条件として、遂行された特定の経済活動に対して、MNE事業体に手数料を請求している;
- 雇用されている資格を有する従業員の数と、香港の外部委託された事業体によって発生した運営費の額が、外部委託された事業体によって行われた特定の経済活動のレベルに見合っている; 並びに
- 外部委託先が複数の多国籍企業にサービスを提供している場合、二重カウントがあってはならない。
特定の経済活動が外部委託されている場合、事務所施設及び人的資源(純粋持ち株会社の場合)に関連する適正テストが満たされているかどうか、または、適格な従業員及び運営費(非純粋持ち株会社の場合)に関連する適正テストが満たされているかどうか、を判断する際に、香港のサービスプロバイダーのリソースが考慮される。
MNE事業体は、サービスプロバイダーが使用するリソースの具体的な詳細を含め、税務申告書上で報告される情報の正確性に対し責任を負う。
外部委託活動に対する適切なモニタリング
アウトソーシングされた特定の経済活動を監督する場合、MNE事業体は、アウトソーシングされた事業体が、香港で関連する活動を実行する能力を持っていることを確認する必要がある。考慮すべき事項は次の通りである:
- アウトソーシングされた事業体が、MNE事業体のために行う特定の経済活動の性質とレベル;
- アウトソーシングされた事業体が、香港でアウトソーシングされた活動を遂行するために十分な数の従業員を雇用しているかどうか;
- アウトソーシングされた事業体が、香港でアウトソーシングされた活動を実行するために十分な金額の運営費を負担しているかどうか;
- アウトソーシングされた事業体がアウトソーシングされた活動に従事するための事務所施設を香港に持っているかどうか; 並びに
- 外部委託先がサービスを提供するMNE事業体の数。
例外2: ネクサス要件
オフショア適格IP収入に関しては、かかる収入が法人利得税から免除されるかどうかの範囲を決定するために、ネクサス要件が適用される。すなわち、適格な知的財産(IP)から得られる所得の特定の部分(適格IP収入)は、法人利得税が免除され、その部分は「例外部分」と呼ばれる。
ネクサスの要件とは
ネクサス要件とは、経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development、以下「OECD」)が、2015年に公布された税源浸食及び利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、以下「BEPS」)に取り組むための行動パッケージ(BEPS行動5報告書)の行動5の下で最低基準として採用したネクサスアプローチを指す。ネクサスアプローチは、OECDの有害な税慣行に関するフォーラム(OECD Forum on Harmful Tax Practices)によって採用され、個々の税管轄区域によって導入されたIP収入に対する優遇税制の有害性を評価している。BEPSに関する包括的枠組みの加盟国であり、IP課税制度を有するすべての税管轄区域は、ネクサスアプローチを採用するか、準拠していない制度を廃止している。
ネクサスアプローチでは、IP資産を開発するために納税者が負担した総支出の割合を適格支出として定義するネクサス比率に基づいて、適格IP資産からの収入のみが優遇税制の対象となる。研究開発(R&D)費の割合は、実質的な経済活動を表す指標であり、優遇税制を享受する収入と、その収入に貢献する支出との間に直接的な関連性があることを確認しようと設計されたものである。
当該FSIE制度の下では、ネクサス要件に関連する規定は、BEPS行動5報告書の第4章に規定されている要件及びガイドラインへの準拠を最もよく確実に保証する方法で解釈される必要がある。
適格IP収入とは
「適格IP収入」とは、(a)適格一般IPから稼得される所得、もしくは(b)適格IP処分益を指す:
「適格一般IP収入」とは、以下に関する適格IPから得られる所得を指す:
a. IPの展示もしくは使用、または展示するもしくは使用する権利(香港内外を問わず); あるいは
b. IPの使用(香港内外を問わず)に直接的もしくは間接的に関連する知識を提供する、または提供することを約束すること。
「適格IP処分益」とは、適格IPの売却から稼得される収益または利益を指す。
適格IPとは
