中国 中国会計税務
[中国会計税務] 実務基礎知識3(経理規定の基礎知識4)
江蘇省にはあまり大きな影響はなかったG20国際会議も終了、不動産価格は継続的に上昇しているようですが、為替相場や景気指数も小康状態を保っており、表面的には落ち着いているように見受けられます。但し、米国の利上げを巡る中国からの資金流出懸念等、余談を許さない状況は続きます。今月は、現地法人の運営でも比較的重要な固定資産管理について、紹介します。
(7)固定資産管理
固定資産は保有年数も比較的長期に渡るため、継続的な維持管理を求められ、且つ金額が大きいため、管理上の問題が認識される場合には、企業損益への影響も多大になってしまうことがあり、内部統制の観点からも重要な規程となる。資産管理は、固定資産台帳に基づいて行う。当該台帳に記録する一般的な資産情報は以下のようである。
・固定資産番号
・固定資産名称
・資産取得日
・資産使用部署
・資産金額
・状況(使用中、処分済み、予備等)
① 固定資産の認識基準
会社の経理規程では、まず固定資産台帳に載せて「固定資産」として管理する資産の基準を設ける必要がある。中国の会計原則では、固定資産の定義について次のように定められている。
固定資産とは、同時に以下の特性を有する有形資産を指す: (一)商品生産や役務提供、賃借、或いは経営管理を目的として保有する。 (二)使用期間が一会計年度を超える。 |
会計原則の規程は固定資産の範囲を非常に広く解釈しており、当該解釈だけでは、生産現場で使う工具や事務部門の文房具も固定資産として含めてしまう場合もあり、経理規程では、会計原則に加えて固定資産の基準を設けることが求められる。通常は、購入単価を以って固定資産とするか否かを判断しており、2,000元を基準にしている会社が多く感じる。この金額は、中国の旧会計原則にあった基準が参考にされており、当時からの経理規程を継続して運用していることが影響していると思われる。なお、旧会計原則が施行された2,000年当時から物価は上昇しており、税法でも5,000元未満の資産に関しては減価償却を経ずに一括で費用処理することが認められているため、固定資産としての管理業務簡易化を目的に、認識基準を見直すことも一考です。
② 現物管理
固定資産を新規購入する際の申請や発注、現物資産の検収、生産管理への導入や固定資産台帳への記録までは、比較的しっかり運用されている場合が多いが、継続的な資産管理が足りていない状況はよく見受けられる。例えば、会計監査でお邪魔して固定資産台帳と現物資産の付け合わせを行うと、実際には資産を処分しているにも関わらず台帳には保有資産として載っており、減価償却が続いているといったことがある。会計処理の問題もあるが、会計部門や現地法人管理者に無断で資産処分や売却されるといったことが存在する場合、従業員の不正に繋がることもあるため、固定資産管理に関しては、導入時よりも事後的ものが一層重要であるかと思う。固定資産の継続的な管理強化としては、以下内容が考えられる。
(一)固定資産の実地棚卸
原材料や仕掛品といった棚卸資産は、原価計算にも用いられるため、定期的に実地棚卸が行なわれるが、固定資産の棚卸業務が長期間に渡り行なわれていないことがある。固定資産台帳の正確性保持、適切な減価償却、そして資産紛失等を防ぐためにも、最低でも年一回は固定資産の実地棚卸業務を行う。
(二)資産使用部門との連携
固定資産台帳の管理や減価償却費用の計算を行う管理部門と、固定資産を使用する部署の連携を強化する。資産の除却や大規模な修繕等は、製造部門内での決裁となる場合、管理部門への連絡が適切に行なわれず、固定資産台帳の更新が滞ることが考えられる。これを防ぐためにも、固定資産を使用する現場には資産管理の協力を仰ぎ、管理面では「資産処分申請書類」等が管理部門にも回覧されるように業務フローを構築するといった対応を採る。
③ 会計処理
資産の耐用年数や残存価額といった、具体的な会計処理に必要な事項も会社として規程を設けることが求められる。耐用年数に関しては、税法による規程も考慮する必要があるが、その他の基準は企業自身で自由に選択が可能ため、親会社や関係会社での対応、及び各種資産の実情に基づいた規程を作成して、日々の会計処理を規範化することで十分かと考える。