香港 予算案
香港・2024-25年度香港予算案
2024/25年度予算案で財政司長は、下記の税制措置を提案した。当該措置の全ては施行前に、関連する法規の修正を必要としている。
- 2023/24年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額の軽減
- 給与所得税及びパーソナル・アセスメントにおける二段階標準税率制度の導入
- リース物件の原状回復に係る費用に対する税額控除の提供
- 工業用と商業用の建物及び構築物に対する所得控除の請求期限の撤廃
- 商業登記費の値上げと商業登記徴費を2年間免除
- ホテル宿泊税の徴収再開
- 居住用不動産需要管理措置をすべて撤回
- 不動産投資信託基金の譲渡及びオプション・マーケット・メーカーによる証券流通業務に対する印紙税の免除
- 生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
- 経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
- その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)
当該法案及び実施内容のハイライトは下段に示されている通りである。よくある質問に対する回答(FAQ)及び当該措置が実施された場合に、上記の各項目が如何に納税義務者の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減するかを示す例示も併せて提供されている。
当該措置が実施された場合の給与所得税並びにパーソナル・アセスメントの税額を計算したい方は、香港政府によって提供されている納税額自動計算プログラムを使用することが可能。
目次
- 2023/24年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減
- 課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)
- 人的及び所得控除各項目の増額(※従前の項目は前年度より変更無)
- 給与所得税及びパーソナル・アセスメントにおける二段階標準税率制度の導入
- リース物件の原状回復に係る費用に対する税額控除の提供
- 工業用と商業用の建物及び構築物に対する所得控除の請求期限の撤廃
- 商業登記費の値上げと商業登記徴費を2年間免除
- ホテル宿泊税の徴収再開
- 居住用不動産需要管理措置をすべて撤回
- 不動産投資信託基金の譲渡及びオプション・マーケット・メーカーによる証券流通業務に対する印紙税の免除
- 生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
- 経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
- その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)
2023/24年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減
財政司長は、2023/24年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額に対し、当該税年度に限定して、3,000ドルを上限とする100%の減税措置を提案した。当該減税措置の実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。
利得税(法人・個人事業)に係る税額控除上限額は、事業単位毎に適用可能である。給与所得税に対する控除上限額は、納税義務者毎に適用可能であるが、夫婦で共同申告(ジョイント・アセスメント)を行う場合は、夫婦単位毎に適用される(すなわち、合計で3,000ドルの控除上限額)。パーソナル・アセスメントにおいて、納税義務者個人もしくは既婚者で配偶者と別々の申告を選択している場合、個々人に対して当該控除上限額が適用される。夫婦単位でパーソナル・アセスメントを選択する場合は、6,000ドルの控除上限額が夫婦単位毎に適用されることとなる。
当該減税措置は、資産所得税には適用されない。賃貸収入がある個人は、パーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。
給与所得税及び利得税(法人・個人事業)それぞれに課税される納税義務者(パーソナル・アセスメントを適用できない場合)は、それぞれの税金に対して当該減税措置を享受することができる。事業収入や賃料収入のある個人でパーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。当該ケースの場合、パーソナル・アセスメントを選択しない場合、享受しうる減税額とは異なる可能性がある。正確な減税額は、ケース毎に判断される。香港税務局は、パーソナル・アセスメントの選択が納税額を減額できるかどうかをケース毎に確認し、最も有利な方法で納税義務者を査定する。