「適格IP」とは、以下を指す:
- 専利条例(第514章)の下で付与された特許;
- 第514章の下で行われた特許出願;
- 版権条例(第528条)に基づくソフトウェア内に存在する著作権; あるいは
- 香港以外の如何なる場所の法律に基づいて付与、出願または存続する上記の知的財産権のいずれか。
R&D比率とは
2022年修正条例における「R&D比率」の定義は、BEPS行動5報告書で言及されているネクサス比率に基づいている。R&D比率は、次の算式に従って計算され、100%を上限としている:
F = QE × 130%QE + NE
公式中:
FはR&D比率を指し;
QEは適格IP収入が関連する適格IPに関して発生した適格R&D支出を指し;
NEは同じ適格IPに関して発生した非適格な支出を意味する。
RR&D比率は、MNE事業体が受け取った適格IP収入の例外部分を計算するために使用される。これは、次の算式に従って決定される:
P = I × F
公式中:
Pは例外部分を指し;
Iは適格IP収入を指し;
Fは適格IP収入に適用されるR&D比率を意味する。
R&D比率を決定するためのRR&D支出とは
所得に関連する適格IPに関するR&D比率を確認する目的で、R&D支出(設備投資を含む)は次のように分類される:
R&D費 | QE* | NE* |
---|---|---|
実施されたR&D活動 | ||
・MNE事業体による | ✓ | |
・非関連者による | ✓ | |
・香港居住者である関連者による | ||
- 香港内で | ✓ | |
- 香港外で | ✓ | |
・香港非居住者である関連者による | ✓ |
* QEには利子の支払い、如何なる土地や建物の支払い、または如何なる建物の改装、追加もしくは拡張及びIPの取得に対する支払いは含まれない。NEには、利子の支払い、如何なる土地や建物、または如何なる建物の改装、追加もしくは拡張に対する支払いは含まれない。
経過措置
経過措置として、MNE事業体は、適格支出と総支出が3年間の移動平均に基づいて計算される比率を適用することが許可されている。これは、納税者がネクサスアプローチの一般原則に準拠しながら、追跡及び追跡要件に適応するための十分な時間を確保することを目的としている。3年間の移行期間の後、MNE事業体は、3年間の平均比率の使用からR&D比率への移行が必要となる。
移行期間は次の通りである:
- 適格一般IP収入の場合 – 2023年1月1日から2024/25年度の査定年度の基準期間最終日までの期間中;
- 適格IP処分益の場合 – 2024年1月1日から2025/26年度の査定年度の基準期間最終日までの期間中。
適格IP収入がMNE事業体に発生し、そのMNE事業体がR&D支出を追跡及び追跡してR&D割合を計算するために十分な記録を保持していない場合、当該経過措置の利用が可能である。読者は、BEPS行動5報告書の付属書Aに記載されている追跡及び追跡のための経過措置の例を参照可能である。
外国源泉の適格IP収入に関して生じた損失
MNE事業体が、査定年度に法人利得税の課税対象となる適格IP収入を受け取り、その収入に関連する適格IPに関して損失を被った場合、損失の適格部分(適格IP収入の例外部分)は、その査定年度のMNE事業体の課税所得との相殺が許容される。相殺されなかった損失部分は、IROの第19C条に従って、その後の査定年度におけるMNE事業体の課税所得に対して、繰り越して相殺することができる。
適格IPによって生じる可能性のある損失には、以下の2種類がある:
- 一般損失: MNE事業体が、査定年度に法人利得税の課税対象となる適格一般IP収入を受け取り、その収入に関連する適格一般IPに関して損失を被った場合、一般損失の適格部分(適格一般IP収入の例外部分に起因しない一般損失)は、その査定年度のMNE事業体の課税所得との相殺が許容される;
- 売却損: 適格IPを香港外での売却により、MNE事業体が被る損失の適格部分は、香港で売却代金を受領した査定年度の課税所得と相殺される可能性がある。ただし、当該規則は、売却によって利益が得られ、香港で受け取った場合、当該利益もしくは当該利益の一部が当該FSIE制度の下で利得税の課税対象となるという条件が適用される。売却損の適格部分は、当該FSIE制度に基づいて利得税の対象となる特定のオフショア受動的所得から得られる課税所得の範囲でのみ相殺することが可能である。
