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[まとめ] 中国・非居住者の使用料と事業所得を区別する4つのポイント

非居住者課税に関する重要な管理規定が2009年に出されて以来、NAC Global .NET では実務的な動向に注目しています。

特に判断が分かれる場所として、例えば技術指導で中国に出張する場合、中国から得る所得は不労所得である「使用料(中国語で”特許権使用料”)」か、それとも役務提供による「事業所得(中国語で”営業利益”)」か、で課税基礎と税率が異なるため納税額に影響を与えます。

これに関して2つの実務指針が出されていますので、両者を区別するポイントに注目しながら解説してみたいと思います。

2つの実務指針

今回問題となるのは以下の2つの実務指針です。租税条約の「使用料」条項に関する実務指針である国税函[2009]507号と、それに対する広東省地税局の質問への回答が国税函[2010]46号です。

ポイント1:使用料の定義

国税函[2009]507号(一)~(三)では、使用料の定義が明確にされています。

  • 工業、商業、学術上の設備の使用の対価(日中租税条約、12条3と同様)
  • 工業、商業、学術上の経験に関する情報の対価(日中租税条約、12条3と同様)

国税函[2010]46号ではさらに、付随するサービス活動についても使用料に含まれることが規定されています。

  • 占有技術使用権の譲渡に関わる技術サービス活動

ポイント2:役務提供の定義

国税函[2009]507号(六)では、役務提供の定義が明確にされています。

  1. 単純な貨物貿易におけるアフターサービスの報酬
  2. 製品の保証期間内に売り手が買い手にサービスを提供し受領する報酬
  3. 工事・管理・コンサルティング等の専門サービスを行う機構・個人がサービスの提供によって取得する対価
  4. 国家税務総局が規定するその他の報酬

ポイント3:使用料と役務提供の区別

国税函[2009]507号(四)では、使用料と役務提供を区別する基準について規定されています。

  • 役務提供において、
    • 専門知識及び技術を使用したが譲渡・使用許可しない場合:役務提供
    • 役務提供による成果が租税条約の「使用料」の定義にあてはまる場合:使用料

ポイント4:使用料のうち、PE認定されるものとされないものの区別

国税函[2010]46号(一)では、本来は「使用料」である占有技術使用権の譲渡に関わるサービス提供が恒久的施設(PE)と認定された場合の、サービス収入とサービス提供者の所得について定めています。

以下の条件を満たす場合、サービス収入は「事業所得」、サービス提供者の所得は「給与所得」として処理されます。

  • 租税条約における特許権使用料の受益者が
  • 特許権使用料の発生した国に設立した恒久的施設(PE)を通じて営業を行い
  • 技術許可側の派遣人員が、技術使用側に技術譲渡のためにサービスを提供し
  • サービスの提供期間が租税条約に基づく恒久的施設の規定標凖(6ヶ月)に達している場合

これは、日中租税条約第12条4の、

  • 使用料の生じた他方の締結国内にある恒久的施設を通じて事業を行い
  • 当該使用料の支払の基因となった権利が恒久的施設と実質的な関連を有する

場合に該当します。

従ってこの場合、事業所得に対しては中国で25%の企業所得税、給与所得に対しては個人所得税が課税されることになります。


尚、非居住者課税の基本については以下の記事をご参照下さい。