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「珠江デルタ経営環境」調査報告
香港工業総会が行った「珠江デルタ経営環境」調査報告
加工貿易環境の変化については新聞報道などが随時行われていますが、今回は香港工業総会が行った最近のアンケートの結果報告について紹介しま す。このアンケートは、香港工業総会が08年2月21日に同会の会員3600社に配布したもので、3月7日時点で162社の回答を得、同月13日(木)に アンケート結果を発表したものです。14日金曜には新聞報道されました。また報告書は同会のウェブサイトhttp://www.industryhk.org/ にも掲載されています。同会はアンケート結果について、香港系企業の広東省での活動状況と加工貿易環境に対する見方について一般的な状況を反映しているとし、当局の政策実行に際し参考資料に供するとしています。
深圳・東莞企業が6割
アンケートに回答した企業の業種は、多い順に玩具、布、服飾、皮革、時計、電子、プラスティック、印刷、紙、金属機械、金型、電器、化学品、食品など18種に渡ります。またその投資の形態は54%が香港独資企業、39%が来料加工廠となっています。
回答企業の地域分布では、深圳・東莞が58%を占めており、8割が珠江デルタの都市に集中しています。広東省の東西両翼に位置する企業は少なく、1割程度となっています。
これらの企業の税関の企業分類について、B類企業が半数、またおよそA類企業が3割を占めています。自社の分類を知らない企業が17%に達しており、税関業務についての理解不足を示していると言えます。
回答企業にとって深刻な問題を順に列記した結果は次の通りです。
- 労働契約法の実施
- 人民元の上昇
- 加工貿易政策の調整
- 労働力不足
- その他(原材料の価格や物価の上昇、企業所得税率・増値税還付率の変化など)
制限類目録の拡大が企業に与える影響について、半数近くの企業が利益の減少或いは赤字に直面すると回答しています。また36%が流動資金の不足につながり、研究開発やブランド開発などの活動に影響するとしています。
過去2年において人民元の上昇が製造コストに与えた影響について、5-10%のコスト上昇が発生したとする企業が、回答企業のうち84%を占めています。また、労働契約法の実施による労務コストについては回答企業の半数近くが約2割上昇したと回答しています。全体のコストとしては、70%の企業が平均20.5%上昇したと回答しています。
なお回答企業のうち30%が、労働契約法の実施後、労働争議が発生したと答えています。同会ではこの結果に基づいて、今後一定期間は労使間の紛争が多発することを予想しています。
中西部への移転には未だ消極的
中西部への移転について、長期的には考慮すると回答した企業が43.8%である一方で、産業インフラの未整備と、物流コスト高を理由に移転を考慮しないとする企業が48.8%に達しており、報告書では、中西部移転に対し積極的な姿勢は今のところ見られないとしています。移転に際し重視する点は順に次の通りです。1.労働力の確保 2.交通・物流インフラ 3.政府機関の業務効率と政策環境 4.労務コスト 5.周辺産業や調達 6.水道・電気 7.土地・工場棟の提供や価格
設備の自動化、付加価値向上が対応策
製造コストの上昇に今後どのように対応するか(複数回答)について、設備の自動化による人件費の削減や、ビジネスモデルの転換・製品の付加価値を高めるなどの事項が回答企業の60%から挙げられています。
30%の企業は労働密集型の生産工程について外部へ委託することを挙げています。報告書では、これは一方で中小企業のビジネスチャンスであるとも述べています。
コスト対策として移転するかどうかについては、11.1%の企業が省外へ移転、14.2%の企業が中国以外の地域に移転することを挙げています。そして、20%の企業が、工場閉鎖を挙げています。
調査結果に基づく政策への提言がアンケート結果報告書に4点、纏められています。
先ず、加工貿易輸出入額が、全体の輸出入総額の60%強を占める広東省における、加工貿易企業の急激な経営悪化を避けるために、加工貿易禁止類・制限類リストの発布を今暫く控えること、発布の際にはサプライチェーンへの影響を考慮するべきとしています。
第二に、移転政策に関し、周辺のインフラ整備を行い、企業移転をサポートすること、周辺産業の移転を同時に企画したり、財政援助などを企画したりしてはどうかとしています。また、付加価値向上に必要な開発・研究スタッフなどの人材の提供や訓練、支援基金などの設置による企業支援を提案しています。
第三に、中西部地域は、加工貿易企業の移転先としての環境が整備されておらず、企業にとって魅力的ではないとしています。人件費、水道電気などのコストが比較的低いとはいえ、物流コスト上昇をカバーできず、労働力不足、調達面などの不安もあり、企業移転の難関となっていると指摘しています。
第四に、労働契約法の内容を雇用者・被雇用者に十分説明する機会を増やし、実施細則を早期に発布して、条項の不明瞭な部分を排し、各地で差異の無い統一された法律執行を行うことが必要であるとしています。
(以上)
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