中国 増値税
[中国会計税務レポ] 営改増全面展開後の増値税 – クロスボーダー課税行為の免税 (4)
昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施から1年以上が経過したところで、改めてこの間に公布された営改増後の増値税に関する公告や通知を確認しています。今回は、クロスボーダー取引に関係する規定を紹介します。
1. クロスボーダー取引に対する増値税の徴収
中国国内の企業などの納税人が行うクロスボーダー取引に対する増値税については、営改増の全面実施により、「営業税から増値税徴収に改革する試行の全面推進に関する通知」(財税[2016]36号)の付属文書4「クロスボーダー課税行為に適用する増値税ゼロ税率および免税政策の規定」において新たに増値税徴収の対象となった建設、不動産、金融、生活サービスなども含めてクロスボーダー課税行為(中国語表記は「跨境応税行為」)として、その免税政策について定められており、さらに具体的な要件や手続きなどを定めた「営業税から増値税徴収に改革するクロスボーダー課税行為免税管理弁法(試行)」(国家税務総局公告2016年第29号。以下「29号公告」)が公布されています。
クロスボーダー取引に対する増値税の徴収は原則としては以下の通りです。
貨物の輸出 | 0%課税 |
---|---|
サービスの輸出 | 0%課税または免税 |
サービスの輸入 | 課税(サービスの輸入者による源泉徴収納付) |
2. クロスボーダー課税行為の免税
29号公告に掲げられている免税となるクロスボーダー課税行為は以下の20種類で、大まかに
- 課税行為が中国国外で発生するサービス
- 輸出用物品に対して提供するサービス
- 中国国外企業に提供し、完全に国外で消費される(注1)サービス及び無形資産
- 特定の金融サービス
- 特定の国際運輸サービス
- ゼロ税率を選択しない課税行為
に区分することができます。
課税行為 | |
---|---|
1 | 工事プロジェクトが国外にある建築サービス |
2 | 工事プロジェクトが国外にある工事管理サービス |
3 | 工事、鉱物資源が国外にある工事探査調査サービス |
4 | 会議展覧場所が国外にある会議展覧サービス |
5 | 保管場所が国外にある倉庫サービス |
6 | 目的物が国外で使用される有形動産のリース |
7 | 国外で提供されるラジオ・映画・テレビ番組(作品)の放映サービス |
8 | 国外で提供する文化・体育サービス、教育・医療サービス、旅行サービス |
9 | 輸出貨物のために提供する郵政サービス集配サービス、保険サービス |
10 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費される電信サービス |
11 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費される知的財産権サービス |
12 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費される物流補助サービス(倉庫・集配サービスを除く) |
13 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費される鑑定・コンサルティングサービス |
14 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費される専門技術サービス |
15 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費されるビジネスサポートサービス |
16 | 国外の組織に販売する広告の供給地が国外である広告サービス |
17 | 国外の組織に販売する完全に国外で消費される無形資産(技術を除く) |
18 | 海外の組織間の貨幣資金の融資およびその他金融業務のために提供する直接有料金融サービスで、当該サービスが国内の物品、無形資産および不動産に無関係であるもの |
19 | 輸送手段を有しない引き受け方式で提供する国際運輸サービス、「国際船舶運輸経営許可証」「道路運輸経営許可証」「公共航空運輸企業経営許可証」などを取得せずに提供する国際運輸サービス |
20 | ゼロ税率政策に合致するが、簡易計算方式を適用、またはゼロ税率の適用を放棄して免税を選択した以下の課税行為 1、国際運輸サービス、2.宇宙運輸サービス(中国語表記は航天運輸服務)、3.国外の組織に販売する完全に国外で消費される所定のサービス、4.国外の組織に譲渡する完全に国外で消費される技術 |
クロスボーダー課税行為について免税の適用を受けるためには、主管税務機関に所定の資料を提出して免税手続きを行わなければなりません。
(注1) サービスの受領者が国外に所在する、もしくは無形資産が完全に国外で使用され、かつ国内にある物品・無形資産・不動産と関係しないこと、およびサービスの実際の受け手が国内の組織や個人でないことが求められている。