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[M&A] サントリー、M&A続ける:東南ア、まず成長追求

サントリーは、東南アジア諸国連合(ASEAN)での飲料事業拡大を目指し、既存事業の成長に注力するとともに合併・買収(M&A)を続ける。規模の経済性(スケールメリット)が出せる段階に早急に到達した上で、原材料の集中購買や生産の効率化を進め、シェア拡大と収益体質の強化につなげる。ASEAN・インドの地域統括を担うシンガポール現地法人、サントリー食品アジアの事業開始から丸2年を機に、朴洪植社長に戦略を聞いた。

—ASEAN域内では買収によって事業を拡大してきた。
市場が成長している次のフロンティアと2010年に明確に位置づけた。ゼロから事業を立ち上げるには膨大な時間と労力がかかるので、買収戦略をとっている。飲料市場の規模は人口で決まるため、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンを優先的な重点国とした。域内各国は、飲料を伝統的小売店で販売する比重が高く、ブランド、生産設備、販路を備えた力のある企業を買ってきた。タイで07年に設立した合弁会社は折半出資だが、経営権を握るのを原則としている。企業文化が合うかどうかにも重きを置いている。

■同じ国で別案件あり得る
—進出していない国に、フィリピンが残っている。
コカ・コーラとペプシコが強い市場であり、M&Aを視野に入れているが、地場大手も市場が伸びているので各社とも事業運営に強気だ。そう簡単に事は運ばない。大手それぞれと関係を維持しながら好機をうかがいたい。
M&Aはこれまで実施してきた国で、さらに別の案件を仕掛ける可能性もゼロではない。

—事業規模、成長を追求する背景は。
フィリピン以外の重点国に進出できたので、地域本部として既存事業の拡大に力を入れている。買収した企業をサントリーの文化やビジネス手法に融合させていくことは、大きな労力を必要とする。同時に、サントリーブランドを各国で育成することで大きな成長を目指している。さらに成長するためのM&Aの機会もうかがう。利益にはもちろん目配りしているが、まずは売り上げ優先、成長優先と声を上げている。

当社が統括しているグループ会社の売上高合計は、今年見通しで1,340億円(オセアニアでの加工食品事業含む)。1990年に経営権を取得したシンガポールの健康・加工食品会社セレボス・パシフィックの比重がまだ大きく、飲料事業はまだおよそ半分。全体の目標は2年後の15年に売上高2,000億円。この規模まで届けば、原材料の集中購買と生産の効率化でコストを下げられるので、利益はついてくる。

■各国へ共通の原料供給
ペットボトル原料など包装材料が原価の半分近くを占めており、まとめて買えば費用削減効果は大きい。飲料もこれまでは各国の生産拠点ごとに原料を買って生産していた。今年の春から秋にかけてインドネシア、ベトナム、タイで相次いで発売したサントリーブランドのウーロン茶「TEA+(ティープラス)」(インドネシアのみ「MYTEA(マイ・ティー)」)は、すべて各国の拠点へ共通の原料を供給している。将来、新たに立ち上げる飲料はできればこの方式を採りたい。

—シンガポール拠点はASEAN、インドでのM&Aの実行やグループ会社の統括を目的に11年9月に事業を開始した。会社としての機能は拡充してきたか。
設立当初は15人(うち日本人10人)の陣容で、M&Aチームに加えて、マーケティング、財務の担当者を置いていた。現在は27人(同16人)に増えている。新たな機能として資金調達や総務、人事を担当する管理部門を設けた。生産、品質管理、マーケティングの人員も加わった。特に、地場の人材の採用を積極的に進めてきた。今後さらにその比重を高めていき、将来は地場人材の比率が日本人を越えるようにしたい。

グループ会社の統括会社としてさまざまな機能を備え、提供していくことが大切だ。ASEANに特化したブランドの創設やそれを実現させる研究開発に取り組んだり、各国の法制度の違いを把握するなどの機能も担っていく。

■将来は研究開発機能も
サントリーブランドの地位を築いていくマーケティングの機能には重点を置いており、各国のマーケティング担当と連携している。開発は、日本の製品をそのまま持ち込むのではなく、製品の中身を各国の好みに合わせている。宣伝・広告もその国に合ったやり方を組み立てている。

研究開発の機能はまだ明確にはない。しかし、従来、日本本社(サントリー食品インターナショナル)の海外研究開発部門トップが報告義務を負うのは国際事業部長を兼務している本社社長のみだったが、今年4月からはシンガポールにも報告を上げてもらうように変わった。将来はここに研究開発機能を持たせる可能性がある。

各地で上がった利益をここから域内に再投資することも今後あるだろう。設備やブランドに対する再投資があり得る。体制をここまで整えるのに設立から2年かかったが、比較的速く進められたと考えている。

20131025

NNA.ASIA