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[香港労務] 香港の《雇用条例》に基づく雇用契約終了及び解除
香港における雇用契約の終了、解除、雇用保護、並びに解雇補償金と長期服務金については、香港の《雇用条例》に規定されている。
1.雇用契約の終了及び解除
雇用条例においては、以下の理由のいずれかを証明すれば、従業員の解雇或は雇用契約条項の変更に対する正当な理由と認められる。
1.従業員の行為
2.従業員の業務において必要な能力或は資格
3.法令の規定
4.その他の実質的な理由
以下の状況の場合に、従業員を解雇するのは違法とされている。
1.妊娠が既に証明され且つ雇用主に通知を提出した場合
2.有給病気休暇期間中の場合
3.従業員が《雇用条例》を執行して、労災事故或は業務安全法規違反により行う法律手続中に証拠を提供する、或は聞き取りを行う公職者に対し資料を提供する場合
4.労働組合に参加した、或は労働組合の活動に参加した従業員
5.労災の補償協議が未了の時点、或は関連の評価証明書の発行前の時点
雇用主或いは労働者が雇用契約を終了する場合は、相手側に対し一定の予告期間を与えるか、もしくは予告に替わる支払いを行うことが必要となる。
・雇用契約終了時の予告期間と予告に替わる支払い
雇用状況 | 予告期間 | 予告に替わる支払い | ||
---|---|---|---|---|
試用期間中 | 試用期間1ヶ月以内 | 不要 | 不要 | |
試用期間1ヵ月後 | 雇用契約に規定のある場合 | 雇用契約通り、但し7日以上前通知 | 予告期間の給与相当額 | |
雇用契約に規定の無い場合 | 7日以上前 | 少なくとも7日間分の給与相当額 | ||
試用期間無し / 試用期間後 | 雇用契約に規定のある場合 | 雇用契約に従うが7日以上前 | 予告期間の給与相当額 | |
雇用契約に規定の無い場合 | 1ヶ月以上前 | 少なくとも1ヶ月分の給与相当額 |
予告通知を行わない場合の支払い給与額は、雇用契約終了日前12ヶ月の1日/1ヶ月平均給与額を使用するものとし、この計算時、給与を満額で支払わなかった(1)期間(休日、法定休日、有給休暇、病気休暇、出産休暇、労災による休暇及び雇用主が同意した休暇)、並びに(2)当該期間に支払った金額を除いて計算することとされている。
・ 雇用主、従業員それぞれの即時雇用契約解除条件
(予告通知無し、及び予告通知に替わる支払い無し)
雇用主が予告通知無く、また予告通知に替わる支払いも無く即時に雇用契約を解除できるのは、厳重な規律処分であり、厳重な過失や、警告を多数行なっても改善が見られない等の場合に適用できるとされている。ストライキは即時解除可能とは認められない。
即時解雇可能な条件
雇用主 | 労働者 |
---|---|
*不正・詐欺行為 *常習的な職務怠慢 *労働者が合理的な命令に従わない場合 |
*雇用主による虐待 *暴力或いは傷病から身体に危害が加わる恐れがあるという正当な理由がある場合 *同一の雇用主の下、連続して5年以上勤務したもので登録医師から当該労働者が永久に現在の職務に適さないと診断書が発行された場合 |
雇用主が雇用契約を解除する時或は雇用契約の期間満了時、雇用期間、契約条項及び雇用契約終了理由等に基づき、未払いの給与や未取得分の休暇の買い取り、その他雇用契約に規定する金額を雇用契約終了日或は契約期間満了日から7日以内に従業員に支払わなければならない。
2. 雇用保護
・雇用条例には雇用主に不当・違法に解雇された、或は契約条件を変更された従業員が請求できる雇用保護の条件を以下の通り定めている。
状況 | 条件 | 補償 |
---|---|---|
不当な解雇 | ①継続的雇用契約に基づき24ヶ月以上雇用され、 ②雇用条例に規定された理由以外の理由により解雇された場合。 |
復職・再雇用或は雇用終止金 |
雇用契約条項の不当な変更 | ①継続的雇用契約に基づき雇用され、雇用契約状権が労働者の同意なしに変更され、 雇用契約にそのような変更が明文化されていない場合。 ②雇用条例に規定された理由以外の理由により、雇用契約の条件が変更された場合。 |
|
不当・違法な解雇 | ①雇用条例に規定される正当な理由以外の理由で解雇された場合。 ②違法解雇とされる条件に該当する場合 |
