中国 中国会計税務

[中国会計] 中国の国家統一会計制度(39)

 主要な経済取引にかかる会計科目に関する記帳処理などを紹介していきます。前回は、原価のうち、「生産成本(製造原価)」について紹介いたしました。今回は「営業原価」について紹介します。紹介する内容は、基本的には企業会計準則(新準則)に基づきます。

1.営業成本(営業原価)

 中国の利潤表(損益計算書)では、営業収入(売上)の次に「営業成本(営業原価)」という項目が表示されます。この営業原価は、「主営業務成本(売上原価)」と「其他業務成本(その他業務原価)」の2つの項目に区分されますが、利潤表ではまとめて「営業原価」として表示します。

2.売上原価

 「主営業務成本(売上原価)」は企業の商品や製品の販売、役務提供などの主たる営業活動において獲得した収入に対応する原価です。
 「主営業務成本(売上原価)」は、その企業の業務の区分ごとに明細科目を設定して使用します。売上が認識された時点で原価も認識することになり、期(月)末にはその期間の商品販売や役務提供に関わる実際の原価を集計し、在庫商品や役務原価から売上原価に振替処理を行います。
 会計処理の具体例は第34回の商品販売収入、35回の役務提供収入で提示していますが、今回は商品の仕入れから売上までの会計処理を日本の会計処理と比較してみます。なお、増値税については性質の近い消費税の処理を参考に仮受・仮払を使用して表示します。

<例33>A商品の売買に係る増値税率は17%である。A商品の2月末在庫はゼロであった。
① 12月5日 甲商品@350元を1万個仕入れ、検収を終え、倉庫に入庫した。
◆中国
借:在庫商品-A商品 3,500,000
  未払税金-未払増値税・仕入増値税
              595,000
貸:買掛金        4,095,000
◆日本
借:仕入-A商品 3,500,000
  仮払増値税  595,000
貸:買掛金     4,095,000
②12月31日 商品2000個を100万元で販売し、先方の検収を経て増値税専用発票を発行した。
◆中国
借:売掛金         1,170,000
貸:主営業務収入      1,000,000
  未払税金-未払増値税・売上増値税
                170,000
借:主営業原価-A商品  700,000
貸:庫存商品-A商品    700,000
◆日本
借:売掛金     1,170,000
貸:売上       1,000,000
  仮受増値税   170,000
(決算整理仕訳)
借:繰越商品    2,800,000
貸:仕入-A商品   2,800,000

 日本の会計処理でも、「仕入」ではなく「売上原価」科目を設ける方法もありますが、上記のように,決算整理において「仕入」勘定科目で売上原価を計算する方式(売上原価:期首繰越商品0+当期仕入額3,500,000-期末繰越商品2,800,000=700,000)が多く用いられています。また、仮払増値税に相当する売上増値税は資産科目ではなく、負債科目のマイナスとして処理されることが特徴的といえます。

3.その他営業原価

 その他業務とは、原材料の販売や所有する固定資産の賃貸など企業の主要な生産経営業務以外の業務活動をいい、その他営業原価には、販売した材料の原価、賃貸した固定資産や無形資産の償却費などが該当します。項目ごとに明細科目を設定して使用します。但し、主たる営業活動以外の経営活動により発生した支出でも、営業税などの税金については、別途「営業税金及び附加」という科目を使用します。「営業税金及び附加」については次回説明いたします。