パーソナル・アセスメントの適用を希望する場合、納税義務者は、2023/24年度給与所得税申告書(BIR60)の項目7に記入しなければならない。事業収入もしくは賃料収入がなく、給与所得のみの個人は、パーソナル・アセスメントを選択する必要がない。
当該減税措置は、2023/24年度の税額査定における納税義務者の納税債務を軽減する予定。納税義務者は例年同様、2023/24年度利得税(法人・個人事業)申告書並びに給与所得税申告書を提出しなければならない。関連法案の成立後、香港税務局は、最終査定において当該減税措置を有効とする。当該法案の成立前に発行された2023/24年度の最終税額査定書に関して、香港税務局は当該法案の成立後に再度査定を実施する予定である。これに対し、納税義務者は特段申告や照会を香港税務局にする必要はない。
当該減税措置は、2023/24年度最終税額に対してのみ適用され、同年の予定納税額に対しては適用されない。従って、当該減税措置とは区分して、納税義務者は依然として予定納税額を期限通りに納付する必要がある。既に納付済みの予定納税額は、2023/24年度最終査定額及び2024/25年度予定納税査定額に対する納付に対して充当される。万が一、超過残額がある場合は還付されることとなる。
課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)
評価年度 | 以前(2017-18年度まで) | 現行(2018-19年度以降) | ||
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課税所得純額 (累進幅)香港ドル |
税率 | 課税所得純額 (累進幅)香港ドル |
税率 | |
第1段階 | 45,000 | 2% | 50,000 | 2% |
第2段階 | 45,000 | 7% | 50,000 | 6% |
第3段階 | 45,000 | 12% | 50,000 | 10% |
第4段階 | 50,000 | 14% | ||
135,000 | 200,000 | |||
残額 | 17% | 17% |
人的及び所得控除各項目の増額(※従前の項目は前年度より変更無)
評価年度 単位:香港ドル |
2017/18年度 (以前) |
2023/24年度 (現行) |
2024/25年度 (予定) |
|
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人的控除 | ||||
基礎控除(独身) | 132,000 | 132,000 | 132,000 | |
基礎控除(既婚者) | 264,000 | 264,000 | 264,000 | |
寡婦(夫)控除 | 132,000 | 132,000 | 132,000 | |
子供扶養控除 | ||||
第1子から第9子まで各一人当たり | 100,000 | 120,000 | 130,000 | |
誕生年における追加控除 | 100,000 | 120,000 | 130,000 | |
兄弟(姉妹)扶養控除 | 37,500 | 37,500 | 37,500 | |
父母祖父母扶養控除 | ||||
父母祖父母扶養控除 | ||||
60歳以上または60歳未満の障害者 | 46,000 | 50,000 | 50,000 | |
55歳~59歳まで | 23,000 | 25,000 | 25,000 | |
付加父母控除祖父母控除 (年間を通じて納税者と同居している) |
||||
60歳以上または60歳未満の障害者 | 46,000 | 50,000 | 50,000 | |
55歳~59歳まで | 23,000 | 25,000 | 25,000 | |
障害者扶養控除 | 75,000 | 75,000 | 75,000 | |
自己障害者控除 | 無 | 75,000 | 75,000 | |
所得控除 | ||||
自己学習費用税額控除年間上限額 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | |
老人介護施設費用控除 | 92,000 | 100,000 | 100,000 | |
住宅借入金利息控除年間上限額 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | |
MPF自己負担控除年間上限額 | 18,000 | 18,000 | 18,000 | |
適格医療保険制度任意負担控除額(※2019-20年度より追加された項目) | 無 | 8,000 | 8,000 | |
適格繰延(据置)年金MPF任意負担控除額(※2019-20年度より追加された項目) | 無 | 60,000 | ||
