中国 粤港澳大湾区
中国・粤港澳大湾区国際一流ビジネス環境建設3年行動計画
広東・香港・マカオ大湾区(グレーターベイエリア)建設は華南の重要な経済戦略となっており、長江デルタ地域と比較すると、香港・マカオの優位性が挙げられます。2023年末に発布された《粤港澳大湾区国際一流ビジネス環境建設3年行動計画》でも、香港との協力を強調する方針が目立ちます。ビジネス環境の最適化、行政システム、対外開放と国際化、市場の一体化等の分野における各項目の概要は以下の通りです。
一、 ビジネス環境
(1) 市場参入環境の最適化
横琴、南沙、深センの試行実施を経て、大湾区全域における市場参入障壁の緩和を図り、香港マカオ投資者の出資資格要求、持分比率、業種参入制限を更に撤廃或いは開放し、CEPA(香港/マカオと内地の貿易経済取決め)に組入れる。
(2) 公平競争市場秩序の維持
内地9市における公平競争政策を推進し、外商投資企業のネガティブリスト領域以外で、入札、政府調達、権益保護等の面に存在する差別化待遇を撤廃する。独立公平競争審査機構の設立を研究し、独占禁止法等の施行を強化する。
(3) 企業経営コストの軽減
水道光熱費等の費用徴収を継続して規範化、業界協会・商会・仲介機構等の費用徴収を規範化する。企業に対する違法な費用徴収を取り締まる。企業の融資チャネルを拡大し、金融機構の貸付利率を低減する。物流の品質・効率を向上し、物流コストの引き下げを図る。
二、 規範的、便利で、公開透明な行政環境
(4) 行政許可運営の規範化
行政許可事項リスト管理を全面的に実行し、許可条件、手続き手順、所用時間、手数料等の内容を明確化し社会に発布する。公共安全、生態保護、人身健康等の領域を除き、全面的に企業信用に基づいた行政許可告知承諾改革を行う。
(5) サービス型政府建設の加速
企業に資する政策は統一発布し、ピンポイントに送達し、補助金政策等は“ワンストップ”、“申請免除直接享受”、企業の相談とクレーム受付メカニズムを常態化する。社会保障カードサービス管理による居住者サービス“一卡通”サービスを行う。
(6) 企業サービスの最適化
商事登記簡素化試行を行う。業界協会・商会等により技術標準の制定や業界秩序の規範化を行い、国際市場開拓、貿易摩擦対応等に機能させる。企業の簡易抹消を全面的に実施する。
(7) 行政情報の部門間共有
政府部門情報等の部門間、各区間、システム間などの共有。大湾区身分認証、電子証書等の情報共有。
三、公平公正な法治環境の健康発展
(8) 監督管理品質と効率の向上
インターネットと監督管理の推進。信用を基礎とした新型の監督管理メカニズムの整備。香港とマカオの信用構築の経験と実績を生かし、信用情報の収集、共有、開示、利用を強化し、信用度に対するインセンティブ、信用違反に対する罰則、信用修復のメカニズムを改善する。 主要分野、新興分野、海外関連分野の規制ルールを改善する。
(9) 知的所有権の創造、運用、保護
知的財産権の創造、応用、保護を強化。電子商取引、輸出入などの重要な段階における知的財産権執行を強化する。深圳における商標巡回裁判所の設立を支援する。 広州知的財産権法院とその他の機関の役割をよりよく発揮させ、知的財産権案件における国境を越えた協力メカニズムを構築・改善する。
(10) 紛争解決メカニズムの多元化
紛争解決メカニズムを整備。司法交流と協力を強化し、「一帯一路」国際商業訴訟調停センター、深圳前海一帯一路法律サービス協会、深圳国際仲裁裁判所などのプラットフォームを活用し、共同協議と共有に基づく多様な紛争解決メカニズムの構築を促進する。 企業主体が商業紛争を解決するために商業調停仲裁機関を選択することを奨励する。 グレーターベイエリアの香港・マカオ資本の企業が、関係する紛争の仲裁地として香港・マカオを選択できるようにする可能性を検討する。
