中国 中国会計・税務実務入門
[実務入門] (29) 上海市における増値税改革の試行 (3)
前回に引き続き、直近のトピックである、上海市における営業税から増値税への改革について内容を簡単にご紹介します。税率の部分を再掲します。
適用税率:交通運輸業が11%、現代サービス業が6%
3. 簡単な事例における損益計算書への影響の確認
(1) IT企業における事例
上海市のIT企業A社では、中国国内で上海市内の中国企業に対し受注制作ソフトウェアの開発役務の提供と、サーバー・PCの修理役務の提供を行っている。A社に特段の政策優遇はなく、既存・試行共一般納税人要件を充たし必要な申請・認可も済んでいるものとする。また、営業税や増値税に附加する附加税費については考慮しない。
(試行前)
営業税暫定条例(2008年12月公布)によれば、著作権と所有権の一括譲渡を伴う受注制作ソフトウェアの開発役務の提供という中国国内での課税役務の提供を行うA社は、2011年12月31日まで営業税の納税義務者であった。
<例1>
A社は顧客の著作権と所有権の一括譲渡を伴う受注制作ソフトウェア開発役務の提供として収入1,052.6元を受け取る。役務提供のため、300元のサーバー部品の仕入(増値税率17%)を行っている。
本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。
営業税率は5%
納付税額=1,052.6×5%=52.6
仕入税額=300×17%=51~例1だけの取引の場合、仕入税額控除不能
また、増値税暫定条例(2008年12月公布)によれば、サーバー・PCの修理役務の提供という中国国内で加工、修理、組立修理役務の提供を行うA社は、増値税の納税義務者であった。
<例2>
A社は顧客のサーバーの修理役務の提供として収入1,052.6元を受け取る。役務提供のため、300元のサーバー部品の仕入(増値税率17%)を行っている。
加工、修理、組立修理役務の提供にかかる増値税率は17%。
納付税額=売上税額―仕入税額
売上税額=売上高×税率=1,052.6×17%=178.9
仕入税額=300×17%=51
(試行後)
財税【2011】111号【上海市における交通運輸業及び一部の現代サービス業の営業税から増値税への徴収変更試行の展開に関する通達】によりA社の著作権と所有権の一括譲渡を伴う受注制作ソフトウェアの開発役務の提供という中国国内での課税役務の提供に関する業務は試行対象業種に該当するため、2012年1月1日より増値税に移行することになります。
<例1>
売上高をいくらで請求するかが経営上、非常に重要な問題になってきます。
仮に、1,052.6元を税抜きの売上額として顧客に請求する場合、1,052.6元に6%の増値税を付す形で増値税発票を発行することになります。
売上税額=売上高×税率=1052.6×6%=63.16
<例2>
修理役務の提供にかかる増値税の取り扱いについては税率含め変更ありません。
結果として、例1のケースでは、2011年12月以前と2012年1月以後において経済実態は変わらないにもかかわらず、納付税額、損益計算書の構成、純利益いずれも実際に変更があることになります。
次回はこのトピックを終え、通常の会計税務入門を再開します。
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