住宅家賃控除額(住宅不動産無所有が条件)(※2022-23年度より追加された項目) | 無 | 100,000 | 100,000 | |
寄附金控除=下限100~上限(課税所得総額-所得控除-減価償却費)×35% |
給与所得税及びパーソナル・アセスメントにおける二段階標準税率制度の導入
財政司司長は、2024/25年度から与所得税及びパーソナル・アセスメントにおける二段階標準税率制度の導入することを提案した。純所得(人的控除前)が500万ドルを超える納税者の税額を標準税率で計算する場合、純所得のうち最初の500万ドルは引続き15%の税率で計算され、500万ドルを超える部分については、標準税率16%が適用されることとなる。
関連する法規の制定及び施行後、香港税務局は、2024/25年度の予定納税額を計算する際に、当該二段階標準税率制度を適用することとなる。詳細については、FAQ3並びに例示3を参照して頂きたい。
リース物件の原状回復に係る費用に対する税額控除の提供
財政司司長は、2024/25年度から、リース物件をリース前の状態に戻すために発生した費用について、利得税計算時に税額控除を提供することを提案している。当該措置は、実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。
工業用と商業用の建物及び構築物に対する所得控除の請求期限の撤廃
財政司司長は、2024/25年度から、工業用と商業用の建物及び構築物に対する所得控除の請求期限の撤廃することを提案した。不動産の所有権が変わった後も、対象となる不動産の建築費や前所有者のバランシング・チャージなどの要素に応じて、新しい所有者は、引続き当該不動産に対する所得控除(税務上の減価償却費)を請求することが可能となる。当該措置は、実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。
商業登記費の値上げと商業登記徴費を2年間免除
財政司司長は、2024年4月1日から商業登記費を年間200ドルから2,200ドルに引上げることを提案した。係る影響を軽減するために、破産及び賃金未払保障基金へ拠出される商業登記徴費150ドルを2年間免除することが提案されている。
ホテル宿泊税の徴収再開
財政司司長は、2025年1月1日からホテル宿泊税(Hotel Accommodation Tax: HAT)の徴収を税率3%で再開することを提案した。香港政府は当該提案を施行するための法改正案を立法審議会に提出する予定である。当該修正案が採択される場合、四半期毎のHAT申告書は、発効日から開始する四半期の最初の営業日に発行される。最初の四半期HAT申告書を発行後、当該申告書に関するお問合せに対応する専門窓口が、税務中心ビルの3階(税務督促査察課)に設置される。詳細については、ホテル宿泊税並びにFAQをご覧頂きたい。
居住用不動産需要管理措置をすべて撤回
財政司司長は、居住用不動産に対するすべての需要側管理措置を即時解除すること、すなわち、スケール1(第一標準税率)のパート1(第一部)に基づく特別印紙税(Special Stamp Duty、以下「SSD」)、不動産購入印紙税(Buyer’s Stamp Duty、以下「BSD」)または7.5%の従価印紙税(Ad Valorem Stamp Duty、以下「AVD」)を廃止し、本日以降の居住用不動産の売買取引に対するこれら印紙税の納付が不要となることを提案した。香港政府は、この提案を実施するために、2024年印紙税(改正)条例草案(以下「条例草案」)を立法審議会に提出する予定である。不動産購入者ができるだけ早く当該措置の恩恵を享受できるよう、行政長官はまた、公共収入保障条例(第120章)に基づく2024年公共収入保障(印紙税)命令を制定し、当該条例草案は法律として制定され、完全な強制力と法的効力を与えた。立法会による法案の審議及び最終承認を条件として、2024年2月28日以降に締結された居住用不動産の購入、売却または譲渡に関する文書には、SSD及びBSDは課されなくなる。スケール1のパート1での7.5%のAVDの税率は、スケール2でのAVDのレートと同じとなるよう調整される。
詳細については、従価印紙税及び関連するFAQを参照して頂きたい。
不動産投資信託基金の譲渡及びオプション・マーケット・メーカーによる証券流通業務に対する印紙税の免除
財務司司長は、不動産投資信託基金の譲渡及びオプション・マーケット・メーカーによる証券流通業務に関連する印紙税を免除することを提案している。
生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
