
香港
予算案
香港・2025-26年度香港予算案
2025/26年度予算案で財政司司長は、下記の税制措置を提案した。当該措置の全ては施行前に、関連する法規の修正を必要としている。
- 2024/25年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額の軽減
- 印紙税100ドルが課される不動産のしきい値の引上げ
- 生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
- 経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
- その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)
当該法案及び実施内容のハイライトは下段に示されている通りである。よくある質問に対する回答(FAQ)及び当該措置が実施された場合に、上記の各項目が如何に納税義務者の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減するかを示す例示も併せて提供されている。
当該措置が実施された場合の給与所得税並びにパーソナル・アセスメントの税額を計算したい方は、香港政府によって提供されている納税額自動計算プログラムを使用することが可能。
目次
2024/25年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減
財政司司長は、2024/25年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額に対し、当該税年度に限定して、1,500ドルを上限とする100%の減税措置を提案した。当該減税措置の実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。
利得税(法人・個人事業)に係る税額控除上限額は、事業単位毎に適用可能である。給与所得税に対する控除上限額は、納税義務者毎に適用可能であるが、夫婦で共同申告(ジョイント・アセスメント)を行う場合は、夫婦単位毎に適用される(すなわち、合計で1,500ドルの控除上限額)。パーソナル・アセスメントにおいて、納税義務者個人もしくは既婚者で配偶者と別々の申告を選択している場合、個々人に対して当該控除上限額が適用される。夫婦単位でパーソナル・アセスメントを選択する場合は、1,500ドルの控除上限額が夫婦単位毎に適用されることとなる。
当該減税措置は、資産所得税には適用されない。賃貸収入がある個人は、パーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。
給与所得税及び利得税(法人・個人事業)それぞれに課税される納税義務者(パーソナル・アセスメントを適用できない場合)は、それぞれの税金に対して当該減税措置を享受することができる。事業収入や賃料収入のある個人でパーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。当該ケースの場合、パーソナル・アセスメントを選択しない場合、享受しうる減税額とは異なる可能性がある。正確な減税額は、ケース毎に判断される。香港税務局は、パーソナル・アセスメントの選択が納税額を減額できるかどうかをケース毎に確認し、最も有利な方法で納税義務者を査定する。
パーソナル・アセスメントの適用を希望する場合、納税義務者は、2024/25年度給与所得税申告書(BIR60)の項目7に記入しなければならない。事業収入もしくは賃料収入がなく、給与所得のみの個人は、パーソナル・アセスメントを選択する必要がない。
当該減税措置は、2024/25年度の税額査定における納税義務者の納税債務を軽減する予定。納税義務者は例年同様、2024/25年度利得税(法人・個人事業)申告書並びに給与所得税申告書を提出しなければならない。関連法案の成立後、香港税務局は、最終査定において当該減税措置を有効とする。当該法案の成立前に発行された2024/25年度の最終税額査定書に関して、香港税務局は当該法案の成立後に再度査定を実施する予定である。これに対し、納税義務者は特段申告や照会を香港税務局にする必要はない。
当該減税措置は、2024/25年度最終税額に対してのみ適用され、同年の予定納税額に対しては適用されない。従って、当該減税措置とは区分して、納税義務者は依然として予定納税額を期限通りに納付する必要がある。既に納付済みの予定納税額は、2024/25年度最終査定額及び2025/26年度予定納税査定額に対する納付に対して充当される。万が一、超過残額がある場合は還付されることとなる。
課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)
評価年度 | 以前(2017/18年度まで) | 現行(2018/19年度以降) | ||
---|---|---|---|---|
香港ドル | 課税所得純額(累進幅) | 税率 | 課税所得純額(累進幅) | 税率 |
第1段階 | 45,000 | 2% | 50,000 | 2% |
第2段階 | 45,000 | 7% | 50,000 | 6% |
