香港 移転価格税制

香港・2024年税務(改正)(多国籍企業グループに対するミニマム課税)条例草案が官報に掲載

2024年税務(改正)(多国籍企業グループに対するミニマム課税)条例草案(以下「法案」)が本日(12月27日)付けで官報に掲載された。

同法案は、2021年10月に経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development、以下「OECD」)が公布した国際的な税制改革のフレームワークである税源浸食及び利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、以下「BEPS」)を実施し、2025年からグローバルミニマム課税並びに香港版ミニマムトップアップ課税(Hong Kong Minimum Top-up Tax、以下「HKMTT」)を導入することを目指している。現在、140を超える税管轄区域(香港を含む)が、経済のデジタル化から生じるBEPSのリスクに対処するために、当該改革のフレームワークを採用している。

BEPS2.0においては、年間の連結売上高が7億5,000万ユーロ以上の大規模な多国籍企業(Multinational Enterprise、以下「MNE」)グループ(対象MNEグループ)は、事業を展開するすべての個々の税管轄区域で、少なくとも15%のグローバルミニマム税を納付することが義務付けられる。これにより、大規模なMNEグループが税負担を回避するために、低税率もしくは無税の税管轄区域に利益を移転するインセンティブが減少し、投資を誘致するために法人所得税の引き下げを競う様々な国/地域間によって引き起こされる有害な競争が最小限に抑えられ、より公平な課税環境が創出される。

HKMTTの導入により、香港における対象MNEグループに対する実効税率が15%を下回る場合、香港は当該グループの香港現法からトップアップ税を徴収し、その実効税率を15%に引き上げる権利を有する。そうではない場合、BEPS2.0のルールに従い、他の関連する税管轄区域が、これらの低税率が適用される香港現法に対してトップアップ税を徴収する権利を有することとなる。従って、HKMTTを実施することで、香港の課税権を他の税管轄区域に譲渡することなく保護することが可能である。対象MNEグループはまた、事業を展開する他の関連する税管轄区域において、低税率が適用される香港現法に対するトップアップ税を納付する必要がなくなり、コンプライアンス遵守の負担が軽減される。当該トップアップ税の徴収により、2027-2028年度から香港政府へ年間約150億ドルの税収がもたらされると見込まれている。

香港財経事務及庫務局(Financial Services and the Treasury Bureau)局長のクリストファー・ホイ(Christopher HUI/許正宇)氏は、「国際金融センターとして、また国際社会の責任ある一員として、香港は国境を越えた脱税と闘う国際的な取組みに揺ぎ無く支援してきました。より公正な国際課税環境においては、母国からの強固な支援や「一国二制度」による世界との密接なつながり、簡素で透明性の高い税制、成熟した金融市場、独立した司法制度、近代的なインフラ並びに質の高い人材プールなど、企業や投資を誘致する上での香港の様々な優位性がさらに強調されることになるでしょう。」と述べた。

ホイ氏はさらに、「香港政府は昨年12月から今年3月にかけて、意見公募を実施しました。商工会議所、専門家団体、税務専門家並びにMNEグループなどの関係者が、全体的に我々の法案の提案を指示していることを嬉しく思います。当該法案の起草に当たり、HKMTTの設計、実施スケジュール、税務行政並びにコンプライアンス遵守などに関する関係者の意見も取り入れました。グローバルミニマム課税及びHKMTTの導入に伴い、MNEグループが納税義務をより適切に把握できるよう、香港税務局は技術的なサポートを提供するための専門チームを設置し、共通の懸念事項に対処するオンラインガイダンスを公開する予定です。」と付け加えた。

同法案は2025年1月8日に立法会に提出され、第一読会が行われる予定である。

原文:Inland Revenue (Amendment) (Minimum Tax for Multinational Enterprise Groups) Bill 2024 gazetted、2024年12月27日更新