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[まとめ] 非貿易項目の外貨管理をスッキリ理解する5つのステップ
ご存知のように中国の外貨管理は日本と比べ厳格で、外貨の受払に非常に複雑な手続が必要な場合があります。
特に複雑なのは「非貿易項目」、すなわち無形資産や役務サービス等の外貨管理です。目に見える物品の移動がないだけに、外貨管理局の審査が必要な項目、銀行に必要書類を提出する項目、金額により変化する項目等、種類ごとに細かく管理されています。
今回は非貿易項目の外貨管理全体における位置づけと、代表的な制限を整理しておきたいと思います。
目次
1. 非貿易項目の外貨管理上の位置付け
中国の外貨管理は、規定上大きく「経常項目」と「資本項目」に分かれ、経常項目は原則自由、資本項目は原則として外貨管理局の許可が必要です(「外貨管理条例」)。
非貿易項目はこのうち経常項目に含まれるもので、具体的には下図のようなものが挙げられます。
2. 非貿易項目の外貨管理
2.1. 外貨管理局の批准が必要な項目
「结汇、售汇及付汇管理规定」により、上記の例のうち
- 借入金利息の返済
- 規定の比率・金額(※)を超えるコミッション(超えない場合は銀行審査のみ)
は外貨管理局の批准が必要です。
(※)10%または10万米ドル
2.2. 銀行の批准でよい(外貨管理局の批准は必要ない)項目
「非贸易售付汇及境内居民个人外汇收支管理操作规程(汇发[2002]29号)」により、上記の例のうち、
- 配当
- 特許権
- ソフトウェア
- 技術指導料
- コンサルティング
は銀行の審査のみで外貨送金を行うことができます。
2.3. その他のサービス貿易
上記に規定されていないサービス貿易は一律に金額制限が定められており(汇发[2006]19号)、10万米ドル以下は銀行審査のみ(外貨管理局の批准は不要)、10万米ドル超は外貨管理局の批准が必要です。
3. サービス貿易の手続簡略化
上記一部の非貿易項目(サービス貿易)に対し2006年に手続の簡略化が行われ、5万米ドル以下の支払に対しては契約書またはインボイスのみでよいことになりました(汇发 [2006]19号)。
適用されるのは無形資産を含むサービス貿易で、上記の例でいえば特許権、ソフトウェア、技術指導料、コンサルティングが挙げられます。
4. 税務証明の提出
2009年より、3万米ドルを超えるサービス貿易・所得・経常移転の対外送金に対して「税務証明」の提出が義務づけられました(汇发[2008]64号)。
上記の例の項目ではコミッションを除くすべてに該当します。尚、コミッションは当規定(四)より税務証明の提出が必要ない項目として定められています。
5. まとめ
上記を表にまとめると以下のようになります。複数の規定が入り組んで複雑でしたが、これでようやく整理ができたと思います。
税務証明の提出 | 銀行審査のみ | 外貨管理局の批准 | ||
---|---|---|---|---|
書類の簡略化 | すべての書類 | |||
借入金利息 | 3万米ドル超 | – | – | ◯ |
配当 | – | ◯ | – | |
コミッション | – | – | 10%以下 または10万米ドル以下 |
10%超 または10万米ドル超 |
無形資産 (特許権、ソフトウェア、技術指導料) |
3万米ドル超 | 5万米ドル以下 | 5万米ドル超 | – |
コンサルティング | – | |||
その他のサービス貿易 | 5万米ドル超、10万米ドル以下 | 10万米ドル超 |