相殺されなかった一般損失または売却損の適格部分の金額は、IROの第19C条に従い、その後の査定年度におけるMNE事業体の課税所得に対して、繰り越して相殺することが可能である。なお、損失の非適格部分は、MNE事業体の課税所得と相殺することは不可である。
特許出願の取下げ、放棄及び拒否の効果
第514章または香港以外の場所の法律の下、特許出願から得られた適格IP収入の例外部分は、ネクサス要件の運用の結果として査定年度に法人利得税を課されず、その後の査定年度において、特許出願が取り下げ、放棄もしくは拒否された場合、所得の除外された部分は、翌査定年度の香港で受け取った特定の外国所得として扱われ、法人利得税の対象となる。
例外3: 資本参加免税要件
資本参加免税要件は、香港で外国源泉の配当または株式持分処分益を受け取ったMNE事業体が免税を申請することを容易にするために、経済的実体要件に代わるものである。
資本参加免税要件の条件
- MNE事業体が香港居住者である、または香港非居住者である場合、外国源泉の配当もしくは株式持分処分益が帰属する恒久的施設を香港に有しており; かつ
- MNE事業体は、外国源泉の配当もしくは株式持分処分益が発生する直前の12ヶ月以上の期間、当該投資先企業の株式持分の5%以上を継続的に保有している。
資本参加免税措置の濫用を防止するために、特定の濫用防止規則を設けている。関連する規則は次の通りである:
スイッチオーバールール(課税条件あり)
- 特定のオフショア受動的所得が株式持分処分益である場合、資本参加免税措置は、その処分益が香港以外の区域(外国の税管轄区域)で同様の適格な課税対象となる場合にのみ適用される。
- 特定のオフショア受動的所得が配当である場合、資本参加免税措置は、次の金額のいずれかが外国の税管轄区域で同様の適格な課税対象となる場合にのみ適用される:
a. 配当; または
b. 配当が支払われる基礎となる利益 - 次の場合、上記合計額は外国の税管轄区域で同様の適格な課税対象と見なされる:
a. その合計額が、外国の税管轄区域において、法人利得税と実質的に同じ性質の税金(外国税)の対象となる; 並びに
b. その合計額に適用される税率(適用税率)が15%以上であること。 - 適用税率とは、事業所得としての合計額に外国税が適用される、外国の税管轄区域の法人税率を指す。その合計額が発生する時点で外国税が課税対象である場合、適用税率はその時点で適用される外国の税管轄区域の法人税率となる。その合計額が発生する課税期間に外国税が課税される場合、適用税率はその課税期間に適用される外国の税管轄区域の法人税率となる。
- 一般的に適用税率とは、特定のオフショア受動的所得、その基礎となる利益あるいは関連する未実現利益が課税される税管轄区域における法定税率(すなわち、最も高いの法人税率)を指す。この法定税率は、関連する所得もしくは利益に課される実際の税率である必要はない。所得または利益が、税管轄区域の主たる法律で規定されている税率よりも、特例法の下で低い税率で課税されており、その低い税率が実質的な経営活動を奨励する税制上の優遇措置ではない場合、法定税率は、その特例法で規定された最も高い税率でなければならない。所得もしくは利益が複数の税率で外国税の対象(例: 累進法人所得税率)となる場合、適用税率は、その所得に課される最も高い法人税率となる。
- 次の例は、課税対象条件がどのように適用されるかを示している:
状況 | 所得は税管轄区域Aで同様の適格な課税対象となるか? |
---|---|
オフショア配当は、税管轄区域Aで法人所得税が20%の法定税率で課される。 | はい、その所得は税管轄区域Aでは法人利得税と同様の税が実際に課税され、適用税率は15%を超えているため。 |
オフショア配当は、税管轄区域Aでは非課税である。税管轄区域Aの法定税率は20%である。 | いいえ、税管轄区域Aではその所得に対して課税されないため。 |
オフショア配当は、税管轄区域Aで源泉所得税が10%で課されている、税管轄区域Aの法定税率は20%である。 | はい、税管轄区域Aでは法人利得税の法定税率は15%を超えているため。この取扱いは、たとえ税管轄区域Aで10%のみ課税されたとしても該当する。 |
