中国
深セン市 外資研究開発センターの設備購入時の増値税免除・還付政策について
(1)外資の積極誘致政策を維持する広東省
ここ数年中国の税制優遇政策は、ハイテク等一定業種の企業を対象とするもの、自由貿易試験区内に設立した現代サービス業種の企業を対象とするもの等や、研究開発費用の企業所得税上の加算控除や固定資産の加速償却、内陸投資の際の地方政府財政からの補助金などに重点が置かれており、対象企業が外国投資者により投資設立された外資企業なのか、内資企業なのかの区別は、制度上は設けられていません。
このような中、広東省は古くから香港・マカオ・台湾の投資(いずれも外資に属します)優遇政策などを進めてきた歴史もあり、外資利用政策を現在も継続しています。2017年末に発布された《広東省が対外開放と積極外資利用をさらに拡大する若干政策措置の通知》(粤府[2017]125号)では、一定業種で外資出資の参入障壁を緩和、グローバル企業の地区本部等の外資企業向け財政補助を拡大、外資企業用地の保障、外資研究開発センターによるイノベーションのサポート等を謳っており、今後も外資企業の投資を歓迎し支持する姿勢を示しています。
(2)外資にとって市場と労働力を備えた深セン市
深セン市では従来産業分野の製造業が、賃料や人件費の高騰と土地用途の商業化に伴い移転や撤退を迫られる一方で、ハイテク・研究開発等分野で有名外資企業参入のニュースがよく聞かれます。
元々深セン市は民間企業が活発でサプライチェーン基盤が強固、人材受け入れ障壁(戸籍申請等)も低く人材誘致の補助金等も厚いことから、外資にとり市場も労働力も備えた投資環境であると言えます。
このような中での《外資研究開発センターの設備購入に対する増値税免除・還付政策》の発布は、足元環境を追い風に広東省の外資誘致政策を有利に展開しようとする深セン市の狙いが伺えます。
(3)政策概要
①適用範囲: 深セン・汕頭合作区を含む、深セン市行政区域内の外資研究センター
②適用条件: 外資研究開発センターの設立時期に応じて以下の条件を満たす場合とする。
(1)2009年9月30日及びこれ以前に設立した外資研究開発センターで、同時に以下の条件を満たす
1. 独立法人は投資総額500万米ドル以上、企業内部門/分公司は投入費用総額500万米ドル以上、年間研究開発経費1000万元以上
2. 専任の研究開発人員90人以上
3.設立以来の累計購入設備原価が1000万元以上
(2)2009年10月1日及びこれ以降に設立した外資研究開発センターで、同時に以下の条件を満たす
1. 独立法人は投資総額800万米ドル以上、企業内部門/分公司は投入費用総額800万米ドル以上
2. 専任の研究開発人員150人以上
3.設立以来の累計購入設備原価が2000万元以上
③外資研究開発センターの認定申請手続きは毎年2回行われ、申請期間は毎年3月1-10日と、9月1-10日。
④外資研究開発センター認定申請手続きに提出する資料は以下の通り。
(1)外資研究開発センター購入設備増値税免除・還付資格申請書
(2)申請報告、以下を含む
1. 外資研究開発センター購入設備増値税免除・還付資格審査表
2.非独立法人研究開発センター研究開発投入資産リスト
3.研究開発費用支出明細表
4.累計購入設備リスト
5.購入契約締結済みの輸入/国産設備で、申請当年度末までに納品される承諾書
6. 研究開発人員名簿
7. 提出資料が真実で法律責任を負担する旨の承諾書
(3)験資報告及び前年度の監査報告書コピー
(4)独立法人の場合は批准証書及び営業許可証コピー、若しくは帰属する法人の批准証書及び営業
許可証コピー
(5)審査部門の要求するその他の資料
⑤審査認可フローは以下の通り。
(1)深セン市経貿信息委にて申請提出
(2)経貿信息委より、第三者機構に専門監査報告を委託し、研究開発投入費用、人員、購入設備納税情況等を監査し監査報告書を作成する。
(3)第三者機構は専門家現場検査を組織、専門監査報告書を基礎に専門家現場監査報告を作成
(4)経貿信息委はその他の審査部門と共同で審査し、審査意見を提出する。
財政委、税務局、税関より審査し、審査意見に署名後、経貿信息委より押印発行。
(5)公告により条件に符合する企業リストを発布し、各部門に備案。
以上の手続きは申請受理後45日以内に審査意見が発行されるとしています。2年毎に再審査が行われ、再審査は9月1-10日の申請期間に実施されるとしています。認定証発行後、輸入設備は税関にて、国産設備は税務局にて関連の免税/還付手続きを行います。2018年8月1日より実施し、有効期間5年としています。