2024/25年度については、①課税対象となる個々の居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1期に最大1,000ドルを免除、②公共交通費用補助計画(Public Transport Fare Subsidy Scheme)により、従前は公共交通機関の月額利用額400ドル以上を対象に月額400ドルを上限としていたが、2022年5月から月額利用額200ドル以上を対象に月額500ドルを上限として利用額の3分の1の返金補助を継続しており、廃止に言及せず、③総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)や高齢者手当(Old Age Allowance)、高齢者生活手当(Old Age Living Allowance)並びに障害者手当(Disability Allowance)などの各種社会保障給付額を半月分追加給付し、就労家族手当(Working Family Allowance)についても同様の措置が適用、その中でCSSAを受給する障害者に月額500ドルの追加補助金、などの措置が実施され、これらの他にも市民の生計を支援すべく、逐次政策を策定していく予定である。
経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)
2024/25年度に関しては、④香港における大規模イベント開催のために1億ドルを拠出しつつ、花火やドローンを駆使したショーやシンフォニー・オブ・ライツの刷新を含むハーバー・フロントでの飲食・小売・エンターテインメントや質の高い観光サービスの開拓促進に10億9,000万以上を充当、⑤課税対象となる個々の非居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1四半期に最大1,000ドルを免除、⑥「簡単eコマース」の立上げを含めたブランディング、国内市場の更新と開拓のためのBUD基金(Dedicated Fund on Branding, Upgrading and Domestic Sales)へ5億ドルを投入しつつ、中小企業によるデジタル化を援助するため、デジタル化支援パイロット計画(Digital Transformation Support Pilot Programme)の選択を奨励、⑦香港政府のサービスアプリ智方便(iAM Smart)のビジネス版立上げに3億ドルを充当、⑧AIスーパーコンピューティングセンターや量子技術など先端技術分野の基礎研究の強化に30億ドルを割当、⑨大学と研究期間による生命健康科学技術専門研究所の設立援助に60億ドルを拠出、⑩画発展基金(Film Development Fund)に14億ドルと創意智優計画(CreateSmart Initiative)に29億ドルを注入、⑪職業・専門教育の支援に6億8,000万ドルを投入し、雇用主向け奨励金試験計画(Pilot Incentive Scheme to Employers)と定時制専門学生向け助成試験計画(Pilot Subsidy Scheme for Students of Professional Part-time Programmes)を5年間延長、⑫公費の助成を受けていない中等後教育機関による「応用科学大学連盟」設立支援に1億ドル、などの措置が実施され、これら以外にも土地開発や環境関連などと連動した、住みよい都市を目指した幅広い優遇支援措置が取られる予定である。
その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)
2024/25年度においては、環境問題に更に積極的に取組み、⑬脱炭素化の国際基準で高い評価を獲得した香港籍船舶に対する優遇措置に6,500万ドルを割当て、⑭電気自動車に対する減税措置を2026年3月31日まで2年間延長、現在の初年度登録税の減免の上限97,500ドルに対し2024年4月からは58,500ドル、現行の古い車を廃棄し電気自動車に交換する際の還付の上限287,500ドルに対し2024年4月からは172,500ドルに減額、⑮過年度に引続き、元々65歳以上の申請要件が修正され、香港居住者で60歳以上の高齢者を対象とした銀色債券(Silver Bond)も500億ドルが発行され、3年前に発表された、向こう5年間の間で環境配慮型の事業に使途が限定された緑色債券(Green Bond)1,755億ドルの発行のうち、次年度中に200億ドル発行、その他、⑯健康促進を考慮しタバコに対する物品税が1本当たり80セントの増税、⑰2024/25年度の土地売却計画、鉄道物件開発、民間開発・再開発計画及び市区再建局プロジェクトによる住宅用地15,000戸分の8ヶ所、また、商業用地2ヶ所と工業用地1ヶ所において、それぞれ約12万平方メートルと約54万平方メートルの建設用地が供給され、今後5年間で80,000戸以上の民間住宅用地が確保される。2024年以降の5年間における毎年平均の供給件数は約19,000戸強の予定で、向こう3-4年の新たな民間住宅の供給見込みは約10万9,000戸の予定、一方で、約30万8,000戸の公営住宅のための住宅用地が供給される予定である。
2024年2月28日付英語原文(IRD : 2023-24 Budget – Tax Measures)