中国 華南ビジネス実務
[華南ビジネス] ネガティブリスト管理の全国導入:広東省の情況
中国での外国資本による企業の設立にはこれまで商務部門の審査認可が必要とされ、審査には業種により数週間から1か月超を要し、また認可権限によって区(または鎮)、市、省の審査へと長い期間を要するプロジェクトもありました。
近年、自由貿易試験区では、この認可制度について、ネガティブリスト範囲外において届出手続きのみの“備案制度”を実行し、3年の試行を経て、ようやく全国に導入されることになりました。
広東省では広東自由貿易試験区(南沙、前海、横琴)におけるネガティブリスト管理の試行と同時に、香港・マカオ企業に対し、CEPAに基づき広東省に投資する際にはネガティブリスト範囲外の備案制度を全国に先駆けてすでに導入済みでしたが、今回、出資元の区別なく全面導入となりました。
全国における法律の発布情況は以下の通りです。
・2016年9月3日、《〈中華人民共和国外資企業法〉等四部法律修正の決定》が全国人民代表大会常務委員会を通過したことにより、外資企業の設立及び変更手続きはネガティブリスト範囲外のプロジェクトにおいて審査認可制度から備案(登記)管理へ10月1日より移行することが発表。
・9月30日、工商行政管理総局により《外商投資企業の備案管理実施後の登記登録に関わる業務の通知》(工商企注字[2016]189号)が公布され、商務部と発展改革委より2016年22号公告にて、ネガティブリストの対象は《外商投資産業指導目録(2015修正)》の制限類及び禁止類、及び奨励類中の持分要求等に基づくことが規定。
・商務部より《外商投資企業設立及び変更備案管理暫定弁法》(商務部令2016年第3号)にて備案手続きに関する規定が発布
上記の動きに基づき、広東省工商行政管理局より10月28日付で《外商投資審査認可制度改革後の我省における外商投資企業登記登録業務を良く行うことについての指導意見》(粤工商企字[2016]471号)が発布されています。主な内容は以下の通りです。
1.登記管轄と、今後の商務部の批准文書の要否について
(1)登記管轄について。
香港/マカオのサービス提供者が《内地と香港/マカオの緊密な経済と貿易協定(CEPA)》のサービス貿易協定におけるサービス領域に投資する場合、その設立、変更(備案)及び抹消登記については、企業所在地の最も下級の外商投資企業の登記部門により手続きを取り扱う。ネガティブリスト範囲に関わる領域の場合、元の管轄を継続する。
また、外商投資株式有限公司については、地級以上の市の外商投資企業登記部門にて手続きを取り扱う。
(2)登記及び審査認可(事前備案)について。
香港マカオのサービス提供者がCEPAのサービス貿易協定におけるサービス領域に投資する場合で、その設立、変更、抹消(合法存続期間中の抹消登記のみ)登記時、登記部門は、企業より、商務部門の発行した香港マカオサービス提供者投資備案文書の提出を受ける。
外商投資企業の設立、変更(備案)と抹消登記時、ネガティブリスト範囲に該当する場合、登記部門は、企業より、商務主管部門の発行した批准文書の提出を受けた後、登記手続きを取り扱う。
広東自由貿易試験区内に投資された外商投資企業は、その設立、変更、抹消登記時、ネガティブリスト範囲に該当する場合、登記部門は、企業より商務主管部門の発行した批准文書の提出を受けた後、登記手続きを取り扱う。
2.登記管理における法律の適用
外商投資企業の登記管理において、以下の順序で法律を適用するとされています。
“外資三法”及び“台胞投資法”に規定がある場合、それに従う。
上記法律に規定が無い場合、《会社法》《会社登記管理条例》の関連規定を適用する。
上記法律、行政法規に規定が無い場合、外商投資企業の行政法規、国務院決定その 他外商投資のその他の規定に沿って行う。
3.経営範囲、経営期限、資本金、定款について
(1)経営範囲
ネガティブリスト範囲外で、《外商投資産業指導目録》(2015年修正)奨励類項目の場
合、その記載に基づいて登記。許可類の場合、《国民経済業種分類》に基づいて登記。
《国民経済業種分類》に記載されていないような新しい業種内容である場合、政策文
書、業界慣習、専門文献等に基づいて登記することができる。
香港マカオサービス提供者がCEPAサービス貿易協定において設立した外商投資企業の経営範囲について、外商投資企業の登記部門は商務主管部門の備案文書に基づき登記する。
(2)経営期限
ネガティブリスト範囲外の場合、企業の定款に記載する経営期限に基づき登記。ネガティブリスト範囲に該当する場合、商務主管部門の批准文書に記載される経営期限に基づき登記。
(3)登録資本と投資総額の比率
登記部門は企業の登記時、工商総局《中外合資経営企業の登録資本と投資総額の比率に関する暫定規定》(工商企字[1987]第38号)の規定に基づき実行する。
(4)定款
登記部門は、外商投資企業の定款について、法律、行政法規と規則の規定に合わない場合、修正を要求しなければならない。
4.新旧制度の移行について
2016年10月1日までに商務主管部門の批准文書を取得したが、同日以降に登記部門にて
登記申請する場合、登記部門は元の“外資三法”及び“台胞投資法”の規定に基づき手続
きを行う。
5.外資によるM&A、国内投資
(1)内資企業を外商投資企業に変更する場合、外資によるM&Aとして、商務主管部門の批准文書が必要である。一方、外商投資企業を内資企業に変更する場合、元の外商投資企業がネガティブリスト範囲に該当する場合は批准文書が必要、範囲外の場合は不要である。
(2)外商投資企業の国内投資について、投資先子会社は内資企業に属する。投資先子会社の経営範囲が《外商投資産業指導目録》における奨励類或は許可類である場合、登記部門で直接登記し、制限類の場合、商務部門の批准文書が必要である。禁止類のプロジェクトには投資することができない。
(2016年11月作成)