第3段階 | 45,000 | 12% | 50,000 | 10% |
第4段階 | ______ | 50,000 | 14% | |
135,000 | 200,000 | |||
残額 | 17% | 17% |
人的及び所得控除各項目
評価年度単位: 香港ドル | 2017/18年度(以前) | 2024/25年度(現行) | 2025/26年度(予定) | |
---|---|---|---|---|
人的控除 | ||||
基礎控除(独身) | 132,000 | 132,000 | 132,000 | |
基礎控除(既婚者) | 264,000 | 264,000 | 264,000 | |
寡婦(夫)控除 | 132,000 | 132,000 | 132,000 | |
子供扶養控除 | ||||
第1子から第9子まで各一人当たり | 100,000 | 130,000 | 130,000 | |
誕生年における追加控除 | 100,000 | 130,000 | 130,000 | |
兄弟(姉妹)扶養控除 | 37,500 | 37,500 | 37,500 | |
父母祖父母扶養控除(1年間のうち6ヶ月間扶養している) | ||||
60歳以上または60歳未満の障害者 | 46,000 | 50,000 | 50,000 | |
55歳~59歳まで | 23,000 | 25,000 | 25,000 | |
付加父母控除祖父母控除(年間を通じて納税者と同居している) | ||||
60歳以上または60歳未満の障害者 | 46,000 | 50,000 | 50,000 | |
55歳~59歳まで | 23,000 | 25,000 | 25,000 | |
障害者扶養控除 | 75,000 | 75,000 | 75,000 | |
自己障害者控除 | 無 | 75,000 | 75,000 | |
所得控除 | ||||
自己学習費用控除 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | |
老人介護施設費用控除 | 92,000 | 100,000 | 100,000 | |
住宅借入金利息控除(扶養子女無/有) | 100,000 | 10/120,000 | 10/120,000 | |
MPF自己負担控除 | 18,000 | 18,000 | 18,000 | |
適格医療保険制度任意負担控除(2019-20年度より追加) | 無 | 8,000 | 8,000 | |
適格繰延(据置)年金MPF任意負担控除(2019-20年度より追加) | 無 | 60,000 | 60,000 | |
住宅家賃控除(住宅不動産無所有が条件、2022-23年度追加、扶養子女無/有) | 無 | 10/120,000 | 10/120,000 | |
生殖補助医療支出控除額(2024-25年度より追加) | 無 | 100,000 | 100,000 | |
寄附金控除=下限100~上限(課税所得総額-所得控除-減価償却費)×35% |
印紙税100ドルが課される不動産のしきい値の引上げ
財務司司長は、2025年2月26日付の発効で、100ドルの印紙税が課される不動産のしきい値を従前の200万ドルから400万ドルに引き上げることを提案した。香港政府は、この提案を実施するために、立法会に2025年印花税(改正)条例草案(以下「法案」)を提出する予定である。行政長官はまた、不動産購入者ができるだけ早く当該措置の恩恵を享受できるよう、当該法案が可決される前に、法律として完全な法的効力を与えるため、公共収入保障条例(第120章)に基づく2025年公共収入保障(印紙税)命令(以下「命令」)を制定した。当該命令に従い、2025年2月26日以降に締結される居住用もしくは非居住用不動産の購入、売却または譲渡に関する文書には、新しい累進幅と税率が適用される。詳細については、従価印紙税及び関連するFAQを参照して頂きたい。
生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
2025/26年度については、①課税対象となる個々の居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1四半期に最大500ドルを免除、②公共交通費用補助計画(Public Transport Fare Subsidy Scheme)により、従前は公共交通機関の月額利用額400ドル以上を対象に月額400ドルを上限、2022年5月から月額利用額200ドル以上を対象に月額500ドルを上限として利用額の3分の1の返金補助を継続していたが、2025年6月より月額利用額500ドル以上を対象に月額400ドルを上限として利用額の3分の1の返金補助となる予定、③総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)や高齢者手当(Old Age Allowance)、高齢者生活手当(Old Age Living Allowance)並びに障害者手当(Disability Allowance)などの各種社会保障給付額を半月分追加給付、などの措置が実施され、これらの他にも市民の生計を支援すべく、逐次政策を策定していく予定である。