四、対外開放環境
(11) 外資誘致強化
外資誘致の強化。地域包括的経済連携協定(RCEP)の質の高い実施。 包括的かつ先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)、デジタル経済連携協定(DEPA)、その他の高水準の国際経済貿易ルールをベンチマークし、より画期的な制度革新を形成し、より高いレベルでの新たな開放経済体制の構築を模索する。
(12) 対外投資競争力の強化
対外投資競争力の強化。 グレーターベイエリアの企業のグローバルサプライチェーンへの参入を推進し、製品、設備、技術、標準、試験・認証、管理サービスのグローバル化を推進する。香港・マカオが「一帯一路」建設に全面的に参加・貢献することを支持。企業がグローバル化する際の投融資や情報コンサルティングのサポートを提供することを支持。
(13) 国際人材政策
人材政策制度を革新し、香港・マカオからの人材に対する特別な支援措置を実施し、人材導入、株式優遇措置、技術持株、職業称号の評価、職業資格の認定、児童教育、商業医療保険などの面で画期的な成果を率先して挙げる。 国際的に優秀な人材の導入を加速し、外国人人材の永住権申請を容易にする。
(14) イノベーション
包括的で普遍的なイノベーションを推進する。 大湾区にグリーン発展の実証区を建設し、広州先物取引所での炭素排出権や電力などのグリーン発展先物商品を推進。 広東省・香港・マカオの大学による学校の共同運営。
中小企業のイノベーション支援強化。
五、湾区市場一体化
(15) 通関便利化
通関の利便性向上。 香港・マカオの永久居住権を有する外国人が大湾区9都市訪問、ビジネス交渉や科学、教育、文化、健康分野での交流のための長期ビザの申請を容易にする。実際のニーズに照らし、より多くのコントロールポイントでの「24時間通関」の実施を推進する。 車両交流の促進を継続的に推進。
(16) 金融市場相互参入
金融市場の相互接続を着実に推進する。 香港・マカオへの金融業の開放を拡大し、深セン証券取引所、広州先物取引所、香港取引所清算有限公司が実務的な協力を深めることを支援する。 「債券通」と「南向通」で債券市場の双方向開放を加速度的に推進する。 香港・マカオの金融機関が法律に従って大湾区で営業することを支援し、広東・香港・マカオの大湾区における保険サービスセンターの建設を促進する。 香港・マカオの適格な金融機関や非金融企業が本土で金融債や社債を発行することを支援する。
(17) 職業資格相互認証
香港・マカオの専門家が大湾区で専門職の称号を申告・評価するためのメカニズムを最適化し、一部の主要分野において、香港・マカオの専門家が大湾区で実務を行うための円滑化を率先して推進することを検討する。 香港・マカオとの「一・三・資格」職業技能評価作業を引き続き実施する。 広東省、香港、マカオの法律事務所による合弁事業の試験的スキームの深化。
(18) 香港マカオ居住者の内地での生活便利化
香港とマカオの住民の広東省での生活の便利化を促進。 香港・マカオ住民の雇用と起業の範囲を拡大する。 香港・マカオ住民の大湾区内の公務員ポストへの応募促進を加速する。 香港・マカオの公募情報を公開する長期的なプラットフォームを確立し、大湾区不足人材の専門リストを定期的に公開する。 香港・マカオの若者のためのイノベーション・起業インキュベーション・システムの構築を推進し、香港・マカオの若者に雇用機会を提供する。 大湾区における香港・マカオの医療保険の越境決済を模索する。 香港・マカオ住民の本土旅行許可証と香港・マカオ住民の居住許可証の申請をさらに推進し、政府サービス、公共サービス、インターネットを促進する。 大湾区における通信料金の段階的な最適化と引き下げを基礎電気通信企業に促進する。 (以上)