中国 中国会計税務
[中国会計] 中国の国家統一会計制度(32)
主要な経済取引にかかる会計科目に関する記帳処理などを紹介していきます。今回は所有者権益(所有者持分)項目に関して説明します。紹介する内容は、企業会計準則(新準則)に基づきます。
1. 所有者権益(所有者持分)
所有者持分とは、企業の資産から負債を控除した後の所有者が保有する余剰部分、すなわち純資産をいいます。所有者持分は、主として投資者からの初期投資および追加投資、企業の生産経営期間に実現した留保利益からなり、実収資本(払込資本)、資本公積(資本剰余金)、盈余公積(利益剰余金)および未分配利潤(未処分利益)の4つの部分で構成されます。うち、利益剰余金と未処分利益を「留存収益(留保利益)」と称します。
2. 実収資本(払込資本)と資本公積(資本準備金)
「払込資本」とは、企業が受領した投資者が直接投入した資本を処理する科目で、株式会社の場合には、「股本(株主資本)」という科目を使用します。中国の公司法(会社法)の規定では、出資は貨幣のほか、知的財産権や土地使用権その他の貨幣以外の資産をもって出資を行うこと、現物出資が認められています。あらゆる資産が出資資産として認められるわけではありませんが、現物出資による出資の上限が会社法の改正(2014年3月1日施行)により、撤廃されています。なお、外貨による払込資本金の換算には取引時の直物為替レートしか採用できず、出資契約上のレートや近似レートを使用することはできないとされています。
「資本準備金」は、企業の受領した投資者からの出資額が登録資本金を超える部分、または所有者持分に直接計上する利得および損失を処理する科目で、「資本溢価(資本払込剰余金)」と「其他資本公積(その他資本剰余金)」という2つの明細科目を設置することが求められています。
<例27>
A社はB社から現金50万元、C社から固定資産50万元の出資を受ける契約をした。固定資産の評価額は55万元であった。
借: 銀行存款(銀行預金) 500,000
固定資産 550,000
貸: 実収資本(払込資本) -B社 500,000
-C社 500,000
資本公積-資本溢価(資本払込剰余金) 50,000
3. 留存収益(留保利益)
「利益準備金」とは、利益処分により積み立てた利益剰余金を処理する科目で、「法定盈余公積(法定利益準備金)」、「任意盈余公積(任意利益準備金)」、および外商投資企業には「準備基金」、「企業発展基金」という明細科目を設置することが求められています。法定利益準備金は税引後利益の10%を登録資本の50%まで積み立てることが規定されています。
未処分利益とは、企業が後の年度に分配するために留保する利益であり、当期および過年度の利益から分配や積立を行った残額です。 当期の損益は「本年利潤(当期利益)」から「利潤分配」に振替えられます。「利潤分配」科目には、「提取法定盈余公積(法定利益準備金積立)」、「提取任意盈余公積(任意利益準備金積立)」「応付現金股利(未払配当金)」、「未分配利潤(未処分利益)」などの明細科目を設定します。
<例28>
① D社の当期利益は50万元であった。繰越欠損金はない。
借: 本年利潤(当期利益) 500,000
貸: 利潤分配-未分配利潤(未処分利益) 500,000ー
② 出資者に金銭配当25万元を行うことを決定した。
借: 利潤分配-提取法定盈余公積(法定利益準備金積立) 50,000
-応付現金股利(未払配当金) 250,000
貸: 盈余公積-法定盈余公積(法定利益準備金) 50,000
応付股利 250,000
借: 利潤分配-未分配利潤(未処分利益) 500,000
貸: 利潤分配-提取法定盈余公積(法定利益準備金積立) 50,000
-応付現金股利(未払配当金) 250,000