オフショア株式持分処分益は、税管轄区域Aの優遇税制の下で、税管轄区域Aで10%の法人所得税が課される。当該措置は、税管轄区域Aの経済特区内での実質的な経済活動の実行に派生する所得に対する、特別な優遇税制である。税管轄区域Aの法人所得税の法定税率は20%である。 | はい、当該優遇税制は、税管轄区域Aの経済特区内での実質的な経済活動の遂行に対する、特別な優遇税制であり、税管轄区域Aの適用税率(法人所得税の法定税率)は15%を超えているため。 |
オフショア株式持分処分益500万香港ドルは、累進課税制度の下で税管轄区域Aの法人所得税が課せられる。この制度の下では、最初の200万香港ドルの所得は10%で課税され、残りは20%で課税される。 | はい、その所得に適用される最高の法人所得税率が15%を超えているため。 |
MNE事業体が資本参加免税要件を満たしているが、オフショア配当または香港で受け取った株式持分処分益に関する課税条件を満たしていない場合、当該収入に関して利用可能な税控除は、全額免除方式から税額控除方式に切り替えられる。言い換えれば、MNE事業体は、関連する収入に関係なく、引き続き法人利得税の対象となるものの、関連する収入及び基礎となる利益/収益に対して支払われた外国の法人所得税が控除される。
アンチハイブリッドミスマッチルール
特定のオフショア受動的所得が配当であり、香港以外の区域における配当の基礎となる利益に対して課税される場合、資本参加免税措置は、投資先企業の税額を計算する際に配当が控除できる範囲では適用されない。
主要目的ルール
- 税務局局長の意見として、取り決めを締結する主たる目的、または主たる目的の1つが、法人利得税の納付義務に係る税制上の優遇措置を取得することである場合、資本参加免税措置は適用されない。
- 経済的現実を反映する正当な商業的理由に基づいていない取り決めまたは一連の取り決めは、非正規と見なされる。
- 上記の「主たる目的の1つ」への言及は、税制上の優遇措置を取得することが、特定の取り決めの唯一もしくは主要な目的である必要はないことを意味する。取り決めには複数の主たる目的がある場合があり、たとえそれが主要な目的ではなかったとしても、そのうちの少なくとも1つが税務上の優遇措置を享受できれば十分である。以下を含む、関連するすべての事実及び状況が勘案される必要がある:
- 配当が支払われる基礎となる利益;
- 取り決めが構築された方法;
- 取り決めの条件;
- 取り決めが実行される方法;
- 取り決めが達成しようとした、もしくは達成した結果;
- 取り決めの非課税目的、及び非課税目的を達成できる代替方法;
- 取り決めの形式(すなわち、取り決めから生じる契約上の権利及び義務)並びに実質的内容(すなわち、実際的及び商業的な最終結果);
- 取り決めにおける各事業体の機能、資産及びリスク; そして、
- 同様の取り決めを締結する、独立した人格間で通常発生される契約上の権利と義務、並びに通常締結される商業的及び金銭的関係。
例外4: 処分益に対するグループ内譲渡益課税繰延軽減措置
- 2023年修正条例では、特定の濫用防止規則を条件として、関連当事者間の資産移転から生じる税金を繰り延べるため、グループ内譲渡益課税繰延軽減条項が税務条例に導入された。当該例外は2024年1月1日から有効となる。
- 以下の条件を満たす場合、グループ内譲渡益課税繰延軽減措置が適用される:
(a) 売り手事業体は、香港内で処分益である特定のオフショア受動的所得(対象所得)を受領する;
(b) 当該所得の基となる売却(対象売却)がグループ内譲渡である;
(c) 対象売却に関連する財産(対象財産)が主体(買い手事業体)によって取得される; そして、
(d) 売り手事業体と買い手事業体の両方が、IROに基づいて対象売却の時点で、利得税を課される。 - 当該軽減措置の効果は以下の通り:
- 売り手事業体は、対象財産を損益が生じない対価で売却したものとして取り扱われる;
- 買い手事業体は、売り手事業体と同じ日に同じ対価で対象財産を取得したものとして取り扱われる;
- 買い手事業体は、経費控除及び資本免税額、税額控除の請求、並びに資本参加免税要件またはネクサス要件の遵守を目的として、売り手事業体の立場に立って行動しているものと見なされる。
- 「グループ内譲渡」の意味:
売り手事業体と買い手事業体が売却時に相互に関連付けられている場合、対象売却はグループ内譲渡となる。
