香港

香港財政司司長による香港企業並びに市民への支援措置の宣布

2019/2020年度第2四半期における香港経済は、顕著な下方圧力に直面しており、ここ数ヶ月で、状況はさらに厳しいものとなっている。外面的には、世界経済の見通しとしては、米中間の貿易摩擦の段階的な拡大、合意なき離脱「ハードブレグジット」による差し迫るリスク、中東における地政学的緊張状態の継続、アジアにおける工業及び貿易活動の低迷、金融市場のボラティリティの顕在化、並びに主要な経済体系全体が不況に陥るとの市場の懸念など、高い不確実性により暗雲が垂れ込めてきている。このような背景に対して、輸出入取引、ロジスティクス並びに関連するセクターは、困難な局面に引続き直面することが予想される。内面的には、最近発生している社会的事件が、小売業、飲食業並びに観光業に打撃を与えており、既に弱体化している経済環境に対してさらに深い傷を負わせ、香港の国際的なイメージにも影響を与えている。目下合計で29ヶ国が、香港に対する様々なレベルでの渡航注意や警告などを公布している。国際的な信用格付け機関も、香港の現況に関して、深い懸念を表明している。香港に来港する旅行者、並びに海外で事業活動に携わり、香港に投資しているビジネスパーソンへの誘因にも影響を与えている。

当該見通しにおける目前の状況及び展望に基づいて、香港経済は、今年の残りも厳しい環境に直面し続けると予想される。そのため、政府としては、2019年度経済全体の実質成長率の伸び率予測を、0%から1%に下方修正することを余儀なくされている。

内外地域の厳しい経済環境に対処すべく、財務司司長のポール・チャン(Paul CHAN/陳茂波)氏は、本日(8月15日)、民間企業、その中でも特に中小企業(Small and Medium Enterprises 、以下「SMEs」)を支援し、雇用を保護し、市民の財政的負担を軽減するための措置パッケージを発表した。

(A) 企業サポート及び就業保護

中小企業は、地場系企業の98%以上及び総雇用の約45%を占めており、我々の経済の礎となっている。中小企業が現在の経済環境における経営圧力に対処することを支援するために、政府として以下の支援策を導入する:

(a) 海運業、物流業、小売業、飲食業、観光業、建設業、農業及び漁業に至るまでの幅広い分野に便益をもたらすべく、12ヶ月間に渡り、27種の政府手数料を免除する。当該項目の全リストは付録Aに記載されている。

(b) 地政総署が管轄する商業及びコミュニティ用途の政府用地の短期借用、食物環境衛生署がリースする公設市場の出店場所、政府産業署によってリースされる飲食店及び小売店、海事処が管轄している公共の貨物積卸区域、魚農自然護理署によって管理されている4ヶ所の政府卸売市場における出店場所及び施設に対し、6ヶ月間50%の賃料減額を提供する。当該項目の全リストは付録Bに記載されている。

(c) 費用回収の原則に基づき、決定されている様々な政府手数料及び料金を、2020年12月31日まで凍結免除する。

(d) ブランディング、国内市場のアップグレード及び拡大のための特別基金(Dedicated Fund on Branding, Upgrading and Domestic Sales、BUD基金)及びSME輸出販売マーケティング基金をさらに強化し、企業によるビジネス機会の探求へより良い支援をすべく、これらの基金に追加資金を再注入する。これによって市場での販売促進、市場開発のために政府や関連機関によって組織された実業視察団への参加を促す。詳細は付録Cを参照。

(e) HKMC Insurance Limited(香港按證保険有限公司)は、中小企業融資担保計画(SME Financing Guarantee Scheme、以下「SFGC」)の下、新たに担保融資保証商品を導入する。政府は、新規事業立上げに興味を持つ個人、運営経験が比較的少ない企業や独自の専門業で開業しようとしている専門家が資金調達するのを支援するため、承認されたローンに対して90%の信用保証を提供する。さらに、SFGSに基づく特別優遇措置(すなわち、政府が承認されたローンに対して80%の保証を提供)の適用期間、並びに昨年導入された3つの優遇措置の有効期間を、2022年6月まで延長する。

