中国 華南ビジネス実務
[華南ビジネス] 中国の越境EC制度解説 (1)中国輸入時の税と外貨管理制度
中国の越境EC(中国では「跨境電商」(クロスボーダー電子商務)と呼ばれる)は数年来、試験区の設置と企業の誘致、通関ネットワークの構築等を通じ、急速な発展が見られ、既に中国の市民の新たな消費モデルの柱を担っています。
中国政府各部門は消費促進のために越境EC制度の整備を図ると共に、一般輸入貨物との整合性の観点から、越境ECの小売業務(B to C)について輸入時の税制を新たに規定すると同時に、越境ECの商品リスト管理化の方針が打ち出されており、一時的には輸入ハードルが高くなった印象があるものの、越境ECの促進政策の方針は変わらず、EC全体の消費の伸びは今後も期待されています。
1.中国輸入時の税について
(1)越境ECに適用されていた郵便税(中国語「行郵税」)
郵便税(「行郵税」)は、入国携帯荷物と郵便物品の輸入税の総称であり、通常の輸入通関貨物への関税と増値税・消費税課税に代替して一括徴収する税種です。4分類10-50%の税率に分かれ、また、個人使用の郵便物入国規定には税額50元以下は免税とされています。
2013年から税関が試行地域に導入した越境EC取引の輸入通関時の課税方式としても郵便税が採用されてきましたが、2016年4月8日より、越境ECに対し適用される税制が別途規定され(以下の第2項)、且つ、従来の郵便税も商品分類と税率に対し調整が行われました。税率が15%,30%,60%の3種類に変更されています。
従前 | 2016年4月8日~ | ||
書籍、雑誌、教育映像、録音、録画、金銀製品、食品、飲料 | 10% | 書籍・出版物、教育映像、コンピュータ、プリンター食品飲料、金銀、家具、玩具、ゲーム | 15% |
紡績品、ビデオカメラ、デジカメ等電器用具、カメラ、自転車、時計 | 20% | 紡績品、皮革衣料、服飾、デジタル機器、ビデオカメラ、家電、厨房用品、音響、楽器、スポーツ用品(ゴルフ除く) | 30% |
ゴルフ用品、高級腕時計(1万元以上) | 30% | ゴルフ用品、高級腕時計(1万元以上)、煙草、酒、化粧品、宝飾・ジュエリー | 60% |
煙草、酒、化粧品 | 50% |
関連規定:税関総署公告2010年第43号、税関総署2012年第15号公告、税関総署公告[2016]第25号公告
(2)越境ECの税制変更
越境ECに郵便税に代わり新たに適用されている輸入時の税制は越境EC輸入貨物に対する関税と増値税、消費税となります。越境EC商品を購入する個人を納税義務者とし、EC企業・ECプラットフォーム企業或は物流企業を、税金の受取・支払代行義務者とします。
取引毎に2,000元、個人の年間20,000元までは関税0とし、増値税と消費税は税額の70%で徴収するとしています。通常の貨物の輸入時増値税は17%、消費税は特定商品(酒、たばこ、高級腕時計、化粧品、宝飾・ジュエリー等)にのみ課税されることを考慮すると、上述の郵便税よりも税負担が軽減される商品も出てきます。一方、これらの上限を超える取引が発生する場合、関税及び関税価格を含めた価格に増値税が全額加算され、特定商品には更に消費税が課税されることとなります。郵便税の分類及び関税率は税関の商品分類によって異なりますが、輸入時の税率を比較した例は以下の通りです。
皮革製品(例:税関コード4202~の商品)
従前EC税率 (従前郵便税) |
新郵便税 | 新EC税率 | |||
≦税額50元 | >税額50元 | 優遇税率*1 | 通常税率 (最恵国) |
||
郵便税 | 0 | 20% | 30% | — | — |
関税 | — | — | — | 10-20%×70% | 10-20% |
増値税 | — | — | — | 17%× 70% | 17% |
消費税 | — | — | — | — | — |
化粧品(例:税関コード3304~の商品)
従前EC税率 (従前郵便税) |
新郵便税 | 新EC税率 | |||
≦税額50元 | >税額50元 | 優遇税率*1 | 通常税率 (最恵国) |
||
郵便税 | 0 | 10% | 60% | — | — |
関税 | — | — | — | 0% | 6.5%~10% |
増値税 | — | — | — | 17%×70% | 17% |
消費税 | — | — | — | 30%×70% | 30% |
*1: 取引毎に2,000元、年間20,000元までの購入時
2.外貨管理制度について
中国の外貨管理制度上、貨物の輸入は貿易外貨送金に属し、輸入通関データに基づいて中国国内から国外への送金を行うこととなっています。税関は越境EC輸入通関に対し「集中通関」という、輸入貨物インボイス毎ではなく定期的なリスト提出により通関申告する方法を認めており、この場合も同様に貿易外貨送金は可能です。
従い、日本から商品を中国へ輸出し日本で直接商品代金を入金することを計画するならば、出店する越境ECサイトの物流や商流モデルが、中国国内での会社登記や口座開設を要求していないかどうか、確認する必要があります。
越境EC企業と中国国内の個人間の入送金制度には「クロスボーダー電子商務による支払機構の域内外貨収入/支出」という項目があり、中国国内企業或は個人が、
越境EC取引の商流に携わる支払機構との間で、国内での外貨振替ができるようになっており、越境EC取引における外貨建ての価格設定や決済が制度上想定されていると言えます。
外貨管理局では、中国国内の個人の外国為替業務に対し2016年1月1日より新たなオンラインモニタリングシステムを導入しており*2、銀行口座が異なっても、同一個人の外国為替業務をモニタリングし、限度枠を超えて外国為替業務が行われた個人に対し、全国の銀行で統一した「注目者リスト」を共有できる仕組みがあります。個人の外貨両替における年間限度額は5万米ドルとされ、これを超える場合は取引金額の真実性を証明できる資料の銀行への提出が必要とされています。
*2関連規定:《国家外貨管理局 個人の外貨管理の更なる改善に関する問題の通知》(滙発[2015]49号)