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中国・労務派遣暫定規定解説
人力資源と社会保障部令 第22号(原文)
人力資源と社会保障部令 第22号(参考訳)
労務派遣に関する規定は労働契約法の中で2012年末に改正が決定されて以降、草案発布、意見募集が行われ、検討が重ねられてきましたが、2013年末に人力資源社会保障部第21次部務会審議で《労務派遣暫定規定》(以下、《暫定規定》)が通過し、2014年3月1日より施行することが決定されました。
《暫定規定》は主にその適用範囲、労務派遣使用比率、労働契約締結、履行、解除と終了、地域をまたぐ労務派遣の社会保険、法律責任及び労務派遣比率の調整過渡期間などについて具体的に規定しています。
適用範囲
《暫定規定》の適用対象は労務派遣企業の経営する労務派遣業務、企業の被派遣労働者の使用、並びに、法により設立した会計師事務所、法律事務所などのパートナーシップ組織、基金会、民営非企業単位等の組織の被派遣労働者の使用を含んでいます。
労務派遣使用比率
労務派遣使用比率の規定は意見募集でも注目を集めましたが、《暫定規定》では企業の被派遣労働者数がその雇用総数の10%を超えてはならない、と規定されました。但し、企業の経営や労働者の就業問題を考慮し、《暫定規定》施行から2年間の過渡期を設けることとし、労務派遣使用比率が10%を超えている企業はその間新たな派遣労働者を使用してはならないとしました。
なお、外国企業常駐代表機構と外国金融機構中国駐在代表機構等が派遣労働者を使用する場合及び、国際遠洋船舶船員の労務派遣形式の使用は、この比率の制限を受けないものとされています。
補助的職場
補助的職場での労務派遣濫用を防止するため、《暫定規定》では、使用者は補助的職場の決定には、従業員代表大会あるいは全体従業員討論を経て方案を提出し、工会あるいは従業員代表と平等に協議して確定し、社内公示することが必要とされました。
被派遣労働者の権利保障
被派遣労働者の労働報酬、福利待遇および社会保険などの権利を保障するため、《暫定規定》では、使用者が、被派遣労働者に、使用者の同類の職場の労働者と同様な労働報酬を与えることを義務付けるほか、労働契約法第六十二条の規定に基づき、同類職場労働者と同様の福利待遇を提供しなければならず、また、労務派遣企業の所在地と異なる地域への派遣の場合、使用者の所在地で社会保険に加入し、当該所在地の規定に基づき社会保険費を納付しなければならないとしました。労務派遣企業が使用者の所在地に分枝機構を設置していればその分枝機構から、設置していなければ使用者により社会保険納付を行います。
このほか、労災、職業病などの発生に対しても派遣企業、使用者の義務を明確にしました。使用者での業務遂行時に事故等に遭った場合、派遣企業が法に依り労災認定を申請し、使用者は労災認定の調査確認業務に協力しなければならないとしました。労務派遣企業が労災保険責任を負いますが、但し、使用者と補償について約定してよいとされています。
一方、職業病診断、鑑定については、使用者が責任を持って行うべきとされ、診断、鑑定時に必要な業務履歴や危害の経歴、職業病の原因検査結果等の資料を事実通りに提供しなければならず、労務派遣企業は診断、鑑定に必要なその他の情報を提供しなければならないとされました。
被派遣労働者の解雇について
安定的な被派遣労働者の就業と、理由無く派遣企業へ返還することを防ぐため、《暫定規定》は労働契約法第六十五条第二項(*1)の規定を踏まえ、返還可能な状況について更に明確にしました。
- 使用者にとり労働契約法第四十条第三項及び第四十一条(*2) に規定する状況がある場合
- 使用者の法による破産、営業許可証の取消、閉鎖命令、撤去、経営期限満了前の解散あるいは満了後経営を継続しない場合
- 労務派遣協議期限満了
但し、労働契約法第四十二条に規定する、疾病あるいは非労災の医療期間中、および、女性従業員の妊娠、出産、授乳期間等の情況がある場合、使用者は《暫定規定》第十二条に規定する被派遣労働者の労務派遣単位への返還を行ってはならないとされ、派遣期間が終了しても、その情況が消失して後初めて返還することが可能としています。
