中国
中国・貿易投資の外貨管理に関する便利化改革の通知(意見募集稿)
中国における外貨の入送金は経常項目と資本項目に分けられ厳格に管理されており、企業にとっては資料の準備提出や当局手続き等が非常に煩雑です。中国市場の対外開放、中国企業の海外進出等に伴い増加する外貨の経常取引、資本取引への対応、また経済の減速環境への対応として貿易・投資促進のためにも一層の外貨管理改革が求められる中、貿易投資便利化通知の募集稿が出されており、その内容を簡単に紹介します。
目次
通知の背景
コロナ禍の2022年、国内外貿易促進のための外貨管理緩和として、中国(上海)自由貿易試験区 臨港新エリアを改革試行地にして経常取引・資本取引の規定緩和が図られてきた経緯があり、これを全国に展開するための貿易投資便利化通知(以下「通知」)の意見募集稿(2023年8月2日まで)として発布されています。
通知の内容
「通知」は3つの内容の下に10項目が設置され、その内経常取引が4項目、資本取引項目が6項目含まれています。
経常取引項目
1. 対外貿易開放政策の整備
①市場調達貿易外貨管理を改善
国内市場での調達後輸出時に第三者に委託し通関して輸出する企業が自社の名義で入金する場合、以下の条件を満たすものとする。
- 国内市場調達企業がすでに地方政府の市場調達ネットワークに備案している。同ネットワークは取引、輸出の全てのフローが記録され、企業に輸出明細データを提供する機能を有する。
- 銀行はシステムとネットワークの紐付け若しくはログイン等その他必要な手段を通じて企業の実態や真実性を確認し、取引情報が重複使用されることを防止する。
②加工貿易差額決済を緩和
銀行は企業の進料対口入送金相殺決済―即ち、輸出製品代金と輸入材料代金の相殺後の決済を手続きする際、次の条件を満たすものとする。
- 企業は国外取引相手より材料仕入れ加工後、製品を同一の取引相手に販売する。
- 企業の輸出入代金相殺決済実施前に、関連資料を持参し銀行で説明を行い、銀行は“輸出入相殺企業”標識を加える。
- 企業は合理的に相殺周期を設定し、適時に債権債務を清算する。原則的に少なくとも四半期に1回とする。
③委託代理決済の改善
貿易代理(輸出入、対外決済)を行う企業が倒産、銀行口座凍結等の状況になり、貨物貿易の入送金が実行できなくなった場合、銀行は商業原則に応じて、入送金の真実性と合理性を審査し手続きを行い、国際収支申告に「非通関者+委託者入送金+(代理人名称)」と記載
する。
④国内企業のオペレーティングリース業務決済便利化
国内機構(借手)が自社保有外貨で国内リース企業へ国内オペレーティングリース(飛行機、船舶、大型設備)代金として外貨でリース料を支払う時、同時に以下の条件を満たすものとする。
- 借手は安定的な外貨収入源が一定規模ある。
- 借手の支払うリース料は1億米ドルを超える。
- 貸手のリース物件購入資金の50%以上は外貨建て債務、或いは国外よりリース物件を借入れて支払わなければならない外貨。貸手の取得した外貨リース収入は原則として元転して使用してはならない。
資本取引項目
2. 資本項目便利化措置の拡大
⑤科技型中小企業の融資便利化
科技型中小企業を越境融資便利化試行地を天津、上海、江蘇、山東(青島含む)、湖北、広東(深セン含む)、四川、陝西、北京、重慶、浙江(寧波含む)、安徽、湖南、海南、海南の条件を満たすハイテク企業・『専精特新』企業・及び科技型中小企業の外債手続きの便利化。
⑥国外直接投資(ODI)前期費用規模の制限緩和
国内企業の国外直接投資の際の前期費用累計送金額上限300万米ドルの制限を撤廃し、投資総額の15%までに変更。
⑦外商投資企業(FDI)の国内再投資項目下の持分譲渡資金及び国外上場募集資金の支払い便利化
国内持分譲渡の譲渡側(企業と個人を含む)が外商投資企業の外貨支払い持分譲渡対価の取得時、及び、国内企業の国外上場募集外貨資金の受領時、資本項目決済口座(元の資産現金化口座)に直接入金することができる。資本項目決済口座内の資金は任意に元転して使用することができる。
3. 資本取引外貨管理措置の改善
⑧資本項目入金用途範囲の拡大(ネガティブリスト管理)
非金融企業の資本金、外債等の資本項目下の外貨入金及びその元転資金使用は、真実、自己使用の原則に則り、国の法律法規に禁止する支出や他に明確な規定がある場合を除き、次の用途を除き入金可能である。
- 直接或いは間接の証券投資或いはその他の投資財テク用途(リスク評価二級以下及び仕組預金を除く)
- 非関連企業への貸付(経営範囲に明記され許可されている場合を除く)
- 自己使用以外の住宅性不動産(不動産開発/リース経営を除く)
⑨外債口座の異地開設認可取消
非金融企業が確かに合理的な必要性があり、所在地の外貨管理局以外の地域の銀行で外債口座を開設する際の認可を取消す。
⑩一部資本項目口座の簡潔化
- 「資本項目―資産現金化口座」を「資本項目―決済口座」に変更する
- 資本項目決済口座と外貨資本金資本金口座の収支範囲に、外商直接投資(FDI)による国内再投資項目における持分譲渡資金及び国内企業の国外上場募集資金を組み入れるものとする。
- 「資本項目-合格国外機構投資者口座(2410)」を「国外機構/個人の国内外貨口座(3400)」(以下NRA口座と呼ぶ)に変更する。口座の開設、入送金と両替の規則は依然としてQFII/RQFII関連規則に基づく。
- 「資本項目-前期費用外貨口座(2101)」を「国外機構/個人の国内外貨口座(3400)に変更する。口座の開設、入送金及び両替の規則は依然として外商直接投資前期費用関連管理規定に基づく。
- 当該口座の収入範囲;資本項目情報システム登記金額内の、外国投資者が国外から送金する、外商投資企業設立に用いる前期費用、及び登録資本金払い込み登記制度の関連主体が先行して払い込む資金。
- 当該口座の支出範囲:資本金の元転と支払いの管理原則に基づき使用、真実性の審査後の経常項目対外支払い、返却送金、後日設立される外商投資企業の資本金口座への充当或いは持分譲渡資本金項目決済口座、及び外貨管理局(銀行)にて登記或いは許可された資本項目支出。
資本項目/決済口座、資本項目/外貨資本金口座の収支範囲について、変更点は以下の通りです。
資本項目/決済口座(元の資産現金化口座)
変更前 | 変更後 | |
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対象となる収入 |
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対象となる支出 |
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資本項目―外貨資本金口座
変更前 | 変更後 | |
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対象となる収入 |
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対象となる支出 |
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