中国 中国会計税務レポ
[中国会計税務レポ] 債権損失 – 資産損失の申告(1)
債権の貸倒れや棚卸資産の減耗損など企業の資産に関して生じた損失は、その損失を計上する年度の企業所得税の確定申告までに必要な資料等を整えて資産損失申告を行う必要があります。今回は、2016年11月に公布された通知にちなみ債権損失を紹介します。
1. 企業のレバリッジ比率を引き下げるための政策の実施
近年、中国企業の債務規模の拡大が急速に進み、その債務負担がより深刻になっていることに対し、企業レバレッジ比率(注1)を積極的かつ穏やかに引き下げる国家政策の一環として財政部と国家税務総局により、『企業のレバレッジ比率を引き下げる税収支持政策の実施に関する通知』(財税[2016]125号)が公布されました。この通知において税制支援策として列挙された8項目の一つに「企業の税法に規定する条件に合致する債権損失は、企業所得税の課税所得計算時に控除できる」とあります。
(注1) レバレッジ比率とは、企業財務の健全性の判断指標の一つで、企業の自己資本に対する他人資本(有利子負債等)の割合を示す数値。
2. 資産損失管理弁法の概要
企業の資産損失の企業所得税法上の取扱は、『企業資産損失所得税税前控除管理弁法』(国家税務公告2011年第25号。以下、「管理弁法」といいます。)に定められています。
管理弁法では資産を「企業が所有する、または支配する、経営管理活動に使用される関連の資産」と定め、◇貨幣性資産:現金、銀行預金、未収金及び前払金(未収手形、各種立替金、企業間取引金額を含む)など◇非貨幣性資産:棚卸資産、固定資産、無形資産、建設仮勘定、生産性生物資産など◇投資:債権性投資及び持分投資―が含まれるとしています。これらの資産に生じた損失のうち、税前控除(注2)できる損失は以下の2つに分類されています。
- 実際損失
企業が実際に処理・譲渡する過程において発生した合理的損失をいい、実際に発生しかつ会計上損失処理した年度に損金算入しなければならない。 - 法定資産損失
企業が実際に処理・譲渡していないが57号通達(注3)及び管理弁法の規定の条件に合致し計算・認識する損失をいい、条件に合致することの証明証拠書類を主管税務機関に提出し、かつ会計上損失処理をした年度に損金算入しなければならない。
資産損失の申告書は2つの形式があり、企業所得税の年度申告表に添付して提出できるとさています。
- リスト申告
貨幣性資産の販売・譲渡・換価よる損失、棚卸資産の正常な損耗、固定資産の正常な廃棄損失、生産性生物資産の正常な死亡による損失、市場を通じた債権等の売買損失で、公正価格や公正な市場原理による取引によって生じた損失が対象。会計計算科目に従って分類して一括記載した総括リストを税務機関に提出するのみで、関連する会計資料及び納税資料は検査に備えて保存すればよい。 - 専項申告
リスト申告ができる資産以外の資産損失が対象。企業は損失の項目ごと(または1件ごと)に申請書面の提出時に会計計算資料及びその他の関連する納税資料を添付しなければならない。
(注2) 「税前控除」とは企業所得税の課税所得の計算において、費用・損失として控除することをいい、日本の法人税法における「損金算入」に相当します。企業で発生した資産損失は、管理弁法に従って企業の主管税務機関に申告しなければ、税前控除は認められません。
(注3) 『企業資産損失税前控除政策に関する通達』(財税[2009]57号)。
3. 債権損失の税前控除
管理弁法では、企業の売掛金などの未収金債権の損失(貸倒損失)は、所定の関連証拠(注4)に基づく他◇3年以上期限を超過した未収金で会計上の損失処理を行なった◇一年以上期限を超過し、1件当たり5万を超えない、または企業の年度収入の総額の一万分の一を超えない未収金で会計上の損失処理を行った-ものについては状況説明及び専項申告を行うこと条件として税前控除が認められています。
(注4)
- 関連事項契約、協議或は説明
- 人民裁判所が発行する債務者の破産、清算公告
- 人民裁判所の判決書、裁決書或は仲裁機構の仲裁書又は裁判所に執行中止(停止)と裁定される法律文書
- 工商部門が発行する債務者の営業許可書の抹消・取消証明
- 公安機関等の関連部門が発行する債務者の死亡や行方不明に関連する証明書
- 債務再編協議及びその債務者の再編収益に係る納税状況説明
- 債務者の災害遭遇状況に係る説明及び債権放棄表明
以上