労務派遣企業にとり、返還された被派遣労働者に、労働契約法第三十九条及び第四十条第1項、第2項(*3)に規定する情況がある場合、労務派遣単位は労働契約法第六十五条第二項(*1) の規定に基づき、被派遣労働者との労働契約を解除することが可能です。一方、使用者が《暫定規定》第十二条(*4)に規定する情況下で被派遣労働者を労務派遣企業へ返還した際、労務派遣単位が労働契約条件を維持あるいは向上させて別の派遣を手配し、労働者がこれに同意しない場合、労務派遣企業は労働契約を解除できるとし、労働契約条件を引き下げて別の派遣を手配し、労働者がこれに同意しない場合、労務派遣企業は労働契約を解除してはならないと規定されています。このほか、被派遣労働者が返還され仕事が無い期間中は、労務派遣企業は所在地人民政府の規定する最低賃金標準を下回らない給与を月次で労働者に支払う必要があります。
「労務派遣」業務契約を「業務委託/アウトソーシング」等の名義の契約に書き換えることについては、使用者・派遣者の法的責任追及と、派遣労働者の権利保護のため、《暫定規定》第二十七条(*5)に、使用者が請負・アウトソーシング等の名義で実際には労務派遣使用形式に基づいて労働者を使用する場合、《暫定規定》の規定に基づいて処理すると明確に規定しています。
注釈[規定条文内容]
- 労働契約法第六十五条第二項
- 労働契約法第四十条第三項及び第四十一条
- 労働契約法第三十九条及び第四十条第1項、第2項
- 《暫定規定》第十二条
- 《暫定規定》第二十七条
第六十五条 被派遣労働者は本法第三十六条、第三十八条の規定に基づき、労務派遣企業と労働契約を解除することができる。
被派遣労働者に本法第三十九条及び第四十条第一項、第二項に規定する情況がある場合、使用者は労働者を労務派遣企業に返還することができ、労務派遣企業は本法の関連規定に基づき、労働者と労働契約を解除することができる。
第四十条(三)労働契約締結時に依拠した客観情況に重大な変化が発生し、労働契約を履行できなくなった場合に、使用者と労働者が協議しても、労働契約内容の変更について同意できなかった場合。
第四十一条 以下の情況の1つがあり、20人以上をリストラしなければならないか、20人に達せずとも従業員総数の10%以上である場合、雇用者は30日前までに工会或は全体従業員に対し情況を説明し、工会或は従業員の意見を聴取した後、リストラ案を労働行政部門に報告して、リストラすることができる。
(1) 企業破産法に基づき再編する場合
(2) 生産経営深刻に困難となった場合
(3) 企業の生産移管、重大な技術核心或は経営方式に調整があり、労働契約変更後に更に人員解雇が必要な場合
(4) その他労働契約締結時依拠した客観的な経済情況に重大な変化が発生し、労働契約を履行できなくなった場合
第三十九条 労働者に以下の情況の1つがある場合、雇用者は労働契約を解除することができる。
(1)試用期間に採用条件に合わないことが証明された時
(2) 雇用者の規定制度に厳重に違反した場合
(3) 厳重な過失、不正行為、雇用者に重大な損害を与えた場合
(4) 労働者が同時にその他の雇用者と労働関係を構築し、雇用者の任務遂行に厳重な影響を及ぼす場合、或は雇用者が提起しても改正しない場合
(5) 本法第二十六条第一款第一項に規定する情況により労働契約が無効となる場合
(6) 法により刑事責任を追求される場合
第四十条 以下の情況の1つがある場合、雇用者は30日前までに書面で労働者本人に通知するか、或は1ヶ月分の給与を支払い、労働契約を解除することができる。
(1) 労働者が疾病或は公務に依らないけがにより、規定の医療期間終了後も元の仕事に従事できず、雇用者が別の仕事を手配しても従事できない場合
(2) 労働者に仕事の能力が無く、訓練或は職場調整を経ても任務に堪えることができない場合
第十二条 以下の情況の1つがある場合、使用者は被派遣労働者を労務派遣企業に返還することができる。
(1) 使用者に労働契約法第四十条第三項、第四十一条に規定する情況がある場合。
(2) 使用者が法により破産を宣告、営業許可証停止、閉鎖命令、取消を受けるか、事前に解散或は経営期限満了後経営を終了する場合
(3) 労務派遣協議期間が満了した場合
被派遣労働者が返還され仕事が無い期間中、労務派遣企業は所在地人民政府の規定する最低賃金標準を下回らない金額で月ごとに報酬を支払わなければならない。
雇用者が、請負、アウトソーシング等の名義で、実際には労務派遣使用形式に基づき労働者を使用する場合、本規定に基いて取り扱う。