中国 深セン

中国・日系企業と華南各市政府との政策交流会について

ジェトロ、各地商工会及び各市政府との主催により、毎年、年末前後に、日系企業と深圳市、東莞市、広州市各政府部門との政策交流会が開かれています。深圳市では2024年9月5日、東莞市は11月13日、広州市では2025年1月17日に開催されました。深圳市及び東莞市は希望する日系企業は誰でも参加することができ、広州市は商工会の代表者のみ参加する会になっています。日系各企業からの質問や意見が事前に商工会で募集され、ジェトロを通じて整理され政府側に通知され、交流会の当日は書面で準備された回答文と共に、各政府部門担当者が直接回答を発表してくれ、更に質問があれば日本側は深堀して聞くこともできます。各企業のほか、司会進行役のジェトロ広州所長及び日本側代表の広州総領事も応援発言をしていただき、政府部門も真摯に日本側要望発言を受け止めているようであり、長年の日系企業と政府部門の交流の重要なルートの一つとなっています。

下記に深圳・東莞の日系企業から提出され各政府部門から回答のあった主な質問・要望事項を簡単に紹介します。

1. 電気料金単価について

7⁻9月の11時~12時、15時~17時のピーク時間の電力料金を25%上乗せするという通知に対し、経済状況が不透明な中で電気代の維持を希望、オフピーク時は人件費が高い等の意見、また企業運営コストへの考慮のうえ直前の通知をしない等の希望を提出。

政府側からは、25%上昇は単なる引き上げではなく全国電力システムの運航効率・経済性や全体コスト削減、安全性等目的の政策であり、企業は生産シフトの調整を推奨、また東がんでは新たな電力販売会社や太陽光発電設置等による積極的な電力価格削減を推奨といった回答があった。

2. 大規模設備更新について

日系等の外資系企業が大規模設備更新関連の優遇政策を享受した事例の紹介を希望、優遇政策活用方法の紹介を希望。

深センでは交流会時点では関連の情報収集が行われていないと言う回答。

東莞では、ハイエンド化、スマート化、デジタル化、グリーン化等で2027年までに累計3千社の技術改造を目指している。関連のチラシも配布された。

3. 脱炭素政策、グリーン電力証書について

太陽光パネルの設置等を通じた工場の脱炭素化推進に対する奨励金があれば紹介を希望。日系企業の関連事例の紹介を希望。

政府側回答:交流会時点で、国としての太陽光発電に対する補助金政策はすでに終了している。東莞の補助金政策期限であった2019年までにおいて、日系企業では京セラや京浜汽車等の会社が優遇を享受した(交流会当日当該日系企業からの情報共有も)。

深セン市では《深圳市 生態環境保護の全面強化及び、経済の質の高い発展に関する措置(2024年~2027 年)》(生環規[2024]7号)において、低炭素関連促進プロジェクトに対する補助金政策がある。

東莞市では《2024年 東莞市新型エネルギー貯蔵モデル活用助成業務指南》に基づき補助金の申請が可能となっている。

4. 新会社法について

新会社法に基づき、従業員300人以上の会社は、従業員董事または従業員監事の設置が必要とされているが、従業員代表大会や、選出方法などについて具体的な規定の紹介を希望。

政府側回答: 交流会時点で、2024年内に設置完了等の具体的な規定は無い。

《労働組合法 実施弁法》《企業の民主的管理に関する規定》(総工会[2012]12号)等に規定される民主プロセス等を参照。その他関連規定に《従業員代表大会開催の規範化に関する中華全国総工会の意見》(総工発[2011]53号)、《公司制企業の従業員董事制度、従業員監事制度の強化に関する中華全国総工会の意見》(総工弁発[2016]33号)がある。実務上の実行方法について、今後更に詳しい士法解釈や実施細則が必要と回答。

5. 大湾区個人所得税還付の優遇政策について

還付対象を拡大し、政策をより緩和して寛容に実施してほしい旨要望(深圳)。また、申請から還付までスピーディーな実施を要望(東莞)。

政策は国及び広東省によるが、実施は各市の具体的な運用が若干異なる。

政府側回答:深圳市はハイエンド人材の要件が比較的高い。また2019年以降の税制改革で、中低所得層の個人所得税負担は軽減されている。日系企業からの要望について、意見募集中の市の大湾区個人所得税補助金政策の中で研究の上採用を検討可と回答。

東莞市は、ハイエンド人材と緊急不足人材の申請審査は市の人力資源社会保障局より行われ、補助金の支給は市の財政と、申請者所在地の鎮(園区)とが3:7の割合で行われ、市から鎮(園区)に送金後、鎮(園区)から個人口座に支給されるため、各鎮(園区)からの支給にはタイムラグがある。

6. 育児休暇時及び経済補償金計算時の賃金基準について

  毎年10日間の育児休暇時の賃金基準に明確な規定があるかの質問。
  深セン市回答: 粤人社規[2023]第1号 第5条に企業は雇用管理規定中に、育児休暇、介護休暇等の休暇中の賃金待遇を明確にすることとされている。雇用者に余裕がある場合、奨励休暇、出産付添休暇の賃金待遇に応じた賃金規定を奨励する。
  一報、労働人事争議仲裁機構は、従業員の育児休暇未取得に対する補償には法の根拠が無いと考えられる傾向にあるが、最終的には個別具体的な案件に応じ裁判所が判断するとしている。

7. クロスボーダーサービスの増値税免税について

中国現地法人が国外の関連会社等から受け取る役務収入に関し、増値税関連の規定によると「国外の単位に提供する、完全に国外で消費されるコンサルティングサービス」は、増値税免税政策が適用されるとなっているが、具体的な適用条件等について教えてほしい。

深セン市回答: 財税[2016]36号によると、「完全に国外で消費される」サービスとは、「サービスの実際の受取者が国外に所在しており、且つ国内の貨物及び不動産と無関係である」サービスを指す、としており、各企業のクロスボーダーサービス行為はそれぞれ異なり、一律の判断基準を導入することはできないため、具体的な事実に基づき個別に判断する必要がある。

8. 法定代表者の現場手続きについて

法定代表者変更に際して、法定代表者本人が現場対応しての手続きやパスポート原本提示等の要求があり煩雑であるので、利便措置を規定してほしい旨要望。

深セン市回答: 現状、税務局における実名認証(本人対応)、銀行情報変更業務におけるパスポート原本の提示がある。