中国 中国法令ニュースまとめ

[まとめ] 産休に関する中国の法律規定

2012年は辰年(中国語では龍年)ですが、龍について中国では、「龍馬精神:元気に満ち溢れている様子」「龍飛鳳舞:筆勢に勢いがある様子」等、非常に多くのことわざに用いられ、大変縁起のよいものとされています。また、「望子成龍:子供の成功を願う」といったことばもあり、2012年の中国は出産ラッシュとなることが予想されています。
妊娠や出産は大変おめでたい事でありますが、出産をされる従業員がいる会社では、産休中の人材確保や給与負担等で頭を痛めることもあるかと思います。
ここで、産前産後の休暇日数や産休中の給与支払義務などを以下に整理しました。

1.産休制度

中国労働法や国務院制定の「女性職員労働保護規定」や各地域人民政府の個別弁法、並びに「人口と計画生育条例」を通じて、女性の産前産後休暇が義務付けられています。なお、具体的な産休日数は各地域人民政府公布の弁法に依る部分も多いため、中国国内関連会社間においても差異を設ける必要がある場合もあります。

2.産休中の給与

法定の産休期間中も、企業には給与支払義務があります。また、支払給与内容は産休前と同等の給与(労働契約に基づく給与)と規定されているため、職能手当や資格手当を固定で支給している場合には、当該手当部分も継続して従業員へ支払う必要があります。なお、皆勤手当は支給する必要はないと考える会社も見受けられますが、地域弁法規定によっては「元来の皆勤手当に影響しない」という文言もあることから、各現地法人主管地域の規定や政府部門の対応を確認する必要があります。

3.産休後の規定

出産後1年間は授乳期間と定められ、女性職員に対して様々な保護規定や過度な就業の禁止が謳われています。

  1. 授乳休憩
  2. 一回30分の授乳休憩を、一日に二度与えることが義務付けられています。なお、多胎出産の場合、二人目以降の一人につき30分/回が加算されます。なお、勤務時間中の子供が自宅やその他施設等で過ごす場合には、授乳休憩を与えることが実務的に困難であるため、出勤や退勤時間を調整することで授乳休憩への対応を行うことも一般的に行われています。

  3. 勤務内容
  4. 残業や夜間勤務の依頼、体に過度な負担の係る労働の手配は禁止されています。

  5. 授乳休暇
  6. 上海市や広州市では、産休が終了した後も勤務が困難である女性職員に対して、企業が認める場合に授乳休暇の取得を認めています。なお、休暇中の給与は、当該従業員給与の80%(上海市)、及び75%(広州市)とされています。

4.女性職員の妊娠出産と労働契約

有期雇用契約を締結する従業員との雇用関係は、締結契約期間満了時に自動的に消滅することが労働契約法で規定されています。但し、女性職員の妊娠時期や授乳期間中に労働契約の満了を迎える場合には、女性職員の授乳期間が満了する出産後1年経過時点まで労働契約が自動的に延長されます。
また、女性職員の妊娠出産期間中に、会社から労働契約解除を申し出ることは法律で禁止されています。

5.女性職員保護規定の改正

現在、中国国務院は女性職員保護規定の改正に向けて、意見公募手続き等を進めています。意見募集稿の内容からは、以下の点が主な改正点となるようです。

  • (基本)出産休暇の増加
  • 現在の90日から14週間(98日)へと日数が増加される見込みです。

  • 流産時の休暇明確化
  • 従来の法律規定では流産の際の休暇日数が明確に示されておらず、地域人民政府が公布する弁法等に依拠した休暇日数となっていました。今回の改正では、妊娠4ヵ月未満の流産の場合に最低2週間、満4ヵ月以上である場合には最低6週間の下限基準が設定されました。なお、北京市や上海市、広州市では既に当該最低基準を上回る休暇規定を設けているため、実務的には大きな変更が行われない可能性も高いと考えられます。

  • 社会保険(生育保険)での補助と会社負担
  • 現在施行されている法律は1988年に公布されており、女性職員の出産育児中の生活保障が目的となる生育保険(1994年開始)の概念が含まれていません。新たな規定では、妊娠や育児中の給与、及び医療費用等について、社会保険基金と企業の負担が明確に示されています。意見公募稿では、自社従業員の平均給与額までは社会保険基金からの補助が行われ、平均給与額を超える女性職員の給与部分については、企業が補填することとなりそうです。

    出産規定3都比較