- 「関連」の意味:
以下の場合、2つの事業体は互いに関連している:
(a) 一方が他方に対して関連する利害関係を有する; もしくは
(b) 第三者の事業体がそれらの両方に対して関連する持分を保有している。
以下の条件が満たされる場合、ある事業体(事業体A)は別の事業体(当事者B)に関連する持分を有する:
(a) 事業体Aは、事業体Bに対するもしくは事業体Bに関連した、直接的もしくは間接的な受益権の少なくとも75%を保有している; または
(b) 事業体Aは、直接的または間接的に、事業体Bにおける、もしくは事業体Bに関連する議決権の少なくとも75%を行使する、あるいはその行使を管理する権利を保有している。
関連持分には、発行済み株式資本だけでなく、パートナーシップ、信託並びにその他の所有権も含まれる。 - 濫用防止規定
当該軽減措置の濫用を防ぐために、適切な保護措置と租税回避防止規則が導入されている。グループ内譲渡益課税繰延軽減措置は、対象所得に関連する売却後、2年以内に何れかの自体が発生した場合、適用されなくなる:
(a) 売り手事業体もしくは買い手事業体は、IROに基づいて利得税を課せられない; または
(b) 売り手事業体と買い手事業体との関係が終了する。
香港で商取引、専門業の提供または事業を行っている営む者は、そのような商取引、専門業の提供または事業から香港で生じる、または香港から稼得される利益に対して課税対象となる。香港で商取引、専門業の提供または事業を終了した場合、その者はIROに基づく利得税を課されることはない。
例1
HK社は、F税管轄区域の居住者であるF社の完全子会社である。HK社とF社はともに香港で事業を営んでいる。F社は2025年1月1日に香港での事業を停止した。これにより、F社はIROに基づく利得税の課税対象から外れることとなる。
例2
HK1社は、HK2社の所有権を100%保有している。2025年2月1日、HK1社は、HK2社の所有権を個人Aに売却した。HK1社とHK2社、2025年2月1日に相互の関係を終了した。
持分売却による損失
MNE事業体が香港以外の区域における財産(適格IPを除く)を売却した際に被った損失は、香港でその売却代金が受領された査定年度の課税所得との相殺が可能となるケースがある。しかしながら、売却から得られた利益が香港で受領された場合に適用され、その利益は当該FSIE制度の下で法人利得税の課税対象であることが、この規則適用の条件となる。
相殺されなかった損失額は、IROの第19C条に従い、その後の査定年度におけるMNE事業体の課税所得に対して、繰り越して相殺することができる。
当該損失は、関連する課税所得が、当該FSIE制度の下で法人利得税の課税対象となる特定のオフショア受動的所得から得られる範囲でのみ相殺することができる。
特定の外国源泉(オフショア受動的)所得に係る課税所得の計算
特定のオフショア受動的所得が、香港で受領した査定年度に課税対象となる場合、当該所得の創出において発生した支出もしくは費用は、いずれの査定年度についても控除されていない限り、受領した査定年度に発生したものとして控除することが可能である。
特定のオフショア受動的所得の創出に関連する所得控除額もしくはバランシングチャージもまた、香港で当該所得が受領される査定年度のMNE事業体の課税所得を計算する際に考慮される。
二重課税の軽減措置
MNE事業体が、法人利得税の課税対象となる外国源泉所得を特定し、香港以外の区域において法人利得税と実質的に同じ性質の税金(類似する租税)を支払った場合に、その区域が香港との二重課税防止協定(Comprehensive Avoidance of Double Taxation Arrangement、以下「CDTA」)に署名しているかどうかに関係なく、二重課税の軽減措置を受ける権利がある。税額控除の上限は、支払われた外国税と同じ所得に対して支払われるはずだった法人利得税のうち、いずれか低い方となる。
CDTAに基づく税額控除
CDTAが締結された香港以外の区域(CDTA区域)で特定のオフショア受動的所得に対して支払われる同様の税金については、関連するCDTAに基づく二国間の税額控除が、MNE事業体が香港居住者である場合に付与される。
