中国 中国会計税務
[中国会計] 中国の国家統一会計制度(63)
企業会計準則における売上の認識と税務実務との同異点について、今回は役務提供を例に紹介します。
1. 企業会計準則の役務提供収入
企業会計準則では、役務提供収入の認識については、貸借対照日における役務提供取引の結果が信頼性をもって見積もることができる場合、完工百分比法(注1)を採用し役務収益を計上しなければならないとし、役務収益の計上には◇収入の金額が信頼性をもって測定できること◇関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと◇取引の完成進ちょく度(注2)が信頼をもって確定できること◇取引において発生したもしくは将来発生する原価が信頼性をもって測定できること――の4つを同時に満たすことが条件とされています。
なお、 (1)据付費用、(2)宣伝媒介、(3)ソフトウェア開発、(4)芸術公演、(5)販売に伴う区分可能なサービス費、(6)会員費、(7)使用許諾費、(8)長期間にわたり顧客に提供する役務―の各役務提供収入については、企業会計準則-応用指南(注3)において、それぞれその認識時点を個別に示しています。
(注1)完工百分比法とは、役務提供の進ちょく度に基づき収益及び費用を認識する方法(進行基準)を指します。
(注2)役務提供の完成進ちょく度は、既に完成した業量の割合、既に提供した作業の割合、既に発生した原価の割合のいずれかに基づくことができるとされています。
(注3)企業会計準則の運用にあたり、その取り扱いや判断基準等を定めた指南書。
2. 企業所得税の役務提供収入
企業所得税法実施条例第9条で「企業の課税所得税の計算は権利と責任の発生を原則とし、当期に帰属する収入及び費用は、その受け払いに関わらず、当期の収入及び費用としなければならない。当期に帰属しない収入及び費用については、当期の受け払いに関わらず、当期の収入及び費用としてはならない。」と定められており、発生主義による収入の認識が明確に示されています。
役務提供については、提供した役務提供結果について信頼を持って見積もることができる場合、完成進ちょく度(完百分比)法により役務提供収入を認識するとされ、その条件は、企業会計準則の4つの条件のうち、商品販売と同様に、「経済的利益の流入の可能性」についての判断は求められていませんが、他の3つは同じ文言となっています。また、役務提供の完成進ちょく度の確定方法や、据付費など役務提供の種類ごとの収入認識の規準も企業会計準則と同様となっています。
3. 増値税上の役務提供収入認識
増値税法は、以前は主として物品販売にかかる税目で、加工、修理・補修役務以外の提供には営業税が課せられていましたが、2012年より、営業税課税対象のサービス提供収入を増値税課税対象とする改革プログラムが開始されました。現時点では交通運輸サービス、郵政サービス及び現代サービス(研究開発及び技術、文化・クリエイティブ、物流、鑑定・証明コンサルティング、放送、有権動産リースなど)が、増値税の課税対象となり、2016年5月には金融や生活サービスまでその課税範囲が広がることが決まっています。
課税サービスの提供についての納税義務の発生時点は、課税対象役務を提供し、かつ、売上代金を受領した日、または売上代金取立証憑の取得日が原則とされ、増値税発票を事前に発行した場合は、発票の発行日とされています。ここでいう、売上代金の受領とは、課税サービスの提供の過程で、もしくは完了後に受け取る金額を指し、売上代金取立証憑の取得日とは、契約書面において確定された支払日を指します。書面による契約を締結していない、または契約書面に支払日が確定されていない場合には、課税サービスが完了した当日となります。
なお、有形動産のリースで、前受金方式を採用する場合には、前受金の受領日となります。