中国 中国会計・税務実務入門
[実務入門] (28) 上海市における増値税改革の試行 (2)
前回に引き続き、直近のトピックである、上海市における営業税から増値税への改革について内容を簡単にご紹介します。特に重要な点としては以下のような点があげられていました。
試行地区: | 上海市 |
---|---|
試行業界: | 交通運輸業、一部の現代サービス業(研究開発技術サービス、 情報技術サービス、文化創造サービス、物流補助サービス、 有形動産賃貸サービス、鑑定コンサルティングサービス)のサービス提供者 |
試行時期: | 2012年1月1日から |
適用税率: | 交通運輸業サービスが11%、現代サービス業サービスが6% |
税額計算方法: | 一般税額計算方法 |
認定基準となる 年間課税売上高: |
500万元超 |
本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。
目次
2.各地域・各業種のインパクト
(1) 上海市の試行対象の業種
業種については、上述の通りです。財税【2011】111号【上海市における交通運輸業及び一部の現代サービス業の営業税から増値税への徴収変更試行の展開に関する通達】(以下「111号通達」といいます。)の中、付属文書1【交通運輸業及び一部の現代サービス業の営業税から増値税への徴収変更実施弁法】(以下「111号通達の弁法」といいます。)の第8条及び弁法添付の【課税サービス範囲注釈】に詳述されています。
納税者が課税サービスを提供する場合、増値税を納付しなければならず、営業税は納付しない旨、111号通達の弁法第1条で明示されています。
上海市で試行対象の業種に該当する場合、一般納税人資格認定を申請すべきかどうかにつき、基本的に2011年中に早急に決定する必要がありました。
(2) 上海市の試行対象以外の110号の方案に挙げられている業種
第27回で述べたとおり、今回111号通達の弁法で増値税移行の対象となっている業種以外の業種についても、財税【2011】110号【「営業税から増値税への徴収変更試行方案」の発布に対する通達】(以下「110号の方案」といいます。)に今回増値税移行の対象となっている業種が挙げられています。(注:111号の通達ではなんら言及がなく、2012年1月1日からの試行対象ではないと解されます。)
- 111号通達(の弁法)で規定されている「一部の現代サービス業」以外の、「現代サービス業」
- 建築業
- 郵便電信通信業
- 文化体育業
- 不動産販売
- 無形資産譲渡
- 金融保険業
- 生活性サービス業
110号の方案では「試行地区はまず交通運輸業、一部の現代サービス業等の生産性サービス業で試行を展開し、段階的にその他の業界に普及させる。」とあり、「2012年1月1日に試行を開始し、かつ状況に基づき、速やかに方案を完全化し、機を選んで試行範囲を拡大する」とあるため、遠からず上記業種では移行となる可能性が高いと思われます。
(3) 上海市の110号の方案に挙げられている業種以外の営業税対象業種
営業税暫行条例実施細則(2008年公布、2011年10月28日改訂)上では(1)(2)の業種のほか、娯楽業が営業税の対象業種として挙げられています。
現在、この業種に対する取り扱いはふれられていません。
(4) 上海市以外の地域
110号の方案では「条件が熟したとき、一部の業界を選択し、全国の範囲内で業種全体の試行を実施することができる。」とあります。第12次5カ年計画の期間中(2011年~2015年)に全国での試行開始→業種全体での試行実施まで視野に入るのが、一般的な捉え方になると思われます。
次回は実際の事例を見ながら、この変更を実際どのように考えたらよいのかについてみていきます。
(※弊社はこの情報内容に基づく意思決定に対して一切の責任を負いません。意思決定に際しては、顧問会計事務所等の専門家にご相談いただくようお願いいたします)