中国 中国会計税務
[中国会計] 中国の国家統一会計制度(47)
主要な経済取引にかかる会計科目に関する記帳処理などを紹介していきます。今回は、利益の区分を再確認し、実際に出資者に配当金を支払う場合の処理を説明します。紹介する内容は、基本的には企業会計準則(新準則)に基づきます。
1.利潤(利益)
企業会計準則では、利益とは、企業の一定の会計期間における経営成果をいい、収入から費用を控除した純額、当期利益に直接計上された利得と損失が含まれるものとされています。
中国の利潤表(損益計算書)においては、「営業利潤(営業利益)」、「利純総額(利益総額)」、「浄利潤(純利益)」に区分して表示され、それぞれの算出公式は以下の通りです。
◆営業利益=営業収入-営業成本(営業原価)-営業税金及附加-銷售費用(販売費用)-管理費用-財務費用+投資収益-資産減値損失(資産減損損失)+公イン価値変動損益(インはムの下にヒトアシ:公正価値変動損益)
資産減損損失とは、企業の資産の回収可能価額がその帳簿価格を下回る場合の、その帳簿価格と回収可能価額の差額で、貸借対象日に減損が発生しているか否かを判断して計上します。公正価値変動損益とは、売買目的金融資産または負債、および公正価値にて測定することが求められる投資不動産、デリバティブ、ヘッジ取引などのような公正価値の変動するものに適用され、その変動を利益または損失として計上することになります。なお、小企業会計準則を採用している場合には、資産減値損失及び公正価値変動損益は認識しません。
◆利益総額=営業利益+営業外収入-営業外支出
◆純利益=利益総額-所得税費用
2.配当の支払い
企業は当期の浄利潤(純利益)から欠損補てんや準備金を積み立てた後の剰余利益すなわち「未分配利潤(未処分利益)」の残高を配当可能利益として、股東会(株主会)や董事会などの権限機関における決議に基づき、出資者に分配することになります。
利益の分配は、分配を受領する側にとっては収入であり、原則として中国で課税を受けることとなります。ただし、現行の企業所得税法では、中国企業(居住者企業)間の配当は免税収入としています。一方、外国企業(非居住者企業)への配当に対しては、配当金額の10%が企業所得税として課税され、配当を支払う企業が税金を代扣代ジャオ(ジャオは「激」のサンズイがイトヘン:源泉徴収・納付)するものとなります。なお、日中租税条約上の配当所得に対する制限税率も10%となっています。
<例41> 日本の株式会社Aが100%出資する中国居住者企業B有限公司のX4年度の純利益は90万元であった。前期から繰越した未処分利益の期末残高は5万元である。 |
① 当期純利益の10%を利益準備金に積み立てる。 |
借:利潤分配-未分配利潤(利益処分-未処分利益) 90,000 |
貸:盈余公積-法定盈余公積(利益積立金-法定利益剰余金) 90,000 |
② 董事会の決議を経て、出資者Aに対し80万元の配当を行う。 |
借:利潤分配-未分配利潤(利益処分-未処分利益) 800,000 |
貸:応付股利(未払配当) 800,000 |
借:応付股利(未払配当) 80,000 |
貸:応交税費-代扣代ジャオ企業所得税 (未払税金-源泉徴収企業所得税) 80,000 |
③ 配当金を人民元で支払い、企業所得税を納付した。 |
借:応付股利(未払配当) 720,000 応交税費-代扣代ジャオ企業所得税 (未払税金-源泉徴収企業所得税) 80,000 |
貸:銀行存款(銀行預金) 800,000 |
(注)前回紹介した利益処分の会計仕訳では、「提取法定盈余公積(法定利益剰余金繰入)」や「応付現金股利(利益処分-未払現金配当)」などの明細科目を経由して処理をしましたが、今回はこれらの明細科目を使用せず、簡便な仕訳をしています。