CDTA区域と非CDTA区域で支払われた外国税を一貫した取り扱いで調整するため、外国源泉の配当が支払われた基礎となる利益に関して、CDTA区域で支払われる同様の税金が二国間の税額控除として認められない場合、外国源泉の配当にかかる法人利得税に対する片務的税額控除として認められる可能性がある。
片務的税額控除
非CDTA区域の特定のオフショア受動的所得に対して支払われる同様の税金に対して、MNE事業体が香港居住者である場合、片務的税額控除が適用可能である。許可された税額控除は、関連する特定の国外源泉所得に対して支払われるべき法人利得税と相殺される。すなわち、香港で受け取った所得に対して片務的税額控除が提供される。また、特定のオフショア受動的所得が当該FSIE制度の下で、法人利得税を免除されている場合、あるいは非CDTA区域で納付した税金が特定のフショア受動的所得と関係がない場合、当該税額控除は認められない。
特定のオフショア受動的所得が配当である場合、税額控除は、配当に対して支払われる外国税だけではなく、配当が支払われる被投資企業の基礎となる利益に対して支払われる外国税についても認められる。MNE事業体は、配当が分配される時点で被投資企業の株式持分を少なくとも10%保有していることを条件とし、当該措置を利用可能である。
経費として差引控除
MNE事業体が香港居住者ではない場合、香港において法人利得税が課される特定のオフショア受動的所得に対して支払われた外国税は、IROの第16条(1)(ca)に基づく費用控除として認められる可能性がある。
納税者の義務
MNE事業体は、次の事項を行う必要がある:
- 特定のオフショア受動的所得を、税務申告書及びその所得が発生した査定年度の所定のフォームで申告;
- 課税対象となる特定のオフショア受動的所得の金額を、その所得が香港で受領された査定年度の税務申告書及び所定のフォームで申告;
- 該当する査定年度の税務申告書が発行されていない場合、香港で当該所得が受領される査定年度の基準期間終了後4ヶ月以内に、法人利得税が課されることを税務局局長へ書面で通知;
- 第514章もしくは香港以外の区域の法律に基づいてなされた特許出願が撤回、放棄または拒否され、適格IP収入の例外部分が、査定年度の前年度における法人利得税の課税対象とはならないと見なされた場合、査定年度の基準期間終了後4ヶ月以内に書面で税務局局長へ通知; 並びに
- 特定のオフショア受動的所得に関連する取引、行為もしくは業務の記録を、それらの取引、行為もしくは業務の完遂後少なくとも7年間の満了日、あるいは香港で対象となる所得を受領した、または受領したと見なされてから7年間の満了日のうち、いずれか遅い方まで保管。
経済的実体要件の遵守に関する税務局局長の事前裁定
税務の明確性を確保し、コンプライアンス負担を軽減するために、当局はMNE事業体に対し、オフショア利子収入、配当及び/または非IP処分益が経済的実質要件を満たしているかどうかについて、事前裁定を取得することを奨励している。
事前裁定の詳細については、ここをクリック。
適用資産範囲拡大の対象となる処分益への経済的実質要件の遵守に関する税務局局長の意見[申請締切は2023年12月31日]
経過措置として、MNE事業体は、2023年修正条例の施行前に、当該修正法案に基づいて規定された追加の資産処分益に関する経済的実体要件の遵守に関する税務局局長の意見(以下「意見」)を申請することが可能である。MNE事業体が、オフショア利子収入、配当並びに/または株式持分処分益に関する経済的実体要件の遵守に関して、既に有利な意見を取得している場合、その取得した意見の対象範囲を、2024年1月1日以降に発生する追加の資産処分益をカバーするよう範囲拡大の申請することも可能である。2024年1月1日に2023年修正条例が施行されると、意見取得の申請及び拡大に関する当該経過措置は終了し、経済的実体要件の適用に関して事前裁定の申請が可能となる。
税務局局長の意見の詳細については、ここをクリック。
特定のオフショア受動的所得に関する詳細情報
税務条例
OECDの資料
EUの資料
問い合わせ等
当該FSIE制度に関してご質問がある場合は、電話番号(852) 2594 1600またはメールtaxpf@ird.gov.hkまで問い合わせが可能である。
原文:Foreign-sourced Income Exemption(2023年12月8日再更新)