(f) 公共のニーズを満たし、建設業界における更なる雇用機会を創出するために、小規模な工事プロジェクトの増加や促進する余地を探り続ける。例えば、「埠頭改善計画」の第2フェーズ実施の予定を早めて推進し、遠隔の村々、景勝地並びに自然遺産への公共アクセスを促進するために、遠隔地における公共埠頭の構造及び施設基準を向上させる。既存の高齢者居住建物修理交付金計画、建物更新キャンペーン、エレベーター近代化補助金計画、並びに火災安全改善工事補助金計画についても、優遇措置を検討する。

(g) 従業員再訓練局は、特別な研修プログラムを設置する予定で、参加者に特別な補助金を提供し、不況により失業している、もしくは不完全雇用されている人々のスキルを向上させ、競争力を高めるのを支援することが目的である。具体的な措置は当局によって別途発表される。

(B) 市民の負担を軽減

市民の経済的負担を軽減するために、政府は次の措置を導入する:

(a) 2018/2019年度の査定年度の給与所得税、パーソナル・アセスメントの下での税額並びに利得税(法人・個人事業)を、2万ドルを上限として75%減税する2019/20年度予算案における提案に対して、さらに上限は2万ドルのままでその料率を100%に引上げることとした。企業を含む約143万の納税者(うち133万の納税者は、該当年度の税額全額が免除される)に対し、合計で約18億4,000万ドルの節税となる。

(b) 社会保障を受給している人々に向けて、総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)、高齢者手当、高齢者生活手当並びに障碍者手当の基給付金額の1ヶ月分に相当する追加給付を実施する。労働者家族手当及び個人申請単位の労働奨励通勤手当の受給者についても、同様の取決めが適用される予定である。当該措置により、約40億ドル支出される。

(c) 2019/20学年度において、香港の幼稚園、小学校及び中学校の生徒に、1人あたり2,500ドルの補助金を提供し、教育費を負担する両親の経済的負担を軽減する。当該措置には23億ドルの支出が見込まれ、900,000人以上の学生が恩恵を享受する。

(d) 香港住宅委員会及び香港住宅協会の公営賃貸アパートに居住している、低所得者及び世帯に対して、1ヶ月分の家賃を支払う。当該措置により約14億ドルの支出となる。

(e) 個々の住宅の電気利用口座に対して、1回限りの2,000ドルの電気料金補助金を提供する。当該措置で約56億ドルの支出となり、270万戸以上の適格世帯が恩恵を受けることとなる。

(f) 公営住宅に居住しておらず、CSSAもまた受給していない低取得世帯(一般に「N持たざる者(N have-nots/N無人士)」として知られる)に対し、1回限りの生活補助金の提供を考慮すべく、關愛(コミュニティケア)基金への招待状を検討する。

(g) 香港住宅委員会、香港空港管理局、建設業議会、香港サイエンスパーク公社並びにサイバーポートもまた、関連する救済措置を策定している。詳細については、関係機関によって個別に発表される予定である。

上記項目の(b)から(e)の支出の詳細は、付録Dに記載されている。

ポール・チャン氏は次の通り述べている:「公共事業を除いて、企業を支援し、市民の経済的負担を軽減するためのこの一連の支援措置にかかる費用は、合計で約191億ドルと推定される。2019/20年度政府予算案で発表された、429億ドルの一時的救済措置と合わせて、我々の経済に勢いを吹込み、企業や市民が、困難な経済環境から生じる課題に対処するのに役立つ。」

(C) 実施のタイミング

上述27種の政府手数料の免除案のうち、19種については、附属法例の改正が必要となる。最初のレビュー及びその後の審議を進めるべく、2019年10月に関連する附属法例法案を立法会に提出する。

一部の支援措置については追加のリソースが必要となり、政府は可能限り迅速に追加資金承認を得るため、立法会に申請する。

上記の更なる減税措置に係る提案を実施するため、政府は2019年10月中に、「2019年税務(改正)(減税措置)条例草案」を提出する予定である。2018/19年度の税額査定通知は、立法会による関連法案の可決後、税務局によって発行される予定である。

「関係当局部門は、民間企業、特に中小企業と市民が早期に便益を享受できるよう、上記の一連の措置実施を全速力でフォローアップする」とチャン氏は述べている。

原文、2019年8月15日更新)