経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
2025/26年度に関しては、④課税対象となる個々の非居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1四半期に最大500ドルを免除、⑤ブランディング及び国内市場の更新と開拓のためのBUD基金(Dedicated Fund on Branding, Upgrading and Domestic Sales)及び輸出マーケティング・貿易・産業機構支援基金(Export Marketing and Trade and Industrial Organisation Support Fund)へ15億ドルを投入、⑥AIに関する研究成果の応用技術に力を入れるため、香港人工知能研究開発院(Hong Kong Artificial Intelligence Research and Development Institute)の設立に10億ドルを割当、⑦ポートコミュニティシステムの導入、海事、港湾及び物流関係者間の情報共有を強化や「香港海運港湾発展局(Hong Kong Maritime and Port Development Board)」を設立し、研究、PR及び人材育成のため、2億1,000万ドル以上を割当、⑧「どこまでも旅する(tourism is everywhere)」のコンセプトを推進し、中環、尖沙咀、湾仔及び北角のハーバーフロントに、軽食スタンドなどの飲食施設を設置したり、紅磡駅南側のウォーターフロントや旧桟橋跡地を、大型商業施設、住宅及びヨットクラブを含む新たなハーバーフロントランドマークへと再計画することを検討するなどを盛り込み、香港観光業発展詳細計画2.0(Development Blueprint for Hong Kong’s Tourism Industry 2.0)を実施するため香港政府観光局に12億3,000万ドルを充当、⑨九龍塘の「創新中心(InnoCentre)」をグリーンテックのハブとし、200社以上のグリーンテック企業を招集して2025年半ばに3億ドルの補助計画を開始、香港全域に電気自動車向け急速充電器の設置を推進、⑩1億8,000万ドルを追加し、香港全域に家庭用生ごみスマートリサイクルゴミ箱や生ごみ収集施設を増設、バンカリング(船舶燃料供給)で使用するグリーンメタノール燃料に対する優遇税制を実施、⑪新エネルギーに転換するための基金に関して、電動バス600台分の購入に4億7,000万ドル分と、電気タクシー3,000台分の転換に1億3,500万香港ドルの補助金を確保、⑫北部都会区計画では、河套香港園区における第1フェーズのインフラと公共施設完成の迅速化に37億ドルを確保し、新田科技城(新田テクノポール)における香港サイエンスパークが今年第3四半期に事業計画調査を完了する見込み、鉄道開発における「港深西部鉄道(洪水橋~前海)」の調査及び設計の検討と、年内に北環線支線の詳細な計画・設計を実施予定、⑬2025/26年度土地売却計画に含まれる、鉄道物件開発、市区再建局のプロジェクト、民間開発・再開発計画により、約1万3,700戸分の住宅用地を供給し、商業用地は一旦供給を停止、2026年以降の5年間における公営住宅の供給は19万戸に達する見込みで、民間住宅の供給は、今後5年間で年間1万7,000戸以上が完成予定で、今後3~4年間に約10万7,000戸の新築民間住宅が供給される見込むなどの措置が実施され、これら以外にも土地開発や環境関連などと連動した、住みよい都市を目指した幅広い優遇支援措置が取られる予定である。
その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)
2025/26年度は4年連続の財政赤字になる見込みで、2025/26年度の一般歳入は6,594億香港ドル、支出は8,223ドルで、これに約1,500億ドルの政府債券発行と約541億ドルの政府債券償還を勘案すると、2024/25年度の872億ドルの赤字に続き、最終的に670億香港ドルの赤字予算の見通しとなる。2027/28年度までに香港政府計上支出を累積7%減らすことを含む財政健全化計画として「生産力向上計画(Productivity Enhancement Programme)」の強化を提案し、全公務員の昇給を停止、さらに2027年4月までに公務員を1万人削減する予定である。財源確保に向け、2025年第3四半期から1人当たりの空港旅客出国税を120ドルから200ドルに引き上げる。また、各種人材入境スキームの申請料を1件当たり600ドルとし、滞在期間に応じて徴収されるビザの手数料は600~1,300ドルへと即日増額となる。出入境管理施設を経由する自家用車に課される辺境建設費(施設使用料)を検討(例えば、自家用車1台あたり200ドル)し、さらに税源浸食と利益移転(BEPS2.0)に対応するグローバル・ミニマム課税の導入により、年間150億ドルの税収増加が見込まれる。
2025年2月26日付英語原文(IRD : 2025-26 Budget – Tax Measures)
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