中国 中国会計税務

[中国会計] 中国の国家統一会計制度(31)

前回より、資産負債項目に関するやや特殊な経済取引の記帳処理について紹介しています。今回は外貨建て取引についてです。

1. 外貨建て取引

新企業会計準則では、外貨建て取引とは、物品や役務の売買の価額や外貨での貸付借入など取引価額を外国通貨で表示している取引をいい、外貨とは、企業の「記チョウ本位幣(チョウは貝へんに長:記帳本位通貨)」以外の通貨を指すとしています。

2. 外貨建て取引の会計処理

記帳本位通貨とは、企業が経営活動を行う主たる経済環境における通貨をいうものとされ、第2回で紹介した通り、中国では原則として人民元を記帳本位通貨とし、他の通貨を選定したとしても、財務諸表は人民元に換算することが求められています。

一. 取引発生時
② 為替換算レート
取引発生時には、即期カイ率(カイはサンズイにハコガマエ:直物為替レート)を適用して人民元に換算します。
直物為替レートとは、中国人民銀行(中国の中央銀行)が公示する当日の人民元為替相場の中値を指し、為替レートの変動が大きくない場合には、近似する為替レートとして当期間の平均為替レートまたは過重平均為替レートなどの採用も認められています。直物為替レートは国家外カイ管理局のサイトhttp://www.safe.gov.cn/(英語表示選択可)でも確認できます。

③ 両替取引
外貨と人民元との両替取引では、人民元は実際に使用した銀行買相場(TTB)または売相場(TTS)の為替レートで計算します。

二. 貸借対照日(期末決算時)
① 貨幣性項目
貨幣性資産(手許現金、銀行預金、売掛金、その他未収金、長期未収金など)、貨幣性負債(短期借入金、買掛金、その他未払金、長期借入金、社債、長期未払金など) は期末の直物為替レートを用いて換算します。

② 非貨幣性項目
棚卸資産、長期持分投資、有形固定資産、無形固定資産、資本金など取得価格で評価するものについては、期末の換算は行いません。

三. 為替換算差額
決済時及び期末換算による差額のカイ兌収益(為替差損益)は、財務費用として当該期間の損益に計上します。なお、小企業会計準則の場合、為替差益は営業外収益に計上するものとされています。
<例26> 
9月末日の外貨建資産の残高は、A銀行の日本円口座1,000万円(562.420元)のみであった。
各取引日の100元に対する日本円直物為替レートは以下の通り。なお、取引にかかる関税や増値税等は考慮しない。
9/30 10/10 10/15 10/20 10/31
5.6242 5.7023 5.7277 5.7341 5.6162
① 10月10日にA商品を500万円、B商品を500万円販売した。
借: 応収チョウ款-日元戸(売掛金‐日本円口)    570,230
貸: 主営業務収入-(売上)              570,230

② 10月15日、日本円口座の500万円を人民元口座に振替えた。取引時のA銀行のTTBは5.6863であった。
借: 銀行存款-人民元戸(銀行預金-人民元口)  284,315
   財務費用-カイ兌損益(財務費用-為替差損益)  2,070
貸: 銀行存款-日元戸(銀行預金-日本円口)  286,385

③ 10 月20日に①のA商品代金500万円が銀行口座に振り込まれた。
借: 銀行存款-日元戸(銀行預金-日本円口)  286,705   
貸: 応収チョウ款-日元戸(売掛金-日本円口)  285,115
   財務費用-カイ兌差損(財務費用-為替差損益) 1,591

④ 10月末日の外貨建て資産の残高は以下の通り。
A銀行日本円口座1000万円(期末換算額561,620元)
同帳簿価額552,111元(562.420元-286,385元+286,706元)
売掛金500万円(期末換算額280,810元) 同帳簿価額285,115元
借: 銀行存款-日元戸(銀行預金-日本円口)    9,509
貸: 財務費用-カイ兌差損(財務費用-為替差損益)  9,509
借: 財務費用-カイ兌差損(財務費用-為替差損益)  4,305
貸: 応収チョウ款-日元戸(売掛金-日本円口) 4,305