中国 中国会計税務
[中国会計] 中国の国家統一会計制度(54)
会計基準とは、企業の経営成績を表す財務諸表を作成する際の会計処理や表示方法のルールです。採用する会計基準によって会計処理が異なり、その結果、経営成績、すなわち算出される利益が異なることになります。
1.中国の会計基準体系の統一
中国の企業会計の基本法規である「会計法」の下、従来は◇(1)1992年に制定された「企業会計準則(旧準則)」と2000年に制定された「企業会計制度」、◇(2)2007年から施行開始された「企業会計準則(新準則)」◇(3)2013年に施行された「小企業会計準則」という3つ会計の基準が併存している状況でしたが、2015年2月16日付で財政部が公表した『廃止及び失効する若干の会計準則制度類規範性文書目録に関する通知』(財会[2015]3号)により、「新準則」の公布以前に実施された「旧準則」に関する規定の整理が行われました。現時点では「企業会計制度」は廃止されてはいませんが、既に「新準則」の採用が奨励されており、会計基準の体系は「企業会計準則(新準則)」と「小企業会計準則」に統一されることになります。
(注)「規範性文書(中国語:規範性文件)」とは、中国の法律構成上、法律、行政法規、部門規章の下に位置するもので、会計分野においては財政部会計司が定め公表するものです。
2.企業会計準則(新準則)
項目 | 新準則 | 旧準則+会計制度 |
棚卸資産の後入先出法の採用 | 不可 | 可 |
開発費 | 要件を満たすものは無形資産 | 期間費用 |
土地使用権 | 無形資産に計上して償却(投資用不動産を除く) | 完成した建物・構築物に含めて減価償却 |
持分法の適用範囲 | 子会社投資は原価法が原則 | 子会社投資も持分法が原則 |
借入費用の資産化 | 要件を満たすもの全て | 固定資産に限定 |
固定資産・無形資産の減損 | 戻入れ不可 | 原因解消の場合は要戻入れ |
資産に関する政府補助金 | 繰延収益に計上して資産の使用期間に均等配分 | 資本準備金に計上 |
税効果会計の適用 | 強制 | 任意 |
公正価値の採用 | 取引市場があり合理的に見積可能な場合のみ | なし |
連結財務諸表の作成 | 子会社を有する場合強制 | 任意 |
退職給付・有給休暇 | 規定あり | 規定なし |
3.小企業会計準則
小型企業は情報を利用する者の範囲が限られる一方、所有と経営が分離しておらず、内部統制も虚偽表示のリスクが高いと考えられます。このため、小型企業の経営管理を改善し、会計情報の真実性と透明度を高めるとともに、租税の徴収管理を強化して税金負担の公平性を確保することを目的に制定され、2013年1月1日より施行されています。『中小型企業類型標準規定』(工信部連企業[2011] 300号)に規定された小型企業に合致する企業に適用されますが、◇(1)株式あるいは債券を公表市場で発行する小型企業◇(2)金融機構あるいはその他小金融型企業◇(3)グループ企業内の親会社と子会社―については適用できません。なお、小型企業であっても、企業会計準則(新準則)を採用することができますが、新基準を採用した後に小企業会計準則への変更は認められません。
企業会計準則(新基準)と比較すると、収益の認識をより詳細に規定し、評価などにおいて簡便な会計処理や税務基準に近い処理が認められており、会計担当者が処理しやすく、かつ、企業所得税申告における納税調整が回避できるようになっています。企業会計準則との相違点など小企業会計基準の具体的な内容は次回改めて紹介します。