復職・再雇用或は雇用終止金及び/或は最高15万香港ドルの補償金 |
従業員による補償の請求は、解雇されたか或は契約条項の変更発効後3ヶ月以内に、雇用主に対し書面にて通知しなければならない(十分な理由があると労工処所長が認める場合は6ヶ月)。
補償の内容には、復職、再雇用、或は雇用終止金及び補償金がある。労資審裁処により裁定される場合、労資双方の同意の基で復職と再雇用の命令を出し、この場合雇用年数は中断されたと見なされない。雇用終止金には(1)《雇用条例》にその享受が規定され解雇時に未取得である権益 (2)雇用を継続していたら《雇用条例》に基づき享受することが見込まれる権益 (3)雇用契約に規定されるその他の金額 が含まれる。補償金は15万香港ドルを上限とし、労資審裁処により解雇時の状況を審査され決定される。
性別、障害、家庭状況や人種の差別による解雇時の補償請求はそれぞれ《性別差別条例》《障害者差別条例》《家庭状況差別条例》《人種差別条例》に規定があり、これに従う。
3. 解雇補償金・長期服務金
次の状況の場合に従業員は解雇補償金・長期服務金のいずれかの受給資格があるとされる。
解雇補償金
雇用期間 | 条件 |
---|---|
継続的雇用契約に基づき、24ヶ月以上雇用されている。 | ・リストラを理由に解雇された場合*1。 ・雇用期間が定められた雇用契約の終了後にリストラを理由に契約継続しない場合。*1 ・一時解雇もしくは推定解雇にあたる場合。 ・操業停止の場合。 |
長期服務金受給資格
雇用期間 | 条件 |
---|---|
継続的雇用契約に基づき、5年以上雇用されている。 | ・ 解雇された場合(労働者の過失による即時解雇・余剰人員整理のための解雇を除く)。 ・雇用期間が定められた雇用契約の終了後に、契約継続しない場合。*2 ・労働者の死亡 ・労働者が健康を理由に辞職した場合*3 ・65歳以上の労働者の辞職。 |
*1: 雇用主が契約終了日或は契約期間満了日の7日前までに書面で従業員に継続契約或は新契約の締結を要求し、従業員が合理的な理由無く拒む場合、従業員には解雇補償金を受給する権利は無い。
*2: 雇用主が契約期間満了日の7日前までに書面で従業員に継続契約或は新契約の締結を要求し、従業員が合理的な理由無く拒む場合従業員には長期服務金を受給する権利は無い。
*3: 登録医師・中医の発行した証明書により永久に業務に適さないと証明される場合。
余剰人員整理とは、雇用主が営業や経営を終了した、或は終了準備のために従業員を解雇する場合や、雇用地における担当業務の需要の減少或は減少予測により解雇する場合を言う。また、操業停止とは、労働報酬が、雇用主が一定の業務を提供した時に発生すると雇用契約に明記されており、業務の手配も給与支払いも無い日数が、ある連続4週間以内に正常業務日(法定休日、有給休暇、工場閉鎖日を除く)の半分を超えるか、ある連続26週間内に3分の1を超える状況を言う。
解雇補償金の支払い請求を行う場合、従業員が解雇から3ヶ月以内に雇用主に請求でき、雇用主は通知受領後2ヶ月以内の支払いが必要である。一方、長期服務金は契約終了後7日以内の支払いが必要である。
・解雇補償金及び長期服務金の算出方法は次の通りである。
月払い給与 | (最終月給給与額 × 2/3)* × 就業年数 |
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日払い/出来高払い給与 | (直前の30日間のうち労働者が選んだ通常労働日18日間の給与)* × 就業年数 |
雇用期間が一年間に満たない場合は按分する。
*$22,500×2/3 (=$15,000)を上限とする。従業員は最終月給ではなく、直前12ヶ月の平
均賃金月額を選択することも可能である。
・ 罰則
合理的な理由なしに雇用主が解雇補償金を支払わない場合、最高5万香港ドルの罰金の対象となる。
合理的な理由なしに雇用主が長期服務金を支払わない場合、最高35万香港ドルの罰金及び3年の禁固刑に処される。
・強制積立金(MPF)の雇用主拠出分との相殺
雇用主は、解雇補償金或は長期服務金を、強制積立金(MPF)の雇用主拠出分から支払うことができる。
*本文は2014年1月に作成されたものです。規定の変更、各地の運用については現地にて再度ご確認いただく